作品タイトル不明
探り合いの夜
「そんなことはねぇんすけどね? ・・・というか、よく俺だとわかりましたね?」
暗闇から近付いてきたホウの姿が浮かび上がるように照らされる。
「気配の消し方や歩き方には癖が出るもんだ。それに、元から俺はそういう・・・気配だとかには敏感な方なんだよ。最近は特にな」
「そいつぁ凄い。・・・なら、俺の言いたいことも、わかったりしませんかね?」
「まぁ・・・なんとなくはな」
「それじゃぁ話は早いすねぇ!」
焚火を囲んでホウが腰を下ろす。
「リーダー達の事です」
両手の指先を合わせながら、真剣な面持ちで話し始める。
「あの2人は根っこの部分があってない。それはゼネスさん・・・アンタにも、わかると思うんすよ。それでも、俺達パーティーは上手くやってこれた。それは、お互いに触っちゃダメなところを決めて、その線に従ってきたからです。なのに・・・アンタはそれを破った」
その結果、仮初の平穏は消え去り、真実の沈黙が訪れたわけだ。
「聞きましたよ、リーダーから。タンに動きを習えと言ったそうすね」
「あぁ。アイツの動きは単調ではあるが正確だ。自分の体がどう動くのか、よく知っているいい動きだからな。それが出来てねぇサンにはうってつけの講師だろ?」
「だとしても‼ 2人がぶつかってるのを見れば止められたでしょう⁉」
それは悲痛の叫び。
だが・・・そこまでのことか?
確かに2人の関係性は知らなかった。
パーティー内の暗黙の掟も。
それでも、あの程度の対立なんざ冒険者じゃなくても日常の光景のはず。
「意見の対立ぐらい、あって当然だろ?」
なにより、スイは気に留めていなかった。むしろ、よくやったと。それぐらいの反応だった。
「普通なら、でしょう? うちは波風立てずにやってきたんです! こんな言い方はアレかもしれませんがね! 余計なことはしねぇでもらえせんか⁉」
「そいつは悪かったな。だが、それでこの先もやっていけるとでも?」
「出来ねぇと言うつもりすか?」
「不可能だろうな。言いたいことも飲み込んで伝えようとしなけりゃ、どれだけ仲のいい奴らでも、遠からず破綻する。特に、俺達冒険者は命懸けだ。重要な場面で意見が揃わなかったらどうする?」
「そんときゃリーダーの意見を採用しますよ」
「それで失敗したら、不満が出るだろ? 封殺し続けるのか?」
「それは・・・・・・」
「わかってんだろ? 本当は」
「・・・・・・・・・・・・」
ホウは苦い顔で黙ったまま。
「とにかく、無理に2人をぶつけないでください」
答えを出さずに馬車の方へ戻っていった。
なにをそこまで気にしてるのか、俺にはわからねぇが。
このパーティーはなにかを抱えてる。
その結果がサンとタンの関係だというのなら、今回のことが転機になればいいと思う。
良くなるか、悪くなるかはわからねぇが・・・どちらにせよ、そんなもんは一時的な事に過ぎない。本当に相手を思い合っていれば、乗り越えられる。
我慢の先に答えはねぇ。
お互いの関係なんてのは、ぶつかり合って傷付け合って、そうやって築いていくもんなんだ。