作品タイトル不明
違う空気
冒険者ギルドを出てから教官の後に続いて歩く。
あまりにも懐かしくなるシチュエーションだが、当時と比べれば視線の高さなど、ありとあらゆる点で違っていて逆に新鮮だ。
ただ、進むのはいつも通ったのと同じ道。
と、いうことは。
「遅い‼‼」
開口一番文句をつけてくるのは、俺が置いていった駆け出し冒険者だった内の1人、ジェイド。
春から数えて半年以上。多少は冒険者らしくなったように思う。
さらに、周りには他の5人も勢揃い。
教官が俺を連れてきたのは、何度足を運んだかと思う程には見飽きた広場だ。
皇都を出て北の森の脇、街道沿いにある少し見晴らしのいい丘。
ジェイド達にヨハンとリミアを含めて総勢6名の担当駆け出し冒険者なんかを集めて、教官はなにしようってんだ?
そう思って教官の方を見るが、
「さっさと構えろよ‼」
と、ジェイドがいきり立つ。
どういうことだ? 教官に視線で聞くと、
「お前さんに修行の成果ってやつを見せてやりたいというんでなぁ」
教官はなにやら自信有り気に答えた。
そういえば・・・俺がいねぇ間は教官にあいつらのことを頼んでたんだったな。
っつーことは、なにかしら俺への対策でも教えたんだろう。
どうせ、ジェイドかそこらが教官に頼み込んでそうなったんだろうが・・・まぁいい。
成長のほどを見せてくれるってんなら、是非とも。
お手並み拝見と行こうじゃねぇか?
冷たい風を受けながら身体を軽くほぐす。
その間に、
「タイミング外すなよ?」
「お任せください! 必ずややり遂げて見せますわ!」
「それより、そっちこそ失敗はしないでよね?」
「誰に言ってんだ⁉ 俺様がミスるわけねぇだろ‼」
ジェイド、キューティー、エイラがわかりやすく打ち合わせをやっている。
そして、それとは別に、
「重要なのは反応させないことじゃないよ? だって、相手はこっちの手の内を知っているんだから」
「はい。わかってます。僕は僕の成長を見てもらおうと思ってます!」
「うん、それでいこう・・・ちゃんと集中すること。失敗したら、その。恥ずかしいから」
「・・・ですね」
「だとすれば、自信をもって胸を張るべきよ。不安なんてない。くらいの心持でいないと」
「リミアはそういうの得意そうだよね」
「あなたよりは、ね。私だって、久しぶりに先生に見てもらうんだから、緊張くらいするわ」
「ぜ、全然そう見えないんだけど・・・?」
「そうでしょうか? いつもより鼓動がうるさいのですが・・・」
「そうなんだね。それがわかっただけでも気持ちはちょっとマシになったよ。ありがとう」
ケイトとヨハン、リミアが以前より随分と親密になったように見える。
魔法のことでヨハンをケイトに任せたからか?
リミアがそこに入っているのはヨハンを心配してなのか、魔法が気になったからなのか。
だが、仲がいいんならいいことだ。
2人も、以前よりはお客様感というか、部外者感がいくらか減って見えるしな。
それだけ、6人での連携が板についてきたってことなんだろう。
「やっぱり、俺なんかより教官が教えてやった方がいいんじゃないですか? 雰囲気もよさそうだし」
「バカ言え。ワシはなぁんもしとらんよ。あれは偏に対抗心だ。お前さんへの、な」
「それだけで、ああもなりますか?」
「なったんだから、仕方あるめぇよ。それに・・・あの頃の子供ってぇのは成長速度も中々のもんだ。なめてかかると、足元ぉ掬われるぞ?」
「そいつはご丁寧にどうも」
教官の有難い忠告を胸に。
どうやら向こうの準備も整ったらしく――構える。
「お互いに、準備はいいんだろぉな?」
頃合いを見計らって、教官が間に立つ。
「ああ! こっちはいつでもいいぜ!」
「こっちも。問題ねぇよ」
「よぉし! そんじゃぁ最後に。こいつぁ模擬戦だ。やり過ぎねぇよぉにすること。いいな?」
その場の全員が頷き、教官が頷くと。
「始め‼‼」
朝の静寂を切り払うように手を振りかざした。