軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

不正不安2

「なら、ついでだ。B級冒険者が一人前と呼ばれる理由も含めて、まずはB級昇格試験から説明していくぞ」

「なんで先に試験からなんだよ?」

「その方がわかりやすいからだ。それに、お前らにとっても重要なのは試験のはずだ? 違うか?」

「そうね。それじゃお願いしてもいいかしら? ジェイドも。まずは黙って聞く。いいわね?」

「チッ! 仕方ないな」

ジェイドは言われるがまま。背もたれに体重をかけ、後ろ足のみでバランスを取る遊びをやめ、椅子に座り直す。

「個人B級昇格試験の内容は”一定期間以内に指定された金額を稼ぐ”だ。これはどこの支部だろうが変わらねぇ。絶対の規則だ」

「それはどれくらいの期間で、どれほどの金額になるのでしょうか?」

「期間と金額はそれぞれ3種類、セットになってる。一番短いのが3日で10万ガルド。その次が1週間で25万ガルド。最後が1か月で100万ガルドだ」

「ひゃ、100万ですか⁉⁉」

想像していたより多かったのか、ヨハンが声を裏がえしながら聞き返す。

「そうだ。期限は申し込んだ日、申し込んだ時間から始まる。だから、今3日で申し込めば、3日後のこの時間が期限になるってわけだ。それまでに、10万ガルドを稼いで受付に持っていく必要がある」

「た、確かに、3日で10万ガルドはC級依頼では難しい・・・かも。知れないけど。でも、その・・・それだけで一人前になるのはちょっと・・・」

「おかしい、か?」

「上手く・・・言えない。でも、へ・・・変な感じが、する」

なんとなくだが、言いたいことはわかる。

成人の感覚に近いんだろう。

今日から大人だ! と言われても、理解が追い付かねぇあの感じ。

「だが、提出するのが金だけじゃなかったらどうだ?」

「他にもなにかありまして?」

「証拠だ。ちゃんと申し込んだ後で稼ぎましたって書類が必要になる。しかも、ギルドで定められた書式で書かなきゃならねぇ」

「それは・・・確かに面倒ね。期間が短いと特に」

「当然依頼主や、モンスターの素材を売ったなら、売買取引成立証を商会か店の個人かオークション会場の取締役に書いてもらう必要があるし、数が多ければそれだけの枚数が必要になる」

「それが出来なければ一人前ではない、と。そう言うことでしょうか?」

「どうだろうな? この規則を作った奴がそこまで考えてたかどうかは、俺にはわからねぇよ。俺からしてみりゃ、今後の収入を分配する時の練習みたいなもんだと思うが・・・・・・ただ、そういう書類だとかを作れるようになったら、大人になったって気がしねぇか?」

おそらく、そういうものにまだそれほど触れたことがないだろう6人に向かって言う。

「確かにな。そういうものに触らせてもらったってことはない。父上の書斎にも、入るなって言われてたしな」

「私も似たようなものね。でも仕方ないことだと思うわよ? 私達の場合は、家にある書類って王城で使うものじゃない? それになにかあったら、皇王様にもご迷惑がかかるんじゃないかしら?」

「そ、そうだね。それなら子供には触らせないのが、普通」

「私は剣の大会へ参加する折に色々と書いてきましたわ! 出場願書や保険同意書などですわね! まぁ、それ以外にはございませんけれど・・・」

皇都組4人はそういう書類について”見たことはある”程度の認識で。

「僕にはさっぱりわからないですね。書き方は先生が教えてくれるんですか?」

「私もあまり覚えがありません。学園への手続きも私がやったわけではないので」

田舎組2人は家との関係や年齢のこともあって、想像も出来ていないようだ。

それでも、全員それなりに飲み下したのか、不満や疑問が晴れた顔をしている。

「そういうわけでC級とB級では戦闘力と資金力っつー別の力を試してるわけだ。だから、降格や資格取り消しの規定も違う。C級は特定難易度以上の依頼を受けなきゃならねぇが、B級はギルドカード更新の時に手数料を払うだけでいい。代わりに、1年以内にギルドカードの更新が義務付けられてるけどな」

「なるほど。そうだったんですね」

「ああ。ちなみに、B級以上が一人前って言われるのはギルドの収益のほとんどが、B級以上の冒険者の稼ぎだからだ。試験に抜け道を残しとくのも、その辺が理由なんだろうな」

若くして才能を開花させる人間は探せば意外といるもんだ。特に、実力社会にはよくよく現れる。

そいつらが、見た目や経験で足止めを喰らって無駄に時間を過ごすよりは、と考えてのことだろう。

「それが始めに言っていた複数人が同じ場所で依頼を受けるという方法でしょうか?」

「まぁな。パーティーで受ける以外にもあるぞ? 代理人を立てるとか、家族や親類縁者辺りに簡単で破格の報酬を貰える依頼を出してもらう・・・とかな」

「いいのかよ! そんな金で買うみたいなことしてよぉ‼」

「金を出してる方も、冒険者って職が危険なことぐらい知ってんだろ。その上で金出してんなら、そいつの実力を信じてるか・・・なんにも考えてねぇかだ。どっちにしても、なにかあった時に出資者になってくれるかもしれねぇ相手だからな。ギルドは特に口出しゃしねぇよ。なんなら、お前もやってみたらどうだ?」

「んなことしねぇでも俺様には実力があんだよ‼ ってか、アンタが言ったことだろぉが‼」

冗談で一番楽な方法を提案してみたが、まぁ想像通りに突っぱねてくれるジェイド。

「代理人というのも、よくわかりませんわね?」

「そっちは・・・そうだな。簡単に言やぁお前らの代わりに俺が依頼を受けてくるんだ。俺の弟子にやらせますっつってな。俺の信用で依頼を受けて、依頼はお前らがやる。その報酬の一部を俺が受け取るってのが代理人方式だな。一番よくあるのがこれだ」

「そ、そうなんですか? でも、こういうのって抜け道・・・なんです、よね? よくあるって、一体どこで知るんです?」

「普通は先輩冒険者に教えてもらうんだよ。で、大体そいつが代理人になる」

こいつらの場合は先輩冒険者って存在がいねぇようなもんだから、俺が教えてるが・・・普通、試験管を務める奴がこんなこと教えるわけがねぇんだよな。

そう言うことも含めて、

「お前らはもっと自分達で考えて原因や答えに気付けるようになれ。人に聞くってのは手っ取り早いし楽な方法だが、必ずしも正しいってわけでもなけりゃ、親切に全部を教えてくれるわけでもねぇんだからな」

最大限の忠告だ。

今回の旅が終わる頃には、こいつらもB級冒険者になってるはずだ。そうなれば、皇都も離れることになるだろう。

その先へ・・・まで、ついていっってはやれねぇからな。

「じゃあ最後にいいですか?」

俺の言葉を、いつまでも質問してねぇで依頼受けて来い。とでも受け取ったのか、ヨハンが手をあげて言う。

「B級になったら”ギルドカード更新の時に手数料を払う”って言ってましたけど、1回の更新でいくらかかるんですか?」

「5万ガルドだ」

「「「「「「高ッ⁉⁉」」」」」」

全員の反応が重なったところで、閑古鳥すらいなかったギルドの扉がギィと開いた。