軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

追走と待ち伏せ

「どういう――ッ⁉」

「左から回り込んで来るぞ‼ 急げ‼」

「簡単に言ってくれますがねぇ‼」

急な指示にホウは文句を言いながらも馬に鞭を入れ、速度を上げる。それでいて壁にぶつからないギリギリを見極め、車体を滑らせ走り抜ける。

「チッ‼ 前に出られるんじゃなかったのか⁉」

「誰かが気付かれやがったんだろ⁉ 使えねぇ‼」

「このまま追い込むぞ‼ 他の連中にも協力させろ‼」

滑り込んだ先でピッタリ後ろについた追手の会話まで聞こえてくる。

それほどまでにギリギリだった。

「どうして分かった⁉」

「勘だ。いや、そういう感覚があったっていう方が近いか? 気配を感じただけだ。それより、ホウのお手柄だ。良く滑り込めたもんだな」

「流石に運がよかった。もう一回は無理すよ。下手すりゃ向こうの馬にぶつかってたかも・・・」

「それならそれでよかったけどな。馬が潰れりゃ追ってもこれねぇんだし」

「そうなってたら、こっちは後ろがぶっ壊れてたんじゃ?」

「かもな」

「それより、この先はどうするんで?」

長めの直線。

ここからもう一度サンに道選びをさせても・・・と思ったが、

「手前右と奥正面から追手だ」

「ってことは左しかないと」

「まずい⁉ そっちは‼」

サンがなにか言いかけるが、曲がる方が早い。

そして、曲がった先の道は形が最悪だった。

手前左に一本と奥の突き当りには右に曲がる一本のみ。

「右奥から来てるな。これは・・・」

「誘い込まれたんだ‼」

「そうはいっても、曲がる以外ねぇでしょうよ!」

さらに左へ。

その先にあったのは、長い長い直線。

左右にはゴミが乱雑に積み上げられ、途中曲がれる場所はない。

後方からは4台の追手。

そして当然。

「・・・待ち構えてやがるな」

2台の馬車が直線の先で止まっている。

中に乗ってたであろう傭兵の奴らも馬車を降りて準備万端って感じだ。

「どうする⁉ 馬車を止めて迎え撃つか⁉」

それも一つの手ではあるが、

「逃げ場がねぇ。それに、貧民街の連中を巻き込みたくねぇんだろ? デカい魔法もなしで迎え撃つのは無理がある」

数は力だ。

それをひっくり返すにはそれなりの力が必要になる。

いつもなら魔法でどうにか出来たかもしれねぇが・・・こんな物だらけの場所で魔法を使えば、どうなるかわからねぇ。

予想だにしなかったことが起きて大災害。なんてことも考えられる。

「だったらどうするんで? これ以上速度を落とすのも無理ですぜ?」

後ろからの追手が突っかけるように、背後にピッタリ鼻先まで来てる。

ここで速度を落とそうもんなら、後ろにつけてる馬が突っ込んできて馬車はぶっ壊れる。

相手としてはある程度まで追い立てて、半分過ぎたあたりで減速すればいい程度の認識のはず。

まだしばらくはくっついてくる。

なら、

「速度をあげろ」

「本気で? 突っ込もうってんですか?」

「俺の魔法で道をこじ開ける」

「魔法って・・・いったいどんな?」

「蟻を殺した奴だ」

俺は魔力丸薬を口に放り込んで噛み砕く。

「あんなのをここで使う気か⁉ そんなことしたら――ッ‼」

「空目掛けて撃つから問題ねぇよ。あいつらの馬車の天井でも吹き飛ばせば、馬がビビって走り出すだろ」

そうすれば前の道は開く。

後ろの連中はもうすでに俺達は諦めるものと思っているだろうし、ここで速度を上げても追っては来ねぇ。

後は被害の出なさそうな適当な場所で待って迎え撃てばいい。

「もし・・・それでも前が開かなかったら、どうするんで?」

「その時は御者のお前に任せるよ」

小窓から左腕を突き出し、魔力を集中させる。

目標との距離を測りながら、揺れる馬車のリズムに合わせて。

3、2、1、―――今 ッ‼‼

という、まさにその瞬間。

パキッ! と砕けるようなイヤな感覚が俺の中に響き渡った。