作品タイトル不明
嫌がらせは誰の思惑か
夕闇に染まる林道は暗く、馬車の速度も落とさざるを得ない。
だが、それとは別に俺達の足を止める理由がった。
「・・・またか」
後ろの扉を開けてサン達が出張る。
そこには、どうみても真新しい倒木があった。
明らかに人為的なものなわけだが・・・。
「おかしいですな?」
「そうだな」
蒸気の騎乗者の面々が木を退かす間、俺は馬車の中でサンパダを護衛する。
「どうにも歓迎されていないといいますか・・・」
「意地でも通したくねぇのか、なんなのか」
地図に記された拠点と思しき印に近付くにつれ、道を塞ぐ障害が多くなっている。
これは、どう考えても亜人の仕業と見ていいだろう。
「それにしても・・・」
「えぇ。ここまであからさまに足止めをするのは、どういうことなんでしょう?」
「馬車が問題か、あるいは・・・」
傭兵共に来てほしくない事情が亜人側にあるか。
もしくは、すでに俺達の情報がまわっていて足止めしろっつー命令が出てるか、だ。
「気になるな」
「どちらの思惑か・・・ですか?」
「あぁ。それによって色々と対応が変わるだろ?」
「まぁそうですな。彼らがカイオール商会に協力的であるならば、壊滅・・・とまでは言わなくとも、動けなくしておかなければ後手を踏んでしまうでしょうな」
「逆に、傭兵共を嫌ってるならこっちの戦力に出来るかもしれねぇ。迷いどころだな」
どちらだと今決めつけるのは良くねぇな。
面倒だがどっちの場合でも対応できるように、両方の案を考える必要がありそうだ。
「撤去。終わったぞ」
「ご苦労さん」
「それで・・・どうするんだ? このままじゃジリ貧だぞ」
「そうだな・・・」
サン達が戻ってきて、馬車も進みだす。
サンの言う通り、このままじゃジリ貧だ。
木を切り倒すのと倒れた木を撤去するのとじゃ、後者の方が労力がいる。
それは岩でも穴でも似たようなもので、なにより。
むこうとこっちじゃ母数が違う。
亜人が何人いるのかは知らねぇが、少なくともこっちより数が少ねぇなんてことはねぇだろ。ややこしいな。
要は限られた体力・魔力で相手にするのにこのままでいいのか? ってことだ。
「お前らはどうしたいんだ?」
「俺達が決めるのか?」
「最終判断は全員の合意で取る。ただ、ここに来たのはお前がそうしたいっつったからだ。なら、意見の一つも聞いておこうと思ってな」
「確かにここに来たのは俺のわがままだけど・・・」
と、サンが仲間の方をチラリとみる。
「俺はただ、奴隷狩りなんてものを見過ごしちゃいけないと思っただけなんだ。だから、どうしたいっていうのは・・・」
「なら、今決めればいい。その気持ちはみんな同じ」
「です‼ スイもそう思うです‼ ちなみにスイはなんでもいいです‼」
「僕は・・・同じ亜人だからね。なんでこんな国にいるのか、気になるよ。僕ならこんな国に来たくはないし、居たくもない。奴隷狩りなんかをやっている理由も」
「そうすねぇ・・・俺も。永らく流れ者だった身としては、事情については気にしてもいいんじゃないかと思うすねぇ。利用するにしても、しないにしても。なにがあったのかは知っておきたい」
御者台からホウも答える。
サンは少し悩んでから、
「じゃぁ、亜人達の事情は聴く。その上で、対話で奴隷狩りをやめさせられるようなら戦わない。けどもし、それが出来なかった時は・・・力尽くでやめさせる。それでいいか?」
全員が頷く。
「方針は決まったようだな?」
「ああ!」
「んじゃ、もう一仕事頼む」
いい顔のサンに俺は親指で表を示し、足止めのおかわりを知らせた。