作品タイトル不明
貰っていくぞ
「じゃぁ・・・まぁ。場所を変えるか」
見渡せばそこらに転がる傭兵共。
一見すれば死屍累々の戦場だがその実、全員命に別状はないはずだ。
派手に事故らせた後ろの連中も含めて重傷者はいない。
多少回復魔法が必要な奴もいるだろうが死の気配は遠く、捨て置いても問題はない。
「場所を移すって・・・移動するのか?」
驚いたようにサンは言うが、
「ここに残ってどうすんだよ? 後続の気配もないんだし、今のうちにずらかるぞ」
ここに残る理由がない。
もう相手になる傭兵も居ないわけだしな。
「でもどこへ? というか、どうやって? 馬車は・・・・・・」
振り返って視線を落とし、乗ってきた馬車を見つめるサン。
馬は無事だが、車体はボロボロのバラバラ。到底、乗ることなど出来はしない。
だが、
「なに言ってんだ。馬車なら、あそこに・・・あるだろうが」
俺は正面を指差す。
そこには傭兵共が使っていた黒塗りの馬車が2台。
おあつらえ向きとばかりに無傷のまま鎮座している。馬も退屈そうにしているようだし、問題なく使えるだろう。
「ま、2台に乗り分ける必要はねぇから、片方は使えそうなもんだけ頂いて破棄するか」
「奪うのか⁉」
「仕方ねぇだろ? 歩いて逃げるわけにもいかねぇんだから」
「それは・・・そうだな。でもいいのか? 問題になったり・・・」
「しねぇよ。相手にとっちゃ俺達とのいざこざは問題には出来ねぇ。証拠がねぇからな」
「証拠?」
「お前らのことだ。お前らが捕まって亜人だとバラされ、奴隷狩りに関係があった。とされない限り、俺達には襲われるいわれがねぇんだよ。だから問題にはならねぇ。あの馬車でオークション会場に乗り付けようが”カイオール商会から贈られた”と言えばそれで済む話なんだよ。奴らがどんな顔をするかは別としてな」
「なるほど・・・そういうことになるのか」
どうやらサンは納得できたようで、パーティーメンバーに指示を出して馬車へ向かった。
「つーわけで・・・アンタには悪いんだが、あの馬車に乗ってくれねぇか?」
俺は馬車へ向かったサンの後ろにいたサンパダに声をかける。
「えぇ、その程度。構いませんとも」
「悪いな。俺の魔法が半端だったせいで、自慢の馬車をお釈迦にしちまって」
「仕方ありませんなぁ。元はと言えば私共の不備であり、脆い車軸を使ったせいですから。文句など」
「そう言ってもらえるとありがたい。弁償代はどこぞの商会に出してもらうつもりだから、そこだけは安心してくれ」
「はっはっは! でしたら、次はもっといい馬車にしなければなりませんな‼」
サンパダは笑って許してくれたが、依頼者を危険にさらした事実は変わらない。気を引き締める必要がある。
なにせ、敵の次の手が読めないんだから。
馬車の方へと近寄ると、
「ゼネスさん! 見て欲しいです‼ この魔道具なんだと思うです⁉」
スイが出てきてグイグイ腕を引っ張ってきて、中へと連れ込まれる。
そこにあったのは、
「通信機・・・だろうな」
音魔法の反応がある鉄の箱が置かれいてた。他にも風や炎、雷なんかの魔法反応もあるにはあるが、かなり小さい。
「やっぱりです‼ ほら! 言った通りです‼」
スイがえっへんと胸を張ってホウに向くが、
「そりゃ最初から疑ってねぇよっての。そうじゃなくて、記録とか漁れねぇかって事すよ」
えらいえらいとスイを褒めながらも、話を進めようとこっちに視線を飛ばしてくる。
「どうだろうな? 生憎と。俺はほぼ完全な魔力切れなせいで、そこまでは調べられねぇ」
「そうすか。じゃ、壊しときます?」
「壊すんです⁉ もったいないです⁉」
「気持ちはわかるんすけどねぇ。使い方もわからねぇのに置いといたら、こっちの会話が筒抜けになるかもしれねぇ。危ないと思うすけど?」
ホウの言葉に、うーん。と悩むスイ。
「使い方が分かりゃいいんなら、出発までに色々いじってみればいい。壊れりゃそれはそれでいいし、使い方がわかったなら相手の通信を聞けるかも知れねぇしな」
「なるほどです!」
早速スイは箱についている摘みなんかをいじり始めた。
「そんなんでいいんで?」
「ああ。どうせ、相手の狙いもわからねぇからな。あれでなにかしらでもわかれば、十分な儲けになるだろ?」
「けど、通信ってことはこっちの居場所もバレるんじゃねぇすか?」
「たぶんな」
そうじゃなきゃ貧民街での連携は不可能だろう。
「それじゃ――ッ⁉」
「でもいいんだよ。最初から追われてるもんだと想定してれば、なんの違いもねぇだろ?」
「それは――・・・そっすね。確かに。なら、出発は早いに越したことはねぇでしょう。急いで準備しますよ」
そう言ってホウもやるべきことに取り掛かるべく外に出る。
俺も。サンパダを馬車に乗せるべく、危険なものがないかなど中を点検し・・・そこで、気になるものを見つけた。