軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ちぐはぐ

「・・・まぁ、考えてても仕方ねぇか」

癪に触るが、わからないことは考えたって無駄だ。

とりあえず。手元にある情報で探っていくしかない。

っつーわけで、

「教官。被害者名簿とかってあります?」

「盗みの、か?」

「他になにがあるってんですか?」

「そぉだが。一々茶々をいれるんじゃねぇやぃ」

「だったらさっさと出してくださいよ」

教官がごそごそと机の引き出しから資料を引っ張り出す。

手渡された資料にざっと目を通すと、気になる名前があった。

いつぞやの鍛冶屋だ。

あんなボロ小屋まで狙うとは、なにが目的だ? 金なんてねぇのは見りゃわかるだろうに。

と、言ってる間に直接聞いた方が早いな。

荷物を持って俺が立ち上がる。

「あ⁉ おい‼ どこ行く気だ⁉」

「現場の聞き込みですよ。気になることもあるんで」

「その前に抗議要請の対策を考えていきやがれ‼」

「それはそっちの仕事でしょうよ」

「ついさっき一緒に考えるって言ってただろぉ‼ ちょ⁉ 待てぇ‼」

ガタガタ! と散らかった机に足でも取られたのか、閉まる扉の向こうでなにかが転がる音がしたが、聞こえねぇふりして外に出た。

そんな約束をした覚えもねぇしな。

『バルシムの鍛冶工房』

そう書かれた看板が置かれたボロ小屋の中で俺は、

「よぉ先生よ。久方ぶりじゃぁねぇか?」

厳つい見た目のおっさん店主に絡まれていた。

「まぁこんなボロ小屋にそうそう用はねぇからな」

実際、そう言われたところで仕方がないぐらいには、この店に商品と言えるような物は並んでなかった。

「言ってくれるじゃねぇか? そっちはなくとも、こっちには大ありだったんだがなぁ?」

返すおっさんは腕組みしながら、しきりに頷いて見せる。

「なにがあった?」

それ以外の言葉なんざ求めてねぇ! って態度だ。

「それがな? ―――」

待ってましたとばかりに、つらつらとおっさんが話始めた。

内容は、俺が来た理由と同じ。

盗みに関してだった。

俺が皇都を離れ、サンパダ達と隣国ガルドナットへ向かった辺りから・・・この店に泥棒が入り始めたらしい。

元々客なんていねぇようなもんだ。

なのに物がなくなってるんだから、誰でもすぐ事に気付く。

それで一応は対策を試みたものの。

特に成果はなく。

わかったことはと言えば、夜間に侵入され商品となるものが盗まれていたということだけ。

しかし、そんなことは昼間中店頭に立ってるんだからわかりきったことで、むしろ馬鹿にされたような気にしかならなかったと。

ムキになって丸一日見張ってた日もあったが、いつの間にか商品が奪われていた。

そこで、そんなことが出来そうな犯人を考えたところで、俺なんじゃねぇのか? と思ったそうだ。

「それが用件か?」

「おうよ! 先生。自白するなら今だぜ?」

「んなわけねぇだろ。そもそも、ここ2ヵ月は皇都にも居なかったっつーんだよ」

「・・・・・・・・・本当かぁ?」

「依頼書でも持って来てやろうか?」

肩をすくめて提案すると、

「まぁそぉだよなぁ。すまん、冗談だ。忘れてくれぃ」

おっさんは笑い飛ばして無かったことにした。

「だがよぉ? そぉすっとおかしなことがあんだよ」

「おかしなこと?」

「おう。なんつーかよぉ、1日だけやり口が鮮やかすぎんだよなぁ。その見張ってた日ぃなんだが・・・」

「いつの間にか持ってかれてたって日か」

「あぁ。あの日だけは異様に手際が良かったっつーか。他の日にゃ、なにかしら痕跡とかが残ってたんだよな」

「痕跡?」

「そぉだ。例えば、閉めてあったはずの扉とか窓が開いてたり、箱の口が開きっぱなしになってたり。ハッキリいやぁ雑な仕事だ。まぁそれにしてやられてるおれっちが言えたもんじゃねぇけどもな」

軽く自嘲を交えながら話すおっさんが、

「あ! いっけねぇ! これも言っとかなきゃなんねぇよな!」

ふと思い出したように言う。

「先生に頼まれて預かってた、あの鎧にも手ぇ出されたんだった」

「おい‼ それを最初に言いやがれ‼」

あの鎧ってのはジェイドの鎧のことだな。

重鉄鋼で出来た鎧だ。

確かに、この店の中じゃ頭抜けて高値の代物だ。狙われるのはよくわかる。

つっても、アレはそのうちジェイドに返す予定なんだぞ?

「で? どこに消えたかは知ってんだろうな?」

「ん? いや、その心配は要らんよ。雑な仕事してるって言ったろぉ? 奴ら、あんまりの重さに鎧を倒しちまってなぁ。そりゃぁもうデッケェ音だったもんで、夜中だってぇのに取りものになってなぁ。それ以来、誰も来ちゃいねぇから、鎧はまだここに置いたまんまだ」

盗まれてねぇならまぁ、いいのか?

「それはいつのことだ?」

「1週間程前ってところだなぁ。あぁ! そういやそん時、面白れぇことも聞いたぞ?」

「面白れぇこと?」

「おれっちもそんときゃぁ、その鎧の倒れたデッケェ音で目が覚めたんだけどよぉ? したら、窓の方から犯人の声が聞こえてきてなぁ」

『だから慎重にっつっただろ‼』

『知らねぇよ‼ あんな重いなんてわかる奴が居んのか⁉』

『うるせぇぞお前ら‼ どうせ今日で最後だったんだ‼ 要らねぇもんは捨てて逃げるぞ‼』

『でもお頭‼ 逃げるったってどーするんですか⁉ 俺たちゃもう、西も東も・・・』

『そうっすよ‼ このままじゃ俺達・・・』

『大丈夫だ‼ 北に行きゃぁ渡りをつけてくれるって連中がいるんだよ‼ 他の奴らも、それを聞いて今までこんなことやってたんだ‼』

『でも北って‼』

『くだらねぇ心配してんじゃねぇ‼ 北っつっても、もっと北だ‼』

『それって⁉』

『まぁそういうこった! 今回のヤマもそっちからってわけだ! わかったら逃げ切ることだけ考えろ‼』

「ってなことを言ってやがったのよ」

「それは他の誰かに話したのか?」

「いーや! こんな店の被害なんざぁたかが知れてるだろってよぉ。だぁれも聞いちゃくれねぇのよ。変なモノ好きを除いてなぁ」

「逆に良かったんじゃねぇか? 下手に話してたら、今頃塀の中だったかもな」

「こんなボロい店やってて、そんな情報を持ってたから。ってかぁ?」

「あんな鎧まで持ってるってのも付け足しゃ確実だな。・・・っつーか、そんな話まで聞いてて、俺を犯人扱いしやがったのか?」

「言っただろぉ? ほんの冗談じゃねぇか。それに、1日だけだが様子がおかしかったのも本当だしよぉ。それより、先生よ。なんか買ってってくんねぇか? 流石にもぉ色々とキツイのよ」

懇願してくる姿も合わせて腹立たしかったが。

ジェイドの鎧の買戻しと情報量も含めて、それなりの金を置いて店を出た。