作品タイトル不明
思いあがれば
空気の中には、人に必要なもんと、そうじゃねぇもんがあるらしい。
そしてそれは、炎によって消費され、風によって供給される、と。
昔、ドヤ顔で研究成果を聞かせてきた自称”世界最高の魔法探究者”がいた。
当時から自分の力不足に悩んでいた俺は、話半分といった感じで興味もなさそうに聞いて見せ、裏ではなにかに使えないか? と、じっくり考えたりもした。
結論はいつも通りの魔力不足であり、その度に諦めも早くなっていった。
仲間の為に! と思って、そういった相性で魔法を使ったこともあったが、結果は伴わず。
結局は身体能力を上げる方が相対的な効果があった。
だが――。
目の前には燃え盛り、逆巻く炎の竜巻。
夜を貫く輝きが、空を突き刺す。
それはどこまでも遠く、航海を照らす灯の台が如く。
この身が揺ら事のない大地を舞台に、悉く敵のみが平伏す。
「・・・ハッ! ハハハハ・・・」
乾いた風に、干乾びた笑いが盛れる。
この感情はいったいなんだ。
その答えはきっと、俺にもわからねぇ。
ただ・・・。
「すごいです‼ すごく、すごいです‼」
ほとんど隣で見ていたスイはただ”すごい”と言ってくれていた。
その後に続く、
「・・・でも、大丈夫なんです?」
という言葉は聞き逃したが。
使った先からどんどんと補充されていく魔力。
魔力があるってのはこういうことなのかと。感覚で理解できた。
いつか想った絵空事が形になる現実。
敵には1つの傷すら与えず屈服させ、その力を誰が目にも焼き付ける。強く、強く。刻み付ける。効率なんかじゃねぇ。ただ圧倒的な力の感覚。
この全能感たるや。
同時に湧き上がる。今までの俺とはなんだったのか。
どちらも、久しく忘れていた気がする。
高揚も寂寥すらも。戦いに、成長にさえ、要らないものだと切り捨てていた気が。
思い出したのは期待だ。
俺自身に対する期待。
このままいけば、どうなる?
俺は・・・何者かになれるのか?
もし、叶うならば――。
そう思っても、せめぎ合うのが心ってもんだ。
ふと、聞こえてくる。
――今さら、”なに”になろうってんだ?
気付けば、両隣にはホウとスイが。そして2人して、
「「もう・・・っ⁉」」
なんて言いやがる。
もう・・・なんだ?
と、聞き返すより早く。
調子に乗っていた俺は――ぶっ倒れた。
目を覚ました時。隣にいたのは、相変わらずスイだった。
「気が付いたです?」
覗き込む顔の向こうに見える天井はどこだったか。
適当に、スイに返事をしてから体を起こして、辺りを見れば。
「・・・ホテルか?」
開いた窓からは光と共に、ガヤガヤとした雑踏が聞こえ、部屋には多少の見覚えがあった。
「そうです! 窓、閉めるです?」
「いや、いい」
判然としない意識を明瞭にするよう頭を振るが、効果はいまひとつだ。
「なにがあったか・・・覚えてるです?」
そんな俺に、スイは少し怒った様子で問い詰める。
「あー・・・まぁ。なんとなく?」
「・・・はぁ」
その釈然としない俺の言葉に、スイは呆れたため息をひとつ零してから、あの後どうなって、今なにをしているのかを話してくれた。