軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

点火2

「俺様達がB級昇格試験に挑むことのなにがおかしい?」

「おかしくねぇわけがねぇだろうが。どうみてもひよっこじゃねぇか! B級ってのはな! 一人前の証なんだよ‼ お前らみてぇな奴が、なっていいわけがねぇんだよお‼」

食って掛かるジェイドに自慢の肉体を活かし、上から威圧する男。

「そりゃぁお前がC級だからだろ? だから依頼も受けられねぇ・・・」

「ああ⁉」

そこへ、俺は訳知り顔で割って入ってみせる。

「人の親になろうって奴が・・・みっともねぇとは、思わねぇのか? ガキに嫉妬だなんてよぉ?」

「誰だてめぇ‼⁉ ベラベラベラベラ知ったような口ききやがって‼ てめぇからやってやってもいいんだぞ⁉ ああ⁉」

相当腹が立ったんだろう。俺の目を覗き込むように身体を折り曲げ、眉間同士が密着するぐらいに顔を近づけてくる。

目一杯むさくるしいから、やめて欲しいんだがな?

「やめとけよ。引退したとはいえ、こっちは元A級だ。相手になるわけねぇだろ?」

「ぐぅ・・・・・・」

吐き捨てるように言ってやると顔を引っ込めるように仰け反って黙る。

その顔は言いもしれない苦い顔で。

「ハッ。そんな様子じゃ、こいつらの相手にさえならなそうだな」

「んーなわけねぇだろ‼ こっちが何年冒険者やってると思ってんだ⁉」

「じゃぁ、賭けるか?」

「やってやるよ‼ 吠えづらかかせてやるからな‼」

けれど、対象を挿げ替えてやると。

いとも簡単に、思い通りに、こっちの話に乗りかかってくれた。

「おい! どういうことだよ! ってか、どうするんだよ‼ 勝負って俺様達になにさせるともりだ⁉」

いつまでもギルド内で騒いでるわけにもいかねぇと、早速おもてに連れ立つ矢先、ピッタリと後ろにくっついたジェイドが声を潜めながらも抗議してくる。

「心配すんな。やることは変わらねぇ。っつーか、さっきまでの自信はどうした? 返り討ちにしてくれるんじゃなかったのか? それとも、舐められたままでよかったか?」

「そんなわけねぇだろ‼ ねぇ、けどよ・・・」

「不安になるのはわからなくもねぇが、言っただろ? お前らは普通にやればB級ぐらいなんてこたねぇんだ。俺の言ったことを思い出しながら出来ることをやれ! いいな?」

僅かに振り向き顔を見る。

そこにあった6人の顔には、消し去りきれない不安の影と。だがしかし、確かな決意と気力があった。

不安を拭いきれねぇのは、俺の責任なんだろうな。

そう思う頃、先頭を歩いていた男が立ち止まり、同時に振り返る。

「勝負の内容は⁉」

張り上げる声と共に、ダァン‼ という掲示板をぶっ叩く音が、この鉄の町中央にあるこの広場を駆け巡る。

「お? なんだ?」

「どうした? いきなり・・・」

「勝負とか言ってるな?」

その音を聞きつけた野次馬が集まり始める。

「逃げるなら今のうちだぜ?」

それを確認してから口元を歪め、自信満々って表情でのたまう男に俺は。

「必要ねぇよ。どうせ、負けるのはお前だからな?」

似たような表情で返してやった。

「勝負の内容は個人B級昇格試験と同様、金を稼ぐこと。方法はなんでもいい。ただし、どうやって稼いだかがわかるようにギルドの規定に則って書類を作成すること。稼いだ金額が多い奴の勝ちだ。期限は3日。3日以内に報告まで済ませること。一定以上の金額を稼げた場合は、そのままB級に昇格だ。それでいいな?」

疎らとはいえ、それなりに集まる野次馬含め、全員に聞こえるように宣言する。

「俺は1人だが・・・そっちはどうなる? まさか全員で、なんて言わねぇだろうな?」

「聞いてなかったのか? 試験の裁定と同じだ。1番稼いだ奴だけが勝つ。同じ依頼を複数人で受けた場合の報酬は、均等に分配すること。金さえ稼げりゃ昇格の権利は全員にある。他に質問は?」

「範囲はどうする? 町の外の森は申請無しじゃ出られねぇ。それとも、もしかして町の中だけで稼げって? そんなわけねぇよなあ⁉」

「森への侵入許可は監督官として俺が出す。ただし、依頼を受けられるのは荊棘の庭園内でも、ここ鉄の町だけだ。一々確認しに行くのが面倒だからな」

「こいつで最後だ‼ 俺が勝った時の報酬は⁉ どうするつもりだ?」

俺は背嚢から財布を取り出し、妊婦の女に渡す。

女はそれを両手で受け取って中を覗く。男も遠目から覗き込もうとしているのか背伸びして顎を上げる。

「へぇ? 大した額だね。アンタ何者だい? ・・・まぁ今はそれより、この内のいくらをくれるのかって方が問題か。で? いったい、いくらくれるんだい?」

近くで変な動きをする男の顔を鷲掴みに抑え込みながら、女が聞く。

「全部だ」

「・・・は?」

「全部やるよ」

渡した方の財布には大体500万程入っている。

蟻の件で立て替えた金の一部で、ギルド本部から送られてきた第一陣が持ってた金額がこれだった。

泥棒騒ぎがあったせいで、ギルドに置いておくわけにはいかねぇからと、教官に押し付けられたもんをそのまま持ってきたんだ。

引退時の金だから惜しいと言えば惜しいんだが、俺はあいつらが勝つと信じてるし、今回の旅の費用も別に持ってる。なくなったとしても、なにも困ることはねぇ。

これだけの金があれば、食うだけなら20年は困らねぇはずだ。

「・・・たいしたもんだね」

女は呆れたように笑った後、財布を返すと、

「確かに聞いたからな? その言葉! ・・・忘れんじゃねぇぞ⁉」

ニヤつく男の脇腹に肘を入れて黙らせていた。

「お前らの方はどうだ? 質問はあるか?」

「なぜこんなことをわざわざするのでしょう? という質問なら。大金を賭けてまで行う意味があるでしょうか?」

「丁度良かったんだよ。試験の予行演習にしても、実績作りの練習にしても。こうやって規模がデカくなりゃ、協力してくれる人間も増える。祭りみてぇなもんだ。周りの雰囲気が後押しすれば、普段やらねぇようなこともやるし、出来ねぇことも出来たりするんだ。聞くつもりがねぇことを聞いちまったり、出すつもりのなかった依頼を出してみたり、な?」

リミアにそう答えた後は。誰も、なにも言いやしなかった。