作品タイトル不明
観光
「次はアレが気になるです!」
「そんなに急がなくても店は逃げねぇぞ?」
「時間は無くなるです! 早く行くです!」
スイに引っ張られるようによくわからない見世物小屋に入る。
雰囲気だけは楽しそうだが、やってることはスリルを見せる芸ばかり。
頭の上に乗せたリンゴにナイフを投げるだとか、弓を射るだとか。細いロープの上で決闘の真似事をしてみたり。
しかも、それらも魔法で補助し多くのことをごまかしての見世物。
面白いとは思わねぇ。
「・・・次に行くです‼」
数分だろうか? ちょっと見てスイも気付いたんだろうな。
さっさと次に行く。
そうやって繰り返して、かなり見て回った。
魔物使い。手品。漫談。問答。力自慢。その他、色々。
一番面白かったのは手品だ。
魔法無しであそこまで出来るんだなと感心させられた。
逆につまらなかったのは力自慢か。
あれは魔法の力だ。見世物としては三流にも劣る。
だが、
「どれもいまいちです・・・」
これが本音だ。
多種多様な人間が多く集まるからか、評判があてにならない。
質にしても、ピンからキリまで。限りがない。
「そう? 僕はナイフの扱いの参考になったよ?」
「俺はスイと同じ意見ですかねぇ? どれも見るに堪えやしない。漫談くらいすかねぇ? 見れたのは」
以外にもフッチには好評で、ホウはやれやれと肩をすくめる。
「どうする? もう出るか?」
見世物を集めた区画の外を俺は指差す。
「そうするです・・・。ここにはスイが求める楽しいはなかったです」
「それで? 次はいったいどうするんで?」
「お腹がすいたです!」
「お! そりゃいい! 目についたの全部頂くとしましょうか! なにしろ、今日は奢りすからねぇ!」
「もちろん! 行くです!」
スイがホウを伴って外へ突進していく。
「いいのかい? 財布の中身がなくなるよ?」
「いいさ。なくなったらまた稼げばいい。約束だからな」
長考の末、ホウはサンに一つの提案をした。
「護衛にはリーダーと・・・タンの2人でどうすかね?」
当然ながらサンは抗議したが、その際。
ホウがサンになにかを耳打ちすることで話がまとまった。
結果、初日はサンとタンが護衛。
残りの俺達は羽を伸ばすべく、ついでに、俺とスイの約束を果たすためにガルドナットの街をまわっているというわけだ。
「スイはともかく、僕らまで奢ってくれるなんて・・・よかったのかい?」
「構わねぇよ。多少なりと迷惑をかけてるようだしな? その分の礼だ」
「ふーん? そんなものか・・・意外だね?」
フッチはそういうが、意外なのはそっちだ。
やけに饒舌じゃねぇか?
あの日の夜からちょくちょく話しかけてくるようにはなってたが、そんな別れ方だったか?
むしろ、ケンカ別れに近かった気がするんだが。
「後ろに居られると見失うかもしれないんで、出来ればもっと近くにいて欲しいんですがねぇ?」
そして、2人で話してると大概ホウが割って入ってくる。
「言ってる間にスイを見失いそうだよ? ホウ」
「噓でしょう⁉」
なにやら見たこともないお菓子の誘惑に引き寄せられていくスイを指差すフッチ。
それを確認したホウは俺とフッチを交互に見て・・・。
「仕方ないから僕がいくよ。早く合流してよね」
そんな方を察してフッチが人ごみをかき分けながらスイの元へと向かった。
流石にアイツも気付いてるか。
ホウが俺達を2人にしたくないと思ってることに。
「これ以上掻き乱さんでくださいよ。面倒見きれないすから」
「俺はなにもしてねぇよ」
「それは心当たりがある奴の台詞でしょう。本当になにもしてない奴は知らないとしか言わねぇもんすよ」
「・・・そうかもな。だが、別に俺は敵じゃねぇよ」
「そうかもしれませんねぇ。でも、俺からすりゃぁ十分敵と言えるんすよ。だから、余計なことはしないでください。リーダー達にも」
それだけ言ってホウは先に行く。
なんというか・・・。
「偉く嫌われたもんだな」