作品タイトル不明
過去の視線
「なにがあった?」
まずは事情を知ることからだ。
気分は良くねぇが、気に入らねぇというだけで暴れてたら生きていけねぇからな。
「それがそのー・・・・・・」
話しずらそうにしながらも、ミリーは要点を押さえながらなにがあったのかを詳しく説明してくれた。
早い話が。
「ワンダーゴーレムの単独討伐の件がバレた、と」
「うん。・・・で、それが原因だと思うんだけど、昔の話も」
「昔ってのは・・・――」
「お兄ちゃんの加護のことだね」
「あぁ。なるほどな」
弱小と言っていい皇都のギルドが、皇室経由とはいえ何の前触れもなく、希少なモンスターの素材を競りにかけた。そして、そのことをほとんどの冒険者は知らなかった。だから、知りたがった。
なにがあったのか。
もちろん最初に聞きに行く相手はギルドマスターのブロンソン教官。
だがまぁ、教官だって心得てる。
適当に話をでっちあげるなりで受け流したが・・・。
これがよくなかった。
解体や精錬の過程で手伝った連中との話の間に齟齬が生まれたらしい。
そこから突き上げを喰らって、それでも隠していたらしいが。
そもそも皇都のギルドに個人A級以上の冒険者はいない。儲からねぇからな。
その上で、モンスター討伐の時期やその関係者を洗い出し、同時期の軍やその他の動きを調べたんだと。
そうすりゃ分かるのが、軍の動いた形跡もなければ、それに匹敵する団体や人物の目撃報告すらないという事実。
と、なれば・・・残すは皇都の誰かがってことになる。
パーティーでA級なのは蒸気の騎乗者のみ。
確認されたが否定した後で”解体に参加しただけだ”と、ご丁寧に説明したようだ。
そうなればもう、残っているのは元A級の冒険者。
1人はブロンソン教官。
可能性としてはないとは言い切れないが、普段の仕事の多さと引退してからの長さを考えれば、もう1人に軍配が上がるだろうと。
そして、そのもう1人が・・・俺だ。
引退してから1年も経っていなければ、それほど忙しそうにしているようにも見えず、受け持つ駆け出しは問題児ばかり。
なにより、ギルドマスターが直々に連れてきた人物・・・ともなれば、経歴ぐらいは調べるってもんだ。
そうやって、調べる過程で俺の昔を知る人物にでも行き当たったんだろう。
”加護無し”や”忌み子”の噂にまで辿り着いた奴が出た。
一応。冒険者としての俺は”ただのゼネス”であり、北の辺境伯グラーニン家とは関係ねぇってことになってたが・・・冒険者を引退して、こっちに戻ってきてからは、色々便利に使わせてもらったからな。
『グラーニン』・『加護』とくれば。
その界隈では有名な話で、しかも一部貴族にとってはかなり都合のいい話の種でもあった。
だから、結びつけるのはそう難しくなかっただろう。
「それで、そいつはいつ頃バレたんだ?」
「え? ぇっと・・・今から1か月くらい前かな? それがどうしたの?」
「いや、なんでもねぇよ」
1か月前ってことは、俺達が絶賛ガルドナットで盛大にやらかしてたあたりだ。
蒸気の騎乗者はもちろん、サンパダも無関係だろう。
まぁどこから情報が洩れてたかの確認でしかねぇんだが、仲間だといったやつらを疑いたくはねぇからな。
信じられる情報が出たのは喜ぶべきだ。
そう胸を撫で下ろしていると、
「・・・・・・なんでもないことなんか聞かないくせに」
ミリーが口を尖らせながらボソリと零す。
「別に。疑いたくねぇ奴らが居ただけだ」
「ふーん? それで、どうだった?」
「疑う必要はなかったよ。ありがとな」
「そう? それで?」
「それで?」
「私は?」
「最初から疑ってねぇよ!」
頭を雑に撫でながらそう言ってやると、自信に満ちた顔で、
「なら、よかった!」
とかなんとか。
機嫌を直してくれたようで俺も良かったよ。
それにしても・・・どうすっかな?
俺はいつぶりだかの好奇の視線を背に浴びながら、階段を上って部屋に戻った。