軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

重いがあれば

俺が倒れた後、ドデカい火柱みたいな魔法はしばらくして消えたらしい。

それによる死傷者はゼロ。

傭兵とカイオール商会の会頭ディーノは、意識こそ失っていたが、命に別状はなかったそうだ。

サン達が手分してその全員を捕縛。

その時、亜人達も事情を察したのか手伝ってくれたんだという。

縄などは亜人が取り出してきたもので、奴隷狩りで使われてたものらしく、元を辿ればカイオール商会のものだったっては、中々に皮肉が聞いてて笑えた。

その祭に、フッチのナイフが突き刺さって倒れていた人物が目を覚まし、身体の調子がいいことに驚きながら、大丈夫だということを全員に伝え、それを受けて、わだかまりは随分と少なくなったようだ。

一部。勘違いから恥をかいた叔父なる人物が頑なな姿勢を貫いているらしいが・・・それも、現地に残ったホウとフッチが自分達の正体を明かして話すことで、理解を得るつもりなんだそうだ。

それが済んだら亜人達には、一度皇国へ来てもらってから、南の辺境伯領経由で冒険者の国へ渡ってもらうらしい。

どうにも連合側には戻れねぇ事情があるんだとか。

まぁだからってガルドナットに残るわけにもいかねぇだろうし、ガルバリオに住むのも難しいんだろう。ガルドナットほどじゃねぇか、ガルバリオにも似たような偏見はあるからな。

その点、冒険者の国に種族の分け隔てはない。

”役に立つかどうか”という、わかりやすい尺度でしか測られないからだ。

そのせいで苦労することはあるだろうが、それはどこに行っても付きまとう問題だし、どうしようもねぇ。

カイオール商会の方は、大方の予想通り、もぬけの殻になっていたそうだ。

俺をホテルに運ぶ道中で立ち寄ったらしいが、門番すら居らず、中もがらんどうのようになっていたらしい。

夜中だったから、というものあって結構怖かったみたいだ。

語るスイは身震いを交えながら、

「ああいうところは2度とごめんです!」

いきなり驚かされようものなら、色んなものが漏れるかもしれない。とまで言っていた。

この場合、漏れるのは魔法なんだろうな。

結局、カイオール商会が誰の考えのもとで動いていたのか。ってのは分らず仕舞いだった。

どうやったのかは定かじゃないが、証拠品どころか、商会にあったはずの荷物が全部消えていたらしいからな。

なら残った連中、特にディーノからでも話を引き出せばいいじゃねぇか。と思ったんだが・・・、

「その人ならもう引き渡したですよ?」

と、言われてしまった。

なんでも、

『こんな人数を預かってくれる場所がないですからなぁ』

っつーことらしい。

まぁ、そう言われればそうなんだけどな。

加害者を被害者のそばに置いていくわけにも行かねぇから、亜人連中のところにはおいておけず。かといって、町にならそんな場所があるかと言えば、そんなはずもない。

それで、仕方なくサンパダは評議会とやらに引っ張っていったらしい。

評議会ってのは、選挙で選ばれたガルドナットの政を受け持つ大商会の商会頭達のことであり、それらが集う会議のことでもあり、さらにはそれだけのために用意された施設のことでもあるんだそうだ。

そこで罪人として認められれば、牢屋にぶち込んでおけると考えたからだ。

つっても、着いたのは夜中であり当然、頼みの商会頭たちがいるわけもなく。だが、夜警はいたようで。緊急で各人が集められたらしい。

迷惑なことだ。

とはいえ、ただの不正ならまだしも、奴隷狩りともなれば国難だ。

その首謀者が捕まったとあれば、馳せ参じないわけにもいかなかったんだろうな。

そこで役に立ったのが、俺がサンパダに頼んでおいたとっておき・・・つまるところ”録音”だ。

スイがいじくりまわした通信魔道具の機能一つで、唯一俺達に使えたアレだ。

亜人との戦いから含めて、ずっと馬車内に籠っていたサンパダには任務があった。

それがこの録音だ。

本来は亜人との会話から証言を引き出すつもりだったんだが、亜人とはほとんど会話がなく、代わりに、俺とディーノとのやり取りを録音していたらしい。

その内容は、ほとんどがディーノ本人による罪の自白であり、評議会はそれをもって、ディーノを奴隷狩りの中心人物として認め、その身柄を預かったんだそうだ。傭兵共も一緒に。

ついでに、

「そういえば、ゼネスさんよろしくと言われていたです!」

思い出した! とスイが付け加えたが・・・。

どうやら、評議会の面子ってのはあの日、俺がサンパダと挨拶回りに行った先で会った爺さん達らしい。珍しいこともあるもんだ・・・って、んなわけねぇよな。

ここまで見越してた。なんてことは流石にないだろうが、それでも。ちゃっかりしてるぜ。生粋の商人が。

それで、そんなサンパダはどこに行ったんだ? と聞いてみたら、

「カイオール商会があった建物に行ってるです!」

予想外の言葉が返ってきた。

「どういうことだ?」

口をついて出た疑問の答えに、俺はさらに驚いた。

どうにも・・・俺は丸1日寝こけていたようだ。

そんなことは今までにそうはなかったってのに・・・頭の重さはそれが原因か?

そしてその間に、サンパダはサンとタンの両名を連れてオークション会場に赴き、なんの問題もなく売れた商品の代金を受け取り、その結構な額を持ったまま、もう一度評議会に顔を出しに行ったらしい。

そこで、

『随分いい取引が出来たそうじゃないか? ものは相談なんだけれどね? 最近とある商会が使っていた物件が空いてね・・・。どうだい? 君の商会をこのガルドナットに置いてみては?』

という誘いがあったんだそうだ。

『もちろん。出ていった理由が理由だからね。嫌なら無理にとは言わないけれど・・・安くしておくよ?』

そう言われ、内見に行っていると。

どいつもこいつも、商人って奴は・・・。

などと、考えていると。

席を外していたスイが膳を持って帰って来た。

その膳を俺のベッドの脇にある机に置いて、

「それじゃぁ教えてくださいです‼」

「・・・・・・なにを?」

「あの魔法のことです‼ ずっと気になってたですよ⁉ それに魔法のこと、話してくれるって約束です‼」

身を乗り出して爛々と目を光らせるスイ。

病人? に見せる態度じゃないっていうか・・・冒険者も、欲張りなことにはかわりねぇか。

重い頭を抱えて、重い口を開くために、重い腰を上げるとしよう。

期待に応えるために。約束に適えるために。仲間に報いるために。

重い思いの旅の終わりを想い。