軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

なにがしたかったのか

ザッ! じゃねぇんだよ!

今さら余裕ぶって出て来たところで遅ぇってのがわからねぇのか?

歩き方やら体捌きで、ある程度の実力なんてわかるだろうが‼

今までの奴らと比べて普段の給料がいいのか、扱いがいいのか知らねぇが、用心棒を気取ってんじゃねぇよ!

お前とさっきの奴らにそんな差はねぇ! 一々時間かけさせんな‼

こういう、勘違いしてる奴が一番腹が立つ。

そうは思うが・・・冷静に、だ。

どうせ一発なのは変わらねぇ。人間の耐久力じゃワンダーゴーレムの拳は耐えきれねぇからな。

その一発に意味を持たせるって決めたはずだろ? なら、最後までやりきるべきだ。

自分に言い聞かせて、考える。

こいつを有効利用するための情報を。

それで思い至ったのが、

「お前ら、受け身って知ってるか?」

無手ならではって程じゃないが、一番注意を払うことだ。

「ほう? この俺を相手に、変わらず解説しながら戦うつもりか? 大した度胸だ!」

「・・・・・・・・・」

一人盛り上がってる奴は置いといて、振り返って見ると。

ほとんどが首を振っていた。

まぁそうか。

今時、素手で殴りかかってくる奴なんていねぇしな。

吹っ飛ばされても大抵は魔法でリカバー出来る。覚えなくても、知らなくても問題はない。

ただ、

「だったら気を付けろ。無手を相手にするなら掴まれるな。どういうことかは・・・今から見せてやる」

予備知識ぐらいはあってもいい。

「いつまでその余裕が続くかな‼」

俺の言葉が終わるや否や、最後の傭兵が突っかけてくる。

つっても・・・なんてことはない。

右正拳突きから右蹴り上げ。左右入れ替わって、それを戻すための左裏拳。止めて。左の手刀を2回。縦、横と斬って、もう一度。左手刀の縦斬りを――掴む。

右手でガッチリと掴む。

「なにっ⁉」

今さら驚いているようだが、気にせず強く腕を引く。

「ぬわっ⁉」

当然。こっちは初めからそのつもりだったんだ。体勢も完璧。相手は前に引っ張られ、つまずくように前に出る。

引っ張った左腕を捻じり上げながら、肘を取り、曲げ、相手の左手の甲が背中に付くように押さえつけて寝かせる。

「こんな感じで、武器を持ってても数秒で制圧されるからな。掴まれたと思ったらすぐに引き剥がせ。力尽くでも、魔法に頼ってもいい。一瞬でも躊躇うな! 投げや絞めに繋がれたら、その時点で負けだと思え」

いいながら、手を離す。

「なんのつもりだ⁉ 情けをかけるとでもいうのか⁉⁉」

素早く起き上がった傭兵が喚くが。

いいから来いと人差し指で小さく招く。

「ふざけるなよぉおおおお‼‼」

俺の態度にが癪に障ったのか、激昂して襲い掛かってくる。

だが、

「きぃえええええいいい‼‼」

だとか、

「ちぇいさぁあああああ‼‼」

だとか、声がやかましいだけでなにも変わらない。

むしろ怒りに任せた分だけ動きは読みやすくなる。

右の前蹴り。から踏み切って2連蹴り上げ。踏み込んで左の指突。右後ろ回し蹴りから、返しの右上段蹴り。

今度はこれを掴む。

「狙いを聞かせておいて‼ 対処できないとでも思ったか⁉‼」

同時に傭兵は左足を踏み切り、身体を浮かせながら回転させ、左の踵をハンマーのように横薙ぎで振るう。

悪くない選択肢ではある。

力尽くの部類だが、顔面を狙うってのは効果的だ。ビビらせればそれだけで手を離す可能性もあるからな。

それでも・・・、

「ぐ⁉ ああああぁぁあああ⁉⁉⁉」

力不足には違いない。

この場合は想像力不足になるか。

息まいていた傭兵はドサッ! と地面に落ちた後は脛を抱えて悶えている。

「掴まれるってことは身体を勝手に動かされるってことだ。そのことをよく理解してねぇからこうなる」

俺は掴んだ足を少し上に持ち上げただけだ。

その結果。

俺の顔面、側頭部を狙った左の踵は、傭兵自身の右足に、より正確には右脛に命中。

渾身の一撃だっただけに、余りの痛みに叫びを上げ、悶え転がることになったというわけだ。

「実際に素手で殴りかかってくる奴なんざそうはいねぇだろうが、モンスターの中には爪や牙で戦う個体も少なくはない。狙って服を掴んできたりする奴もいれば、たまたま引っ掛かることもあるだろう。そうなったらまず、切り離すことを考えろ。振り回されたら仲間も手を出し辛いからな。そういう意味では服選びも重要だ」

本当はこの傭兵を使って引っ掛ける動きも見せたかったんだが、もう使い物にならなそうなんでな。

呻く傭兵を尻目に、サン達を見る。

シルエットに添った服を着ているし、余計な装飾もない。

サンとタンの鎧には歯車やパイプの意匠が見られるが、お世辞にもつかみやすいとは言えないだろう。

ダブついた服ならNGでも出してやろうかと思ったが、その必要はなさそうだ。