作品タイトル不明
ながなくとも
「・・・・・・ぁ‼ マスター‼ それが――⁉」
教官に気付いたミリーが事情を話し始めた。
「「「泥棒――⁉」」」
「「「ですか?」」」
複数人の声が重なる。
それもそのはず。どうやら冒険者ギルドに泥棒が入っていたようだ。
「そうなんです」
今日、俺達が出かけた後。職員しか入れないはずの廊下に見知らぬ男がいたそうだ。
「最初に見つけたのはマーちゃん・・・マーテルという小柄な女の子で、当然ですけど取り押さえられるわけもなくて。それですぐ私に教えてくれたので、私が受付で冒険者の皆さんに御助力をお願いしました」
そこにたまたま居合わせて、協力したのがサンか。
「それで俺が一緒に行ったんだけど、逃げ足がすごく早くて。残念ながら逃げられてしまったんだ」
こっちを向いて説明した後、すみません。とギルドマスターの教官へ向かってサンが頭を下げている。
「逃げられちまったもんは仕方がねぇ。そんで被害は?」
「それが、わからないんです」
「わからねぇ? どういうこった?」
「それは・・・マーちゃん!」
呼ばれて、ミリーの後ろから少女が姿を見せる。
どことなく見覚えがあるな。新人だったか?
「マーちゃんが見た時、犯人はどうしてた?」
「金庫室の前にいました」
「その時金庫室は開いてた?」
「開いてません」
「犯人はなにか持ってた?」
「小さい袋? みたいなものを・・・」
それだけ聞くとミリーはマーちゃんと呼ばれる少女マーテルに、
「ありがと。マーちゃん」
と言って解放した。
「そいつぁわかったが、金庫の中は確認してねぇのか?」
「今日はまだ金庫室開けてないでしょ? マスターが鍵を持ってるんだから」
「そぉいやそぉだったな・・・」
あ。となる教官。
「一応補足させてもらうと、逃げる時にも小さい袋は持ってたよ。仕事道具だったのかもしれない」
「それは私とマーちゃんも確認してます」
3人が共にそういうなら間違いはねぇんだろう。
それより、気になることがある。
「なんで気付いて、いつ気付かれたんだ?」
まだ、マーテルが犯人を見つけた理由も、ミリー達が犯人に見つかった理由もわかってねぇ。
流石に。A級パーティー”蒸気の騎乗者”リーダーのサンがいて、先手を取ったのに逃げられる、なんてことはねぇはずだ。
「気付いたのはマーちゃんがトイレに行く途中、金庫室の前を通った時。気付かれたのはたぶん、私が受付で協力をお願いしたから、かな。金庫室を破られちゃダメだと思っちゃって・・・。ちゃんと捕まえられれば破られても中身は取られないのにね。ごめんなさい」
そう言って頭を下げるミリー。
「別にどっちでもいいだろ。被害はなかったんだ」
「え⁉ でもまだ被害は‼」
「どうでした? 教官。金庫室、開いてましたか?」
「いいや。鍵はかかったまんまだった。中を荒らされた形跡もなかったぞ」
鍵を持ってるだろと言われ、その後すぐに金庫室を見に行き、そして帰ってきた教官が答えた。
「っつーわけだ。気にするな」
「そっか・・・うん。わかった。ありがと、お兄ちゃん」
ホッとしているミリーを他所に、サンに話を振る。
「それより、よく追いかけられたな?」
「受付カウンターを飛び越えて向かったら丁度、裏口から出ていくのが見えたんだ。まぁ結局追いつけなかったけど」
「顔は見たか? わかりやすい特徴とかなかったか?」
「いや。路地を利用して綺麗に撒かれたよ。しかも、逃げてる間は振り向きもしなかった」
「一度も?」
「ああ。一度も。最初に俺が、待て! って声を上げたせいかな? そこで距離を測られたのかもしれない」
「あり得そうな話だが、そうなると・・・」
「窃盗団か盗賊の可能性が高い」
「その通りだ」
逃げ。の技術が高すぎる。
場当たり的な犯行ってわけじゃなさそうだ。
とりあえず、一緒に戻ってきて話を聞いていた6人に、今日のところは解散。と言い渡して別れ、教官と2人で上の部屋へと引っ込んだ。