作品タイトル不明
不正不安1
「そうだ。幼くて女だとなんで話を聞いてもらえねぇんだ?」
「頼りないからでしょう。歳を重ねた分だけ、自分の方が優位に立っていると勘違いしてしまう」
「そうだな。歳取ったら出来なくなることだって多いってのに、なまじ今までの経験があるからそれで相手を測ろうとする。じゃぁ、そういう奴を黙らせるにはどうすればいい?」
「簡単ですわ! 私のように実績を持てばいいのですわ‼ ”由緒ある大会で優勝する”などですわね‼」
「ああ。わかりやすい実績があれば、話ぐらいは聞いてもらえるだろう。それが有名であればある程な。だが、今から実績を作るってのは無理な話だ。難易度で言やぁ身体を急成長させるのと大差ねぇ。だから、ここでは却下だな」
「そうですの? 仕方がありませんわね」
自信満々のキューティーだったが、答えを却下されムゥと唇を尖らせながら引き下がった。
俺からすれば、皇都の室内剣法大会の実績になんの価値があるのかわからねぇが、皇都ではそれなりに有名だったらしい。
つっても、皇都からそう離れてねぇここで通用しねぇなら、やっぱりそれまでってことだ。
その程度の実績じゃぁ次の街に着く度に、また新しく実績を残さなきゃならなくなるしな。
「む、群れるというのはどうでしょうか? 徒党を組む、というか・・・」
「正解だ」
少し迷いながらおずおずと手を上げ発現するケイトが答えを出す。
「冒険者がパーティーを組むのもそうだ。1人で出来ねぇこと、自分に出来ねぇことを誰かに補ってもらう。そうやって対応の幅を広げる。それが依頼主に安心を与えることになる。つまり、頼り甲斐が増すってことだ」
1人で無理なら2人、3人と数を増やしていけばいい。
もちろん、増やしすぎて支えきれなくなれば本末転倒だが。
「おいまてよ‼ アンタが1人で依頼を受けろって言ったんだろ‼」
「そうだったか?」
「ふざけんなよ⁉ そんなことも忘れたのか⁉」
「ふざけてるつもりはねぇよ。それよりジェイド。お前は、俺の言ったことを本当にちゃんと覚えてるのか?」
「あぁ⁉ 覚えてるに決まってんだろ‼ アンタはここに着いた時”ここではB級昇格試験の予行演習として、それぞれで依頼を受けて、その依頼を完遂してもらう”って言ってたじゃねぇか‼」
短い言葉とはいえ、一言一句完璧に覚えられてるのはなんかアレだな。
恥ずかしいっつーか、意識しすぎじゃねぇか? とか思うな。
「よく覚えてるじゃねぇか? だったら、俺が”1人で”なんざ言ってねぇのはわかるよな?」
「はぁ⁉ ”それぞれで”って言ってるだろうが‼」
「そうだな? だが、その”それぞれ”が同じ場所に居ちゃいけねぇとも言ってねぇな?」
「・・・あ?」
なにを言っているのかわからねぇ。といったような顔で固まるジェイド。
「それって大丈夫なんですか? 僕達が受けるのは個人B級昇格試験ですよね?」
「本来なら、まかり通るわけねぇんだが・・・なぜか、B級以下ではそれが容認されてんだよ」
「なぜでしょう? それにB級以下というところも気になるのですが」
「B級までの試験の性質上見逃さざるを得ねぇっつーか、そうでもしねぇと特に、お前らなんかには突破し辛いだろうからって残されてる抜け道・・・になるんだろうな」
「どういうことかしら?」
「E級・・・は年齢制限しかねぇから、規定の年齢以上なら自動的にD級になるんだが」
E級は10歳未満の子供が冒険者になりたいとギルドで泣いたりした時のために設けられた子供だまし制度。依頼なんざ受けられねぇし、精々ギルドの手伝いでもさせて報酬も駄菓子とかそんなもんだ。
「C級試験は特定のモンスターの討伐、及びその素材の回収。つっても、技術試験もある。そのことはお前にも伝えたよな? エイラ」
技術試験ってのは、特定の魔法が使えて、どこかのパーティーに所属してさえいれば、それだけで個人でもC級になれる制度だ。
「えぇ。私は断ったけれど」
「あれがある理由は、その魔法が使えりゃぁなにかあってパーティーが解散した後でも、他のパーティーにも参加しやすく。かつ、緊急招集の依頼なんかでも便利に使えるからだ」
「便利に使えるって・・・」
「言葉は悪いが事実だ。緊急招集で集めたメンバーじゃ前線に送り込めるような奴は限られてるからな。負担を軽減するためにも、後方支援は手厚くする必要がある。その名の通り緊急事態なんだ。前線の崩壊は終りを意味する。後詰めなんざ用意出来ねぇ場合がほとんどだからな」
「そう言われると複雑な気分ね。出来もしない前衛にされるわけじゃないし、明確な役割もあるんだから。でも、もしかして緊急招集の対象がC級以上なのって・・・?」
「まぁそういうことだ。前衛の力自慢は雑用を。後衛の魔法担当は後方支援と遠距離攻撃を任される。 C級昇格試験が単独での戦闘力証明なのはそれも理由だったりする。つっても、その試験も自分で指定モンスターを倒す必要は無ねぇんだけどな」
「そ、それが抜け道?」
「ああ。最近試験を受けたお前らならすぐに思い出せると思うが。試験の時、現場でお前らを監視してる奴なんざいなかったろ?」
言われて。確かめるように、
「そう言われれば・・・」
「そうね。確かに」
「間違いなく誰もいませんでしたわ!」
全員が記憶を辿り、ほどなくして同意する。
「その理由は単純で、職員の数が足りねぇんだよ。だから、不正もやり放題だ」
「冒険者ギルドはそんなことでいいのでしょうか?」
真面目なリミアが憤りを見せる。
「よくはねぇが、悪くもねぇのさ。不正でC級になったところで、C級の依頼は基本が討伐か回収だ。対象モンスターは昇格試験で指定されてることがほとんど。だから、C級になっても依頼が受けられねぇまま。一定期限が過ぎればC級の資格も取り消される」
こうすることで冒険者ギルドは面倒な監督という仕事から逃れられている。同じように、一定期間更新無しだと冒険者資格そのものが取り消される。
それでも国境線を超えるためだけに冒険者資格を利用しようもんなら、犯罪者として国際指名手配されたり、酷い場合には本部自ら討伐隊を編成して差し向けたりもするしな。
「あれ? でも待ってください。さっき先生は等級なんて上げておくだけで、依頼は下のを受けていればいいって言いましたよね? 矛盾してませんか?」
「C級とB級じゃ規定が違うからな。って、その辺りのことは説明してなかったか?」
そういや、B級試験やB級以上とそれ以下の等級の話はしてなかったな。