軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

カイオール商会2

「まぁそういうことだ。品格が、っつーんなら傭兵を集めるのはやめた方がいい」

周りにいる数人がなにか言いたそうだが、おそらくこいつらも傭兵だ。

ちゃんとした部屋じゃなく中途半端な広い廊下、ロビーのような空間に通したのもなにか狙いがあるんだろう。

吹き抜けになっている上の通路でもこっちを見ている奴らが何人かいるのが気になるところだ。

声も碌に聞こえねぇだろうに、なにか仕掛けてやがるのか?

「御忠告、痛み入るよ・・・。けれど、なぜそれほど傭兵を嫌うのかね? 過去になにか・・・そうだな、痛い目でも見せられたりしたのかな? 例えば、戦場で。そうでもなければ、彼らを嫌う理由などあるまい?」

ディーノは抱えた怒りの矛先を探ってくる。どこにぶつけるべきか、と。

分かりやすいやり方だ。

個人的な理由を持ち出し、そこを攻撃する。

実に貴族らしいやり口。

貴族は言い返せない状況を作らない。

公然の場でそんなことをすれば、恥をかかされたと一族総出の反逆が待っているからだ。

だから、言い逃れや弁明のしやすい個人的な物を持ち出す。経験、思考、理念など形にならない概念だとかなら最高だ。

それであれば、恥はあくまで個人のものとなり、一族をバカにしたものではないという事に出来るから。

だが、これはどうしたもんか。

ここで、適当な嘘で話を作っても効果は薄い。

出来ればさっきの怒りを上手く発散させ、優越感に浸らせたいところだ。

そうすりゃ油断が生まれて、口を滑らせる可能性も上がる。

その後にもう一度、足元をすくう形で怒らせられればベスト。

そのためには・・・。

「別に嫌っちゃいねぇさ。ただ、ここガルドナットは俺達冒険者の縄張りだ。戦場のゴミ漁り共に仕事を取られるのは気に入らねぇだろ?」

それらしい真実を。

あわよくば、疑問が晴れれば尚良しだ。

「それだけのことか?」

「ここは割のいい仕事が多いんでな。どこぞの犬の骨共に分けてやるにはもったいねぇのさ」

「くく・・・、なるほど? 餌場を守りたかったというわけか。あさましいものだな」

「なんとでも言え。ゴミ漁りよりはマシだからな」

「君達も似たようなことをしているじゃないか?」

「アレは戦利品だ。力の証明だよ。誰かの食べ残しを漁るのとはわけが違う」

汚い言葉を強調しながら、周りの連中を牽制しつつ話を進める。

雰囲気はどんどん悪くなっていくが、それぐらいが心地いい。

「私には同じように思えるがな?」

「そりゃぁアンタは戦えねぇからな。力の差もわからねぇんだろう。じゃなきゃ雑魚を集める理由がねぇだろ?」

愉快そうに笑っていたディーノの眉にまた、怒りが灯る。

「・・・・・・この状況でも勝てると?」

「もちろん。負けるなんざありえねぇな」

2人の商人を除けば、この場にいるのは上まで入れて9人か。

サンパダを狙われると厄介だが、それでも残ってる魔力で十分対処できる。

万が一を無くすために2人分の融合強化を使ったとして、魔力は空になるがまだ1回分魔力回復は残ってる。

芸のように使ったせいですでに1度回復しているとはいえ、強そうな気配も感じねぇし問題なく勝てるだろう。

「はっはっは! 大した自信だ‼」

そんな俺の態度を見て、なにが面白かったのか吹き出したように手を叩いて笑いながら、ディーノは続ける。

「それでも、私は。君達冒険者を使おうことなどとは思わないがね」

自信を滾らせ、見下すように言う。

「なぜだ?」

「くくくっ。それがわからないのは、君がこの国に今起こっている奴隷狩りについて、なにも知らないからだ。一応聞いておこうか? 君は奴隷狩りのことをどのくらい知っている?」

「・・・奴隷狩りが行われてるってことだけだ」

「そうだろう‼ そうだろうとも‼ だからあさましい君は冒険者を、あわよくば自分を使えなどと言えたんだ‼」

勝ち誇るようにディーノが笑う。

「だが、冒険者など使わない‼ なぜか‼ それは奴隷狩りがこの国の東で起きているからだよ‼」

東。ということはガルバリオ側。

「そして‼ そいつらの巣が、南東にあるからだ‼」

南にはハードライン。その向こうには冒険者たちの国。

つまり、

「君達冒険者は信用できないんだよ‼ だからこの私が! 被害者たちの為に‼ わざわざ傭兵を雇ったというわけだ‼ 役に立たないボンクラ共の代わりになぁ‼」

冒険者は疑われてるってわけだ。

ガルバリオ皇国でさえ。

あの途中で亜人騒ぎを起こした町。あそこは被害にあっていたんだろう。

だからこそ、あれだけの騒ぎになったし、それ以外の対応が雑だった。優先順位があったんだと考えれば合点がいく。

にしても、思った以上のマヌケだなコイツは。

もう少しつつけば、もっと面白いこともわかるかもしれねぇ。

「そいつは立派な事だがなぁ? ここに来るまで、傭兵の姿なんざ見た覚えがねぇんだが・・・普段はどこに置いてるんだ? まさかここにしか居ねぇ、なんてことはねぇんだろ?」

「ふん。ここにしか居なかったとして、なにか問題があるのか?」

「あるだろ。報告が来てからじゃ間に合うわけがねぇ」

「そんなことはない! 今までも被害などなかった‼ 連れ去られたものも取り返せばいいだけだからな‼」

「巣に乗り込んだのか? だったら奴隷狩りはなくなるはずだが?」

「奴らは巣をいくつも持っているのだ‼ そのうちの1つを潰したにすぎない‼ 私はそれに対抗するため、傭兵を集め続ける‼ 君が・・・いや‼ 誰がなんと言おうとも、だ‼」

なるほど、確定だな。

コイツは黒だ。

敵の数が多いという割に、幾つもの巣の位置を正確に知っているのはなぜだ?

さらわれた人がどこに運ばれたか知っているのはなぜだ?

根拠もなしに間に合うなんて言えるのはなぜだ?

答えはきっと、そうなっているから。

だがわからねぇのは、現状でも対応できているはずなのに傭兵の数を増やそうとするのはなんでだ?

人手が多いに越したことはねぇだろうが、狙いもなしに組織を肥大化させるバカがいるか?

・・・いや、コイツならあり得るか?

そう思わせるほどのマヌケだが、こんな奴が、爵位を剥奪されて追放されるような奴が、これだけの計画を考えられるわけがねぇ。

だとしたら・・・?

そう思ったところで、これ以上は無理そうだ。

「そう上手くいけばいいけどな?」

「上手くいくとも‼ 必ずな‼」

漲るディーノを残してカイオール商会を去る。

サンパダが一言二言を置いて背を向けた瞬間に、襲ってくるかと思ったが・・・そんなことはなかった。