軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

急ぎ足の夜

「皆さんの方から合流していただいたのは良かったのですが・・・なにかありましたか?」

なんとも言えない雰囲気のまま、合流しそのまま出発した馬車の中、状況を理解できないサンパダだけが取り残されている。

「ちょっと街外れで魔法をぶっ放しただけだ」

「ちょっと。で済ましていいことではないと思うのですが・・・?」

俺の言葉に目を点にするサンパダ。

「それでだ。帰りに、あの町でなにか出来ねぇか? 大したことじゃなくていい。特に、街外れの2、3軒を優遇出来りゃぁベストなんだが・・・」

「それでは移動店でも開きましょうか。日用品を安くするなど、どうでしょう?」

「まぁ無難なところか。優遇の方はどうする?」

「広場で開いた後に件の街外れでもう一度、店を開きましょう。その時は少しだけ高価な商品を同じ値段で提供します」

「ってことは、帰りはあの町に滞在するわけか」

「えぇ。出発を前に最後の~という建前で開くのがいいでしょう」

「悪いな」

「いえいえ。世の中は助け合いですよ。それに・・・帰りに、ということなら上手くしていれば私の商会がこちらにもあるかもしれませんからね。宣伝にもなるでしょう」

「そうなってりゃいいけどな」

「してみせますとも‼ 私は商人ですから」

もしなんてない。ってのは冒険者の心得だが、なにも冒険者だけに限った話じゃねぇんだろうな。

自信満々なサンパダを見て、そう思う。

胸を張るその姿に、取らぬ狸の~なんざ言う必要はねぇ。

「なら、急ぐとしようぜ? 折角の準備を無駄にしねぇようにな」

「そうですな! おい! もう少しとばしてくれ!」

夜。

少しばかり見晴らしのいい街道沿いで俺達は野営している。

サンパダは馬車の中。同じくサンも護衛として馬車に残っている。

それ以外の蒸気の騎乗者のメンバーも、馬車の近くで寝ているはずだ。

他2台の馬車にも異常はない。

俺は少し離れた場所で焚火に薪を足しながら、1人で月を見上げる。

一応は見張りだが・・・近くにはモンスター気配どころか、風が奏でる音以外にはなにもなさそうだ。

「どうした?」

そんな暇な夜に、背後から忍び寄る影が。

「別に用があるわけじゃないよ。ただの習慣。気にしないでよ」

この声は・・・フッチか? 初めてまともに聞いた気がする。

「こんな夜に、なんの習慣だ?」

「ただの鍛錬だよ。偵察は暗いうちに出ることも多いからね」

そう言って、フッチはナイフを取り出して体を動かし始める。

わざわざ近くでやるってことは俺に見て欲しいのか?

あるいは、離れた位置でやってたら俺が確認に行かなきゃならねぇからって、気を使ってくれてんのか?

揺らめく焚火の日に照らされて蠢く影は素早く、そのナイフ捌きは小気味よい。

だが・・・なんとなく、どっかで見たような?

「なに?」

「もしかしてだが・・・お前がヨハンにナイフを教えたのか?」

「ヨハン・・・? あぁ、彼か。そうだよ。それがどうかした?」

「いや、助かった。って、だけの話だ。あの時は色々忙しくて相手してやれなかったから・・・・・・まぁ、それは今もなんだがな」

今頃は・・・もう寝てるか。

ケイトとの魔法練習も上手くいってりゃいいんだが。

「どちらにせよ、俺は人にモノを教えるのが上手くないみたいでな? 基礎を教え込んでくれたのには感謝してる」

「別に。半月程度だったし。弟子ってわけでもないよ。ただ、彼は素直だったから、それだけ成長が早かったんだと思うよ」

話をしていてもフッチの動きは止まらない。

しかし・・・言うべきか?

素直なヨハンがそのままに。素直に受け継いだ欠点について。

「変な顔してるけど、なに?」

「いや、言った方がいいのかって・・・迷ってたんだ」

「なにを?」

「お前の欠点について」

「藪から棒になにを言うんだ⁉ 僕の欠点だって⁉ だいたい無手のアンタになにがッ⁉」

「俺の得物もコイツでな」

ナイフを取り出して見せる。

「聞きたくねぇか?」

「・・・いいよ。聞こうじゃないか!」

「動きが直線的すぎる」

いつかヨハンに言った言葉だ。

急所だけを狙った動き。

効率的に見えて、実際にはそうでもない動き。

「・・・・・・なん、で・・・ッ⁉」

そこまで驚くことなのか? フッチがこっちを向いたまま固まってしまう。

いつもフードに隠されていた顔が焚火に染まり、初めてハッキリ見えた。

綺麗な顔だった。

男? いや、女か?

まぁ、どっちでもいいか。

「心当たりでもあったか?」

「別に‼ どうだっていいだろ‼」

なにかに気付いたのか、弾かれたようにフードを深く被り、身体を背けて立ち去ろうとする。

「あ、おい‼」

このままじゃ機嫌を損ねただけだ。

別に嫌な奴になりたいわけじゃねぇんだよ! ただ・・・。

誰かにもらったもんを折角なら俺も、渡してやりたいんだ。

俺の時はなんて言われた?

えー・・・っと、そうだ‼

「いいのか? ナイフはもっと奥深いもんだぜ?」

確か、こんな感じで煽られて・・・、

「知ってるよ‼ そんなことは‼」

フッチは振り返ることもなく行ってしまった。

「・・・・・・はぁ~」

やっぱ向いてねぇんだろうな・・・人に教えるってことが。

教えてもらった誰かを真似して見ても上手くいかねぇし・・・。

いや、教わった相手が悪かったのかもしれない。

なにしろ変人ばっかだったしな。

にしても、

「今度はお前か・・・そんなに、俺の見張りは信用ねぇかよ?」