軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

side―サンパダ

私が冒険者に憧れたのはきっと、幼少の砌。

小さな農村に育った私を、私達を助けてくれたあの方々が、優しく、強く、頼もしく、なにより・・・楽しく過ごしていたように見えたから、でしょう。

都会からは遠く離れた片田舎の貧しい家に生まれた私は、稼業である農作を手伝うのが当たり前でした。

それをサボれば夕食の量を減らされたり、酷い時には抜きにされたりもありました。

食べることが生きがいだった私には、あんまりな仕打ちだったと今思い出してもそう思います。

そんな田舎になぜ冒険者が来ていたのか・・・。

それは、なんにもない田舎にも危険はあるからです。

畑をやっていれば、食べるものを求めてモンスターがやってくる。ただ、それだけのこと。

冒険者の皆さんは夏から秋にかけて、よく訪問と滞在をしていました。

夏にはモンスターを追い払い、秋には収穫を手伝ってくれたのです。

モンスターと戦う姿は勇ましく、同じ男としてかく在りたいと思い。それでいて、私と接するときにも優しく、嫌な顔もせず話す姿が嬉しかったのを覚えています。

今考えれば、村は依頼主の立場なのだから、そういうものであると分かってしまうのですが、おぼろげに残る思い出の中にそんな素振りは一切なかったので、きっとあの村はあの方々といい関係を築けていたのでしょう。

だからこそ私も憧れ、父に。

「いつか僕も冒険者になるんだ‼」

と言えたのでしょう。

それを聞いた父はと言えば、

「ならまずその体形をどうにかしないとなぁ?」

などと笑っていましたがね。

確かに私は当時から太っていましたとも。けれど、それは。

畑で取れる芋がおいしかったのが悪いと、私は思うのです。

そんな冒険者の中でも、私の知る限り最もお強い方が私に。

「話がある」

嫌がらせの為、誰も残っていなかった馬車の中、真剣な面持ちで・・・そう切り出して来られました。

ゼネス様と2人きりになるのは初めてではありません。

先ほども同じように、倒木を撤去する間中、同じ馬車におりました。

それなのに、改まっての話とは?

そう思いながら外の様子を伺います。

蒸気の騎乗者の皆さんは誰かの嫌がらせによってできた土砂崩れを片付けてくれています。

ただ、土砂崩れですから。倒木と比べても時間がかかるでしょう。

そう思ったからのお話。と、言うことなのでしょう。

「なんでしょうか?」

心して聞こうと返します。

「力を貸して欲しい」

確かに。

確かに、そう言ったのです。

冗談などではなく、一商人に過ぎない私へ。

時が止まったかのように感じられるほど、私は耳を疑ってしまいました。

「・・・・・・なにを・・・?」

ようやく声に出せたのはそれだけでした。

頭が追い付いてきませんでしたからなぁ。

「アンタの目を借りたいんだ」

「私の目を・・・?」

なにも、目をくり抜いて渡せということではないでしょうが、いったいどういうことでしょう?

「あいつらが亜人の事情を知りたがってただろ? そこで、真偽を見極めて欲しいんだ。その時、アンタは馬車にいるだろうから、ここの小窓を開けて話を聞いて、嘘をついているかどうか・・・合図を出してくれ」

「えぇ・・・そのくらい、協力させてもらいますとも。ここに来ているのは私の願いでもありますからなぁ」

「あれは話を合わせてくれただけだろ? 意見する、なんざ。ここにいるのは俺達の・・・いや、俺のわがままだ。アンタは巻き込まれただけに過ぎない。こんなのは、なんの利益にもならねぇんだから」

「それは違います! 確かに私は。ゼネス様の思惑に気付いてましたとも。本人達にやりたいと、そう言わせようとしていたことにも。それで経験を積ませようと思っていたことにも。もちろん、気付いておりました」

それは貴族的な話し方で。

答えを先に用意しておいて、それをあえて選ばせるという・・・ただそれだけのことで。

気付かないわけがないのです。

「しかしながら、私は・・・期待していたのです」

いつか憧れた冒険の一端を。

叶わなかった夢の一欠けらを。

この目で、見れるのではないかと。

あわよくば、

「私も仲間だ。と言っていただけるのではないか、と」

言えるのではないかと。

そんなことはないと知っていた。とうに諦めてしまったのだから。

そうはならないと知っていた。私に出来ることなど・・・ないのだから。

「ハッ・・・」

年甲斐もなく恥をさらす私を見て、吹き出すように息を吐き、クツクツと笑う。

本当に楽しそうに。

厭味ったらしさなど感じさせない顔で。

「本当に、欲張りだな? アンタも」

そう言って笑った後、

「仲間だっつーんなら、もう一つ。やってもらいたいことがあるだがな?」

さらに一つ切り出した。

その説明を聞いて私は、

「なるほど確かに。それは私にしか、務まりませんなぁ!」

一緒になって笑ったのです。

遠く、あの方々と同じように。