作品タイトル不明
なにがあっても?
冒険者ギルド2階ギルドマスターの私室にて。
「どう思います?」
「どう、ってぇ言われてもな。狙いがわからん」
「じゃぁ、わかることからまとめてみますか」
「そぉだな」
俺と教官は机を挟んで向き合って腰を掛け、今わかることをあげつらった。
「まずはあいつらの正体、ですかね?」
「話を聞いた限りでは顔も見とらんのだろぉ?」
「サンが言うには。ただまぁ、あいつが嘘をついてるってことはないでしょう」
「そぉする理由がねぇからなぁ。っつーことは、正体は不明・・・」
「と、思いますか?」
「ハンッ! まさか!」
わざわざ顎を撫でながら考え込むふりをして正体を不明にしようとする教官をいじると、教官も待ってましたと笑って答える。
「十中八九。今巷で噂になってやがる連中だろぉよ」
「手際の良さから言って、そうでしょうね」
「というか、お前さんこそ。そんなことまでよく知ってたな? 帰ってきてまだ昨日の今日だろ?」
「そういうのに詳しい奴がいるんですよ。それ以前に俺は軍家系出身ですよ? 皇都軍の内情だろうが、そこらの情報通より詳しいですよ」
「そりゃそぉか。ってぇことは、最近町に兵隊が多い理由も知ってるのか? 奴らが殺気だってる理由も?」
「それこそ例の盗み騒ぎが原因ですよ。元は軍が被害元だったのが、最近になって外にも被害が出始めた。それがバレて苦情が出たんですよ」
「っはぁ~・・・それで見回り強化なんぞとやってるわけか」
「むしろ、知らなかったんですか?」
ベルの話では国民からの不満つってたから冒険者ギルドにもそれ関連の依頼が来てるもんだと。
「盗難の被害の話は来とったが、先に軍がやられとったと聞いたのぁ初めてだな。失せ物の捜索やら夜間の施設管理なんて依頼ならあったが、軍への抗議要請なんざぁ見てねぇはずだ」
「つーことは・・・今後来るかもしれねぇ、と」
「まったく・・・、面倒な」
抗議要請は人数を要求される割に実入りが少ない。だから、参加しない奴も多い。
逆に、抗議対象が嫌いな奴なんかは、ここぞって程に周りを煽って問題を起こす。
本来は抗議に行く国民の警護やその時に起きる暴力的な問題に介入、制止するための要請なんだが、あっちもこっちも血の気が多く、最近ではどっちが問題を起こそうとしてるのかわからねぇぐらいだ。
そのせいで、こうやって悩みの種になり、出来れば来て欲しくない仕事になっている始末。
「ま、その対策は後で考えるとして。次は目的、ですかね?」
「単純に金じゃぁねぇのか?」
「どうですかね? 金が目的なら、ウチより商会の方でしょ? 考えるまでもなく、向こうの方が金持ってますからね」
「まぁそぉか。つっても、向こうも被害にあってねぇとは限らんのじゃないか?」
「だとしたら、1人だけこっちに送ります? 陽動でも、もっと上手くやりますよ」
「こっちが本命だったら? 目的が素材だったとしたら、どぉだ?」
「ありえねぇんじゃないですかね?」
「どぉしてだ⁉ お前さんが倒したワンダーゴーレムの素材を狙ってたのかもしれんだろぉ?」
「それこそさっきも言ったじゃないですか。商会を狙う方が確実だ。あっちは購入したのがバレてんですから、お目当ての物があるのは確実。それに比べてこっちは、皇室通しての販売だ。手元に残ってるかどうかの確証すらねぇ。現に、金庫室に素材って残ってましたっけ?」
「いや、残っちゃねぇなぁ」
「でしょ?」
そう、わざわざ冒険者ギルドを狙い撃ちにする必要がない。
特に。今のウチには金もなければ素材もないんだからな。
井戸の水を汲み上げては、喉が渇いてそれを飲み干す。というような運営状態なんだぞ?
潜伏して軍相手に活動してたんなら、その辺りのことも知らねぇはずがねぇんだが。
うーん・・・と唸るも、結局2人して当たりは付かず。
「最後は結果ですけど・・・」
「金庫室が開いてなかった本当だ。中の物がなくなってたか、は確認してねぇけどな」
「今は閉めてきたんですよね?」
「あったりめぇだろ? 取られてたとして、金庫室前が物置見てぇになってっから、そこのもんがなくなってるぐれぇだろ」
「なら、後で口裏合わせとかねぇと。なにかなくなってたとしても、なにも取られてなんざなかったって」
「そぉだな。ウチの面子に関わるからな」
活動してない時間ならまだしも、活動中で冒険者までいる中で窃盗が起きたとなりゃぁ評判ガタ落ちだからな。
「それよりお前さんの方こそ、金庫室の中ぁ確認しなくていいのか? ほとんどお前さんの金だろぉ?」
「別にいいですよ。俺が金に困ってるわけじゃねぇんで。それに、その逃げた犯人が相当な時空魔法の使い手でもねぇ限り、あの金庫室の中身を持ってくのは無理でしょうからね」
「ハッハッハ! そぉだなぁ。犯人もビビっただろぉなぁ! こんなボロギルドの金庫室なんかがぁ時空魔法で守られてるんだからよぉ」
蟻事件で金が底をついた時、万が一を考えて。金庫室には俺の時空魔法が追加されていた。
あの時期に金が抜かれてたら、それだけでこのギルドは無くなってたからな。
くだらねぇ圧力をかけてくる連中ならやりかねないと付けていた機能が、今になって生きるとは。
自慢げに笑う教官を横目に、それはそれとして考える。
なぜ今日だったのか、を。
様子を窺っていたらたまたま俺と教官が連れだって出て行くのが見えたか?
だが、それだけじゃ説明がつかねぇ。
なぜか? 簡単だ。
昨日までなら、俺はおろか皇都唯一のA級パーティー”蒸気の騎乗者”すらいなかったからだ。
連中が本当に皇都で噂になるような盗賊なら、そんな隙は見逃さねぇはずだ。
なにより、なんで見つかるようなヘマをした?
教官が言ってたじゃねぇか。夜間の施設管理の依頼ならあったって。
つまり、普段は夜に忍び込むんだろ?
だったら、なんで――。
今日だけこんな朝っぱらから事に及んだ?
まさか、見つかるのまで計算の内だった・・・?
いや、まさか。
・・・・・・・・・。
だとしたら、なにかしらのメッセージか?
しかも、俺宛の。
クッソ。厄介な相手のにおいがするな。