軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

車軸の修理

「なにやってんだ?」

冒険者ギルドに話を通し、許可を得た上で1本。それなりに太く育った木を伐採し、木材に加工したものをここの冒険者に協力して運んでもらい、馬車のある街外れに戻ってきたんだが・・・。

「なに・・・って仕方ないから鍛錬をしているんだ」

のんきなもんだな?

サンとタンは2人で剣を振り回していた。

周りを見たところ、ホウとフッチの姿はなく。

サンパダだけは連れてきた従業員とあーでもないこーでもないと解決策を出し合っていた。

「あ、じゃぁ、私達はこれで・・・」

「ん? あぁ! 助かったよ。ここのギルドマスターにはよろしく言っといてくれ」

わかりました! それでは~。っと木材を運ぶのを手伝ってくれた冒険者が帰っていく。

残されたのは木材のみ。

ここまで運んできた台車も冒険者が一緒に持って帰ってくれた。代わりに返しておいてくれるんだろう。有難いことだ。

「スイのお手伝いはもうおしまいです?」

一緒に帰ってきたスイがもう自由でいいのか? と聞いてくる。

「もう少し頼む」

「わかりました! 任せろです!」

スイには木を木材にする加工を手伝ってもらったが・・・まだ、ここからが本番だ。

「ゼネス様‼ どちらにいらっしゃったのですか⁉ それで、解決策なのですが・・・」

俺達が返ってきたことに気付いたサンパダが駆け寄って来て、なにやら解決策について言い出そうとしながらも、傍らにあった木材に気付く。

「おや? これはいったいどうなされたので?」

「冒険者ギルドで事情を話して1本切り倒させてもらった。急ごしらえになるだろうが、これでガルドナットまでは持つだろう」

「そうでしたか・・・。私共の代わりにそんなことまでしていただきありがとうございます。ですが、お代の方は・・・?」

「問題ねぇよ。無料だそうだ」

この町の冒険者ギルドに顔を出した時、広場であったことをそのまま話したら伐採の許可も、木材の値段も、運搬の手伝いさえ全面的協力を申し出てくれた。

それぐらい、亜人と見間違うという行為はこの国では大きな問題なんだろう。

「無料⁉ それはまた太っ腹なことで・・・」

「全くだ」

「しかし、車軸を作る職人が・・・」

「それについても問題ねぇよ」

スイに魔法で折れた車軸にピッタリはまるリングを堅い岩で作ってもらう。

「こんな感じです?」

車軸にまとわりつくように現れたリングを引っ張り外して・・・、

「あぁ。良い出来だ」

手に持ったリングは確かに固く、片手で持つには大きいが、車軸の型としては十分役割を果たすだろう。

後は、

「あの木材を加工する間、一定量の魔力を送り続けてくれ」

「一定量・・・です?」

「もしかしなくとも、それで・・・ですか?」

サンパダがなにかを察したようだが、つまりはそういうことだ。

「それ、どうなってるんだ?」

剣を振り回していたはずのサンが鍛錬も放り出して隣に立つが、

「見て分からねぇなら離れてろ。正直、邪魔だ」

ソワソワしながら隣にいられると集中が乱される。

失敗すると木材が無駄になるからな。

「そんな言い方ないだろ?」

「言い方の問題か?」

「サン。邪魔はしない方がいい。スイも必死だ」

うるさくなりそうなところを1人鍛錬を続けていたタンが釘を刺す。

今やってるのは繊細な作業だ。言われた通り、スイも真剣な表情で俺を手伝ってくれている。

それを見たんだろう。

サンも不満げな顔のままだが、黙った。

常に一定。

それだけを意識して俺とスイは集中していた。

やっていることは単純だ。

スイが作ったリングの穴に俺が時空魔法を張り、その内側にまとめた木材を通す。ただそれだけだ。

だが、これがなかなかに難しい。

柔い木を車軸にするために時空魔法で圧縮する。

それはわかりやすい手ではあるが、そのためには木を傷付けないように、一定の速度と一定の力を維持する必要がある。

俺はもちろんのこと、リングが内側から崩壊しねぇようにスイも。

静かになった空間にギチギチと軋む木の音が、変わらぬ時を刻みつける。

そのままどれぐらいの時間が経ったか・・・。

「・・・・・・よし」

「完成・・・です?」

「あぁ。助かった。ありがとな」

「当然のことです!」

胸を張る小さな魔法使いと笑い合い、出来上がったものを見る。

元は倍以上あった木材は通るはずのない小さな穴にねじ込まれ、その身を圧し固められながら、最後には一本の車軸になった。

単純で面倒な作業の末に出来上がったものは大したものなんかじゃないが、それでも。目的のためには十分で、達成感もひとしおだった。