軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

これからの目的

「それで? どこに行くんで?」

全員が馬車に乗り込み、御者台に座ったホウが聞く。

馬車の座席はL字になっており、御者台と背中を合わせる形でサンパダ・俺・サンが左から順に座っている。

サンパダの前には通信の魔道具。サンの右前には残りの座席だ。

手前からスイ・フッチ・タンと並ぶ。

この馬車の乗り降りの扉は最後部に取り付けられていて、全面が開くようになっている。

よくある荷台を改造したような形だな。

デカい武器を使う傭兵や冒険者を護衛として雇う時に用いられることが多い護衛車両によく見られる形式だ。

それはさておいて、

「お前らはどうしたい?」

俺は疑問を聞き返すように答える。

「どうしたい・・・って、どういうことだ?」

隣に座るサンがわけがわからないといったような表情で返す。

そうだな。ちゃんと整理するべきだろう。

「俺達の今の目的はなんだ?」

「そんなの――! ・・・・・・?」

立ち上がるように勢いよく”なにか”を言おうとして止まり、ストンと腰を落とす。

「そうか・・・私達には今、目指す場所がない」

代わりにタンが気付きを得て答える。

「そうなんです?」

スイが首をひねる。

「考えてみて。やるべきこと」

「逃げることです!」

「どうして?」

「亜人だってバレたです!」

「そう。でも、逃げてどうするの?」

「逃げて・・・・・・どうするです?」

「それがない。だから困ってる」

「そうだったですか‼」

スイは疑問が晴れてスッキリした顔だ。

こっちとしても、分かりやすく話がまとまって有難い。

「そういうことだ。もっと言うならお前らだけ隠れててもいいんだぜ? 元の依頼はオークション終了後、帰国までの護衛だ。オークション会場に行く間の護衛は俺1人でも構わねぇからな。後で合流しても問題はねぇ」

「でも! それは‼」

俯いていた顔を上げてサンが抗議の色を示すが、

「僕はその方がいいと思う。はっきり言って、足手まといだよ。僕達は」

フッチがぽつりと刺す。

「なんでそんなこと言うんだよ‼」

「だって本当のことじゃないか‼ さっきの戦闘を見て、わからないわけないだろ⁉」

「それがなんだ‼ ゼネスさんが邪魔だって言ったか⁉ 足手まといだって言ったのか⁉ 迷惑だから近付くなって! そう言われたのか⁉ 言われてないだろ‼ それに・・・さっきあんな風にわざわざ話ながら色々見せてくれたのは! 俺達の為に決まってる‼」

そうだろ⁉ とサンが熱い眼差しを送ってくる。

「まぁな。邪魔だとか足手まといだなんざ思ってねぇよ。ただ、どうしたいのか聞いてるだけだ」

「それは・・・僕だって聞きたいことはある。教えて欲しいことも出来たよ! でも‼ 今こうして逃げなきゃいけないのは僕のせいなんだ‼ それなのに――‼」

「そんなの誰も気にしてない‼」

「気にしてるよ‼‼ 僕が気にしてる‼ つまらないことでミスをした僕自身が‼ リーダーだってそうでしょ⁉ 貧民街のこと、気にするじゃないか!」

「それは今関係ない――‼‼」

「そこまでにしていただけますかな?」

パン‼ と大きく拍手を打ってサンパダが割って入る。

「サンパダさん・・・」

「でも・・・!」

言い争っていた2人はまだ落としどころを見つけられていない様子。

それを、

「気持ちはよくわかりましたよ。お2人の思いは同じでしょう。まだ、ゼネス様に見せてもらいたいものがある。教えてもらいたいことがある。聞かせてもらわなければいけないことがある。ただ・・・そのための目的が思いつかないのでしょう? 早くしなければいけないのにと、焦って」

ゆっくりと言い聞かせるように話すサンパダが落ち着かせる。

「・・・・・・はい」

「そう、だね。うん」

「でしたら心配ありませんよ」

「それは・・・」

「どういうことですか?」

サンパダの自信に2人は困惑が隠せない。

自分達の問題に一番迷惑を被っているのはサンパダのはずだからだ。

だが、サンパダはそんなことを微塵も感じさせない自信に溢れた笑顔でいう。

「私が意見すればいいのです」

そうでしょう? と俺に向かって。

「依頼主の意向には逆らえねぇよ。冒険者ならな」

「初めからそのつもりだったでしょうに」

はっはっはと笑うサンパダを横に。

俺はこの馬車で見つけた地図を広げた。

「これは・・・?」

「そこの通信機の隣に突き刺さってた地図だ。何枚かあるが、全部に拠点のようなものと移動線。さらには襲撃と思われる印が描かれてる」

広げた地図に描かれた線や印をなぞっていき、

「ついでに、日付も」

最後に日付を指差す。

「これって! 奴隷狩りじゃないのか⁉」

「たぶんな」

「たぶんな⁉ ・・・それじゃ全部自作自演だったっていうのか⁉」

「おそらくはそうでしょう。今こうやって追われているのはそのせいのはずですからなぁ」

「2人共、知ってたんですか?」

「勘違いしないでください? 証拠はないんです。それは私にはどうしようもない」

「ただ・・・」

俺は今日の日付が書かれた地図を、そしてその日付を指差して言う。

「どうしたいのかは聞いとこうと思ってな?」

俺としてはそうする理由がない。

俺が狙われているわけでもなければ、依頼主にも直接関係があるとは言えず。最悪、無視したところで収入やその他一切には変わりがないからだ。

だってのに、

「そんなの・・・・・・決まってるだろ?」

目の前のサンは自ら厄介事を抱え込むことに決めたらしい。