軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

到着、ガルドナット

「ようやく・・・か」

「着きましたなぁ」

窓の外に大きな門が見える。

ここまで、本当に長く感じた。

なにしろこの1週間は。

「だから、こうだろ⁉」

「違う! そうじゃない‼」

「なにが違うんだよ‼」

「だから――」

「まぁまぁ2人とも落ち着いて・・・」

「こういうのはどうです?」

「魔法共鳴の詳細なんざ知らねぇし、やれるだけやってみるしかねぇか」

「そうです! 当たって砕けるです‼」

「周りに被害を出さねぇ程度に、な」

「了解です! それはそうと・・・・・・なにしてるです?」

「別に。気にしないで」

「気になるです・・・」

「本当になんでもないから」

と、休息の度にそんなやり取りばっか。

特別雰囲気がよくなることもなく。

サンパダが色々気を使ってくれていたが、無駄な気苦労だったな。

だが、それも一段落だろう。

なぜなら・・・、

「ガルドナットへようこそ‼ 身分証明をお持ちでしょうか?」

独立国家ガルドナットの首都へ辿り着いたからだ。

スーツを着込んだ男に歓迎され、言われるがままに身分証を取り出し提出するサンパダの顔には、ある種の解放感がにじみ出ている。

「確認いたしました。お連れ様は後ろ2両ですね? それでは、そのままお通りください‼ 良い、ご滞在を‼」

ドアマンのような男に見送られて、俺達はガルドナットへ踏み込む。

ところで、この場合はなんつー職業になるんだろうな? ゲートマンか?

本来ならば兵士が取り締まる門をスーツでその身を包んだ人物に送り出されるというのは、なんとも新鮮だ。

なにより、

「この後お昼からも公演ありますよ‼ チケットのお買い求めはこちらからお願いします‼」

「こっちで商品見ていかないか? いいもんあるよ‼ 旅の記念にどうだい!」

「観光案内します‼ 人気のお店から、知られざる名店まで‼ どんなご要望にもお答えさせて頂きます‼ 今回初めてのご旅行の方は是非、お声がけください‼ 素敵な記憶にして見せます‼」

これほどの賑わいを、こんな門に入ってすぐのところで見るのも、初めての経験だ。行きかう人々の数も、皇都とは比べ物にならない程。

「やはり、ここの熱気はいいですね。商人の血が騒ぎます」

「それで? この後はどうする?」

「まずはこのままオークション会場に行きましょうか。商品を受け渡した後、ホテルに入って一時解散としましょう。ゼネス様の報酬はその時にお渡しさせて頂きます」

それでは、とサンパダの合図で馬車は人の波をかき分けて進んだ。

「おお⁉ これは確かに! それでは納品させて頂きます」

オークション会場の役員が中身を確かめ、なにやら書類をサンパダに受け渡す。

「こちらの内容も、問題ありませんね。それで、出品はいつになりそうですかな?」

「これほどの品ですから、どこかの大取になると思われますが・・・なにかありましたか?」

「いえ、こちらに着くまでに少々トラブルがありまして。滞在があまりに長くなるようなら、連絡係を立てなければなりませんからなぁ」

「そういえば今回はギリギリでしたね。いつもより遅いのでもしや・・・? と思いましたが」

「もしや・・・、なんですかな? 私が持ってくる商品を疑っていたと?」

「滅相もありません‼ ただ・・・間に合わないのでは? と」

急に圧をかけられて慌てて取り繕いながらも、商品の扱いは丁寧なまま。淀みない動きで梱包し保管される。

このやり取りになんの意味があるのかは知らねぇが、この役員は本物だろう。これで、今回の依頼は無事成功と言っていい。

「なるほど、そうでしたか。これは失敬・・・しかし、間に合ったのですからなんの問題もありませんね? そして、その商品にしても皇王様のお墨付きですよ?」

「・・・出所不明の品だと聞いておりますが?」

「えぇ。ですが、その品質については皇王様が保証してくださったのです」

「そうですか・・・しかし、僭越ながら。そちらの皇王様はこの品のことを詳しくご存じないでしょう? 私とて同じです。なので、然るべき方に鑑定頂かなければ出品するわけには・・・」

あぁ、なるほどな。

早く売れって交渉か。

よく見れば周りの商品はガラスケースに入れられてるが、サンパダのは別の梱包がなされている。それを見て・・・ってことか。

他が来てからの出品じゃぁ急いだ意味も無くなっちまうしな。

だが、オークション側からすれば本物かどうかの確認もしたいし、出来れば見本が欲しいんだろう。後から出品されるであろう物の真偽を測る物差しが。

気持ちはわかる。

現物が手元にあればそんなに心強いことはねぇからな。

とはいえ、

「保証なら俺がしてやるよ」

依頼主の希望に添うのが冒険者だ。

さっさと話を進めよう。

「あなたは?」

「冒険者だよ。元な」

「その元冒険者が・・・ッ⁉⁉」

いきなりなにを言い出してるだ? というような態度の舐めた役員が黙ったのは、俺の籠手が目に入ったからだろう。

「それは⁉」

「俺の防具だが?」

「よく見せていただいても⁉」

受付の上に片手をのせ、

「コイツも必要か?」

これ見よがしにギルドカードも出してやる。

役員は綺麗に梱包したサンパダの商品を素早く取り出し、俺の籠手と見比べながら、ギルドカードにも目を通す。

信じられない⁉ と何度も目を擦るように見返すが、そんなことをしたところでギルドカードの討伐欄にあるワンダーゴーレムは消えやしねぇ。

「冒険者ギルドの職員様でしたか・・・・・・これは・・・失礼しました。ですが、一応・・・更新日が随分前になっているので、更新して来ていただいてもいいでしょうか・・・? その間に上の者にかけあうので・・・」

そういえば、最後の更新はサンパダに見せた時だったな。

俺はギルドカードを差し出しながら、サンパダに聞く。

「頼めるか?」

「私がやらせて頂いてもいいのですか?」

「・・・ちょっと待ってください? なぜ、マンサ商会頭に?」

「それは私が鑑定のスキルを持っているからですが、なにか?」

それを聞いたオークション会場の役員は、

「・・・そうでしたか・・・わかりました。こちらの品は3日後、週末の目玉商品として出品されると思います」

呆けた様子でそれだけ告げて、フラフラとした足取りのまま引っ込んでしまった。