作品タイトル不明
常套句上等
ガルバリオ皇国北部”荊棘の庭園”へ出発する前のこと。
「俺は野暮用でこれからこの国の最北端、グラーニン辺境伯領に向かうが、お前らはどうする?」
泥棒騒ぎの翌日に、ジェイド達”栄光ある騎士団”とリミア・ヨハンの6名を呼び出し、聞いていた。
「どうする・・・とはどういうことでしょうか?」
「そうだよ。どうするもなにもねぇだろ。アンタがいないんなら好きにするさ! 折角個人C級になったわけだしな。適当に依頼でもこなしておくだけだ」
単純に疑問を浮かべるリミアと好き勝手に過ごすと宣言するジェイド。
「ま、それでもいいんだが・・・今回もまたしばらくかかりそうなんでな。それでほったらかしってのもアレだろ? だから、今回は一緒に連れてってやってのもいいかなと、思ってな? どうする?」
よっぽど意外だったのかヨハンとケイトが目を合わせて首をひねっていた。
「僕達もついて行っていいんですか? 邪魔になったりしませんか?」
「さ、里帰りについていくのは・・・その、肩身が・・・」
あぁ。そういうことか。
「気にするな。甥の門出にちょっと顔を出せと言われただけだ。家族でなにかがあるわけでもなければ、一族が集うわけでもねぇ。ただ、北のモンスターはこの国では強い方だし、軍人も精鋭ばかりだ。そんな中で過ごせば、お前らの成長に繋がるかもしれねぇだろ?」
実際、帰ったところで居場所がないのは俺も同じだしな。その心配はない。
「私としてはいつも通りジェイド様と過ごせるのでしたら、場所はどこでも構いませんわ!」
「悪くはないと思うけど・・・皆はどうかしら? 私は少しだけ興味があるのだけど」
キューティーはジェイドがいればそれでよく、エイラは一早く賛同してくれる。
「気にならないと言えば嘘になりますが・・・・・・」
「僕は行ってみたいな。先生の生まれ故郷」
「それは、私も気になる、かな。興味がある」
リミアには別に気になることがあるのか、こちらの様子を窺うように見上げ。しかし、他2人はそれなりに乗り気なようで。
最後の1人となったジェイドに全員の視線が集まる。
「俺は・・・」
気圧されるように仰け反り、半歩後退しながらも。
「気に入らねぇな! どうせ、なにかやらせようってんだろ⁉」
踏ん張りこらえて文句を上げる。
「そりゃぁな? 観光しただけで強くなるわけじゃねぇだろ? もしついてくるんなら、それなりの課題は出すさ。それも含めて、面倒を見るってことだしな」
「それが気に入らねぇんだよ! アンタはC級になった後の俺様の実力をほとんど知らねぇだろうが‼ それでちゃんと面倒なんて見れるのかよ‼ なにより、アンタのおかげで成長した例がないんだよ‼」
痛いところを突くじゃねぇか。
確かに。俺が教えたことなんざ大したことじゃねぇし、C級昇格も教官のおかげだろうさ。
「僕は先生のおかげが大きいですよ‼」
「少し不本意ですが、私もそうでしょう」
言われ、黙っている俺にヨハンとリミアが励ましをくれる。
つっても、それを盾には出来ねぇし・・・仕方ねぇ。
芸はないがいつもの手で行く。
「・・・はぁ。人のせいにするのは構わねぇが、本当のことを言ったらどうだ?」
「どういう意味だよ!」
「俺の出す課題をクリアできる自信がねぇんだろ?」
「そッ⁉ んなわけねぇだろうが‼‼ 俺様を誰だと思ってやがる‼‼」
「さぁ? 誰だったか・・・忘れちまったかもしれねぇな? なにせ、しばらく見てなかったもんでな。お前の活躍ってやつをな」
「ふざけやがって‼ いいぜ‼ やってやるよ‼ どこへなりとも連れて行って見せろよ‼」
売り言葉に買い言葉。
大した意味も議論もなく、同行するということで話はまとまった。
この時、全員の心は一致していたことだろう。
こいつ・・・ちょろいな、と。