作品タイトル不明
熟考
「良かったのですか?」
広いホテルの一室でサンパダが聞いてくる。
「なにがだ?」
「会場でのことです」
俺がサンパダを擁護したことだろうか?
「別に構わねぇよ。さっさと売りたかったんだろ?」
「それはそうですが・・・」
「それに良かったんじゃねぇか? これで、アンタは腕利きの冒険者と繋がりのある人物だと認識されるだろう。まぁ、元冒険者・・・だけどな」
「そう! そこですよ」
まさに! といった反応をサンパダが見せる。
「もちろん私としてはありがたい限りです。箔が付きますからな。しかし、ゼネス様はそれでよかったのですか? あなたは元冒険者だ。もし容易い相手だと思われれば、迷惑な客が押し寄せることもあるかもしれません。なによりあなたは皇国の、しかも上級貴族でもあられる。それが舐められるようなことがあれば・・・」
国家間の問題になる?
そんなことはねぇよ。ありえねぇ。
俺はそんな大した存在じゃない。舐められたところで、どうにかなるようなことはない。
ただまぁ、
「借りは返す。どんなことでもな? だから、なにも心配する必要はねぇよ」
舐められねぇようにはする。が、それでも。もし、舐めてくるようなら・・・いや、そうはならねぇようにするだけだ。
「なるほど・・・。借り、ですか。では、今回の件もそうだったと思っても?」
「・・・そうだな。現状でも随分世話になってるしな。今後どうなるか、まではわからねぇが?」
「そうですか。であるならば、私はこの縁を全力で繋ぎ留めておくべき、ということになりますね・・・つきましてはここに滞在している間の護衛依頼なのですが――」
と、ノリノリで契約の話になり、
「それでは引き続き、よろしくお願いしますね」
サンパダの声を背中に部屋から出た。
ホテルロビーにて。
「結局のところ、どうなったんで?」
「引き続き護衛を依頼された。まだしばらく一緒だな」
「それじゃぁ約束通り明日は街をまわるです! いっぱい食べるです!」
「そうだな。報酬も受け取ったしな」
やったぁ‼ と喜ぶスイとは裏腹にホウは苦い顔だ。
「なら、明日の護衛役を決めよう。サンパダさん曰く、挨拶回りだから少数でいいらしいけど・・・誰がやる?」
サンパダは明日明後日とこっちのデカい商会の幾つかに挨拶に行くらしい。この国での大商会は王族、貴族のようなものなので、そこで襲われたりはないだろう。という前提のもと、護衛は隊を疑われないように少数で・・・とのことだ。
少数なら、最悪俺一人でもいいんだが・・・。
「どうしたです?」
スイとの約束がある。
明日か明後日か、俺は少なくともどちらかで時間を作らなければならず、そこにはスイも含めなければならない。
そうなると残るのは、サンとタンの2人とホウにフッチだ。
今、サンとタンの仲は微妙だ。
タンはそこまでのようだが、サンの方は言われっぱなしになりがちだからか少し荒れてる。
タンが自分の鍛錬のやり方やその感覚をサンに教えるという形だからだろう。
言いたいことを我慢せず、ぶつけ合っている以上は仕方がねぇとはいえ、そんな雰囲気の2人に護衛を任せるのは不安がある。本人達もそうだろうし、周りとしてもだ。
かといって、下手に離すと拗れそうだとも思っているのか。
ホウがこれでもかって程、真剣な顔で悩んでいる。
そりゃそうか。
”蒸気の騎乗者”としては護衛には少なくとも2人は出したい。
だが、サンとタンだけの組み合わせは無し。それに加え、スイは俺との約束がある。その上で、サンとタンを無理に離したくもない。
それを叶えられる組み合わせはただ一つ。
護衛をホウとフッチで担当すること。
つっても、そうなると残るのはこの間のメンバーになる。ホウからすれば一番避けたい状況のはず。
護衛を3人にする?
なくはないが選びたくはねぇだろう。
実力を疑われる事になるからな。
悩みぬいた末、ホウが出した結論は―――。