作品タイトル不明
追うべき影は?
さて、新しい情報は得られたのだが。
謎については減るどころか増えちまったな。
重くなった荷物を担ぎ直して考えながら歩く。
おそらくだが、ギルドに入り込んだ犯人と、さっき話に出てきた泥棒は別の奴だな。
ギルドの方は単独犯であり、逃亡も手慣れていた。
鍛冶屋のおっさん。バルシムが会話を聞いた連中は計画も犯行も雑過ぎる。しかも、会話内容から誰かに雇われてるか、話を持ち掛けられたんだろうと窺える。
そうなると疑問なのが、雑な仕事していた奴らの活動時期と範囲だ。
幸い、手元には教官から頂いた資料がある。
もう少し、あたってみるとするか・・・。
何軒か盗みの被害にあったという店、家に聞き込みをした結果。
どこも大体が複数犯で、時間は夕方から夜。
取られたものは小さいものばかりだった。
違和感があるな。
この結果に、俺の中では嫌な想像が膨れ上がっていた。
資料にあったのはほとんどが下町で、いわゆる貴族などの裕福層は被害がほとんどなかった。
さらに、その犯行は極めて雑。しかし、その手法はバラバラ。
だが、夜中に物音で起きる家主は少なくなかったようだ。
それでいて捕縛された奴はいねぇという。
おかしいだろ?
熟練の盗賊なら逃げ切るのには納得できる。
だが、そうだとするなら犯行が雑な事の説明がつかねぇ。
逆に、犯人がヘボだったなら犯行の雑さはわかる。
だが、毎回逃げ切れるわけがねぇ。
どれだけ足が速かろうと、1度も捕まらねぇってのは流石に無理だ。
軍による対策もあっただろうしな。
そうなると残る可能性は協力者なんだが。
今のところ影も形もねぇんだよな。
もっといえば、現場をサポートしてる形跡がない。
つーことは・・・?
こいつが嫌な想像だ。
軍に内通者がいる。
兵の配置されている場所、当日の巡回ルート、そして現場までの経路。
少なくとも、これだけの情報が筒抜けになってやがる。
そうでもねぇと説明がつかねぇ。
こうなってくると、北への逃走ってのも現実的になる。
なにせ北は軍の勢力圏だ。
内通者がいるなら隠すのも容易だろう。
つっても、北の守護を司る我らが御父上がそんなことを許すか?
兄上にしても、黙って利用されるとは思えねぇが・・・。
知らねぇだけの可能性は、考えるだけ無駄だな。
あの要塞周りだけは一枚岩と言っていい。
だとしたら、” 荊棘の庭園(トーンズ・ガーデン) ”か。
あそこからなら東の隣国経由で北側。帝国まで抜けれる。
だが・・・・・・なにが目的だ?
軍の情報が抜かれてるってことは、盗賊共を使ったのは間違いなく軍の中にいる誰か。
この裏切り者はなにがしたい?
国民に不満を持たせて軍を動かすことに何の利益がある?
いや、それも違うのか?
聞き込みの中で直接的な軍への不満や批判は聞かなかった。
泥棒が捕まらないことへの苦言はあったが、それだけだ。
教官も軍の被害については知らなかったしな。
じゃぁ、ベルにその情報を吹き込んだのは誰だ?
その結果どうなった?
おもり隊を含め、一部兵士達が犯罪抑止の名目で街へ配置されることになった。
もし今、犯人共が皇都を離れて北へ移動してると”皇都軍”が知ったら?
普段なら連絡だけで終わっただろうが、今の皇都軍は殊更面子を意識しちまってる。
犯人捕縛のために面子をかけて、軍が北へ派遣されるかもな。
それが狙いか?
以前からの横領なんかで消していた軍の装備を、盗まれたとすることで軍の面子を潰し、わざと雑な仕事をする泥棒共を雇ってそいつらのせいに仕立て上げる。
泥棒共はそんなこととも知らずに、楽な仕事だと喜び勇んではすぐに見つかり、痕跡を残しまくって北へ移動。軍はこれを総出で追いかける。
裏切り者にしてみれば、消していた装備の所在を隠せるし、これを指揮して盗賊団を捕縛すれば実績にもなる。
筋書きとしては悪くねぇ。
悪くねぇんだが・・・まだ引っかかるな。
見つかるのまでが目的なら、ギルドに姿を見せたタイミングについては理解できる。
教官だけでなく、俺やサンが居るのに取り逃がしたとなれば、A級冒険者でも捕らえられなかった犯人とすることが出来るからだ。
だが、1日だけ様子がおかしかったという鍛冶屋バルシムの証言が気になる。
1日中見張っていたにもかかわらず、犯行を見逃すほどの手練れ。
サンから悠々と逃げ切った奴が同一人物かはわからねぇが、こいつらはちゃんとした盗賊だ。いや、ちゃんとしたってのも変な話だがな。
なんつーか・・・そう、実力があるんだ。
雑な泥棒共に紛れさせての犯行に意味はねぇか?
これがもし予行演習だったとしたら?
盗みが警戒されている中で、その実力を誇示するための試験だったら?
手薄になった皇都でなにかを盗むとしたらなんだ?
宝物庫でも破るつもりか?
それとも・・・?
ダメだな。皇都には標的になりそうなもんが多すぎる。
貴族の家は数えきれねぇし、デカい商会の本部もある。教会だってその範疇かもしれねぇ。
俺は行き詰った思考を振り払うようにしてから前を見ると、目的地周辺でどうも見覚えのある2人が、なにやら揉め事を起こしているのを発見した。