軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

事故、故意、事故

「全員衝撃に備えろ‼」

突き出していた左腕でホウの腰を抱え込むようにロックしながら、振り返って叫ぶ!

それと同時、魔力障壁を馬車内に埋め尽くすように展開する。

イメージは堅い壁ではなく鉛の粉で満たすような、そんな感覚だ。

多少の圧迫感はあれど苦しくないように。しかして、身動きの取れないように。

「な―――ッ⁉」

にが、と続けたかったのか、なんでと言いたかったのか。

わかりゃしないが、誰かがなにかを言うより早くガタン‼ と足元が大きく沈む。

そしてすぐに、ガガガガガッ‼‼ と、振動が襲い掛かる。

さらにはそれに驚く間もなく視界はブレ、体の芯から浮き上がる感覚に捕らわれ、振り回されるようにして三半規管をぶっ叩かれる。

「「「うわあぁぁあああ⁉」」」

それぞれに悲鳴を重ね合わせながら、制御を失った馬車は横倒しになりながら、それでも余った勢いに引きずられ、最後にはなにかにぶつかって止まった。

さっきのパキ! ってのは魔法が壊れる感覚だった。

状態を固定した魔法が崩壊する感覚・・・言うまでもなく、急ごしらえだった車輪がこの逃走劇の酷使に耐えかねたんだろう。

整備もクソもない貧民街の道を速度を上げて無理やり走ってたんだ。仕方ねぇ。

「無事か?」

「・・・なんとか」

「うー・・・死にかけたです!」

「こちらは問題ない」

「同じく大丈夫」

「私もおかげさまで大事ありませんな」

中は大丈夫か。

展開してた魔力障壁を解除する。

「うわっ⁉」

「おっ⁉ と、すまない」

「うー・・・・重いです。また死にかけです」

「ふー。危ないね。解除するなら一言くれないかい?」

「いたた・・・すみませんね。大丈夫ですか?」

「・・・・・・だ、大丈夫・・・ですよ。これくらい」

横倒しになっていたせいで解除に合わせて、サンとスイがそれぞれ下敷きになってしまったようだ。

特に、サンパダの下敷きになっているサンは少々重そうだが・・・まぁ死にはしねぇだろう。

それに比べて、壁際に座っていながら下敷きになるのを避けたフッチはこういうところでも勘がいい。

「いたた・・・こっちも大丈夫なんで、もう離してもらってもいいすよ? っていうか早く離してくれねぇすか?」

そういわれて俺はすぐに左手を離し、自分の体がずり落ちないように小窓の外、今の天井になっている部分を掴む。

小窓から見る限り一人御者台、馬車の外にいたホウだが怪我はなさそうだ。

放り出されずに済んだのはなにより・・・なんだが、ホウが痛がってるのは俺が掴んでた辺りか? 力み過ぎたか?

―――って! 悠長なことをやってる暇はねぇな‼

幸いにも左側面の扉側が上を向いて倒れていたんで、内から蹴破るように扉を開けて外に出る。

倒れた馬車の上に立ち、後ろを見やれば!

「はっはー! 事故りやがった‼」

「いい気味だ‼ 中で死んでんじゃねぇか?」

「事故死なら仕方ねぇよな? いらねぇ奴は殺しちまえ‼ 見せしめだ‼」

寸前まで速度を上げておいたおかげで、少しだけ離れた位置に追従していた馬車が。

そして、前で待ち構えていた連中も、

「詰めろ詰めろ‼ 絶対に逃がすなよ‼」

「逃がすわけねぇだろ‼ こっちの方が地の利があるんだ‼ 伊達に2ヶ月も貧民街にいたわけじゃねぇんだよ‼」

と走り寄ってくる。

俺はすぐさま左腕を前に突き出し、残っていた魔力をもう一度集中させる。

狙うは後ろから走ってくる馬車の右前輪。

「調子に乗ってるところ悪いんだが、同じように事故ってくれよなぁ‼」

上から下へ。

他へ被害を出さないようにきっちり地面に突き刺さるように意識して、ありったけの魔力を撃ち出す。

溢れだした魔力の本流は狙いを違わず一直線に地面へと刺さる。

間にあった後続車の右前輪を巻き込んで。

「おぉっ⁉⁉ ぁぁぁああああ⁉⁉」

走っている最中に片方の前輪が吹き飛べば、バランスを崩すのは必定。そして、車体が地面を擦れば速度が落ちるのも当然だ。

結果として、御者台にいた奴が盛大に射出される。

馬の手綱を掴んだまま宙を泳ぎ、馬を超え地面に落ちる。

グシャッ‼ となった瞬間。

馬は手綱強く下に引かれて暴れながらも御者を踏まないように避け、それに振られる形で馬車が横に転がる。

阿鼻叫喚の様を目の前で見たことで、さらに奥からの後続はたじろぎ止まった。

とりあえず、これで前後の分断には成功した。それなりに時間も稼げるはずだ。

後は・・・前の連中をどうするか、だな。