作品タイトル不明
通信魔道具?
地図・・・だな。
スイが弄り回している魔道具の横にまとめて、筒状に丸めるようにして突き立てられていた幾枚かの地図。
そこには、どうにも意味ありげな印などが描かれており、ガルドナット近郊から段々遠く、果てはガルバリオ皇国の直ぐ近くまで。
道中あらゆる町と街道を網羅した地図。
森や山の麓には同じような印。
そして、謎の日付。
これは・・・どうしたもんだろうな?
明らかに奴隷狩りに関係するもんだが―――。
これをもって証拠と謳うには弱い。
ただの記録をまとめたものや、予想したに過ぎないと言われてしまえばそれまでだ。
だったら調べましょうとなったところで、その頃には移動させられているだろう。
かといって胸糞悪い話ではあるが、やめさせなければならない理由もねぇ。
言ってしまえば、俺達には関係のないことだからだ。
それにしても、杜撰な管理だな。
暗躍してるつもりがあるんなら、もっと徹底して隠せばいいものを。
逆に言え、ばこれは相手にとっても咄嗟のことだった証明ではある。
出し入れのしやすい位置にあった馬車は当然、使う予定や使った経緯があるからそこにあるわけだしな。
ただ、気になるとすれば、
「今日の日付があるんだよな・・・」
ガルドナットからそう遠くない位置に今日の日付が記された街がある。
これがどっちの意味なのかはわからねぇ。襲いに行くのか、助けに行くのか。まぁどっちでもいいんだが、蒸気の騎乗者に伝えるべきか、否か。伝えるにしてもなんて言うべきか。
そう思っていたところに、
「今日の日付が、なんです?」
目の前で魔道具をガチャガチャやっていたスイが聞いてくる。
口に出ちまってたか・・・。
幸い、というか。スイはそこまで俺の言葉が気になっているというわけではないようで、目線は魔道具に釘付けのまま。思うように事が運ばない退屈しのぎに話がしたいだけのようだった。
「いや、なんでもねぇよ。それより、なんか分かったか?」
だから適当に話を逸らす。
「さっぱりです! なんで魔道具はこんなにわけのわからない形にするです? 使いにくいだけです‼ 特にこのボタン! こんなに何に使うです⁉ 全く理解できないです‼」
そう言いながら摘みを適当に回し、ボタンを順番に押していく。
「こんなに複雑にするんなら普通に魔法を使った方が早いです‼ そう思うですよね⁉」
むー‼ と憤りを募らせ魔道具をバン‼ と叩き、仕舞いには顔までこっちに向けてスイが抗議してくる。
気持ちはわかるけどな・・・と切り出そうとしたところで、別の声がそれをかき消した。
『そう思うですよね⁉』
怒気を孕ませたスイの声だ。
おまけにバン‼ という魔道具を叩いた音まで帰ってきた。
その声に一番驚いたのは本人で、
「なぁ⁉⁉ なんなんです⁉ バカにしてるんです⁉」
ビクゥ⁉ っとなった後に、慌てて魔道具に睨みを効かせていた。
その姿を見て、どうにも笑いそうになるのをこらえながら俺は、
「どこのボタンを押したか・・・分かるか?」
と聞いてみる。
スイは顔を赤くしながらも、
「たぶん。これだったと思うです」
同じように赤いボタンを押す。
カチッっという音は聞こえたが、さっきの『そう思うですよね⁉』という雄叫びと魔道具と叩く音は聞こえてこない。
「・・・・・・なにも起きないな?」
「おかしいですね? こっちだったです?」
今度は青いボタンを押す。
すると、
『・・・・・・なにも起きないな?』
『おかしいですね? こっちだったです?』
赤いボタンを押してから青いボタンを押すまでの俺達の会話が聞こえてきた。
「あれ? さっきと違うです」
「もう一回、青いボタンを押してくれ」
「わかったです!」
もう一度。スイが青いボタンを押すとさっきと同じ、俺とスイの会話が。
「どうやら、赤いボタンを押すと記録して。青いボタンを押すとそれを聞かせてくれるみたいだな」
赤いボタンは押した後、押し込まれたままだった。
青いボタンを押した時にはカチャンっつー音がしてたから、おそらくそこで赤いボタンの押し込み解除されるんだろう。
つまり、赤いボタンが押し込まれている間の音が記録される仕組みだ。
「うーん・・・。それはいいですけど・・・通信はどうやるです?」
「さぁなぁ?」
幾つもあるボタンと摘みの内、2つの機能がわかっただけだ。
だが、もしかすればこれは・・・使えるかもな?