軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

予想外の時間

「とりあえず、これでいいだろ」

馬車に作った車軸を差し込み、車輪を取り付けて様子を見る。

回転に問題は無し。

耐久性は・・・1週間程度ならなんとかなるはずだ。

「アレは取らないんです?」

一緒に作った車軸の出来が気になっていたのか、スイが馬車の下を覗き込み指差している。

「一応の保険だ」

アレとはスイが作った車軸の型だ。

あのリングは中央部分に残したまま馬車に取り付けた。

時空魔法で圧縮したとはいえ元はバラバラの角材だ。糊付けしたりもしてねぇしな。作成に合わせて祈祷もしといたから衝撃でバラけたりはしないと思うが・・・念のために付けたままにした。

「では私共はこれに乗って街を一回りしてきます。問題がなければ合流後、そのまま出発という形にしたいのですが・・・」

「俺は構わねぇが・・・」

「わかりました。2人にはメッセージを送っておきます」

「それでは行ってまいります」

出してくれ! とサンパダの一声で馬車が動き出す。

護衛として街中とはいえサンパダだけを送り出していいもんかと思ったが、使用人も連れているし街中ならば問題ないと本人が言うんだから大丈夫なんだろう。

それはいいが、

「暇になったな」

期せずして時間を得てしまった。

しかしながら・・・その時間はそう長いわけでもなく、どこかで時間を潰そうにも金がない。

こんなことならサンパダについていれば良かったか?

などと、己の選択に後悔を感じていたところに、

「ゼネスさん。良ければ、私の鍛錬を見て欲しい」

タンから声がかかる。

「・・・・・・意外だな? あんまりそういうタイプには見えねぇが?」

「そう? これでも私は強さには貪欲なつもり」

「そうじゃなくてな。もっとこう・・・型を気にするタイプかと思ったんだけどな」

蒸気の騎乗者の中では一番まともに見えるのがタンだ。

スイは子供。フッチは謎にしても、サンは未熟。ホウは軽薄といった印象で、タンは唯一きっちりしているというか・・・言ってしまえば騎士然としている。

格調を感じると言ってもいい。

そういう意味で、もっと道場的な”ちゃんとしたところ”での指導にこだわっているんじゃねぇかと思ってたんだが。

「そんなことない。あなたの実力は蟻の時に見せてもらった。私が見てきた中で、あなたは一番強い」

真っ直ぐに面と向かって言われると、嬉しさより恥ずかしさが勝るな。

「・・・わかった。なら構わねぇが、大したことは言えねぇぞ? なにせ、実力不足で引退した身なんでな」

「心配ない。私より強い。それだけで十分」

「はい! スイもいいです?」

「私は構わない」

「魔法はもっと自信ねぇけどな・・・」

「それでもいいです!」

「まぁ、だったらいいんだが・・・」

「やった! それで・・・リーダーはどうするです?」

「え? なんの話だ?」

仲間にメッセージを送るために少し離れていたサンだけが取り残されていた。

タンの得物は両手剣。

身体に見合わない武器を振り回すその姿には、なんとなく懐かしいものを感じる。

ただ、アンナとの決定的な違いは規則性。

「どう?」

「・・・そうだな」

タンの動きは兵士のそれに近い。

規則に従った正確な動きだ。

だからこそ、

「遊びが足りねぇな」

読みやすく、崩しやすい動きになっている。

似た特徴があったのはキューティーだ。

まぁアイツの場合はワンパターンなのが一番の問題だったが、結局のところ理由は同じだ。

「遊び?」

「ここでこうするのはどうだ? とか、あえて違う選択をする。みたいな、心の余裕のことだ」

「それがないと、違う?」

「来てみろ」

軽く構え、タンを誘う。

真上からの斬り下ろし。

タンが上段に構えを見て、踏み込む。

頭の高さに来たあたりで下りてくる剣の腹に手の甲を当て、外へ払う。

「む⁉」

本来とは大きく離れた軌道をとり、剣は地面の寸前でピタリと止まる。

それた軌道でありながら、それでも地面にぶつかる前に剣を止める辺り、鍛錬のほどがうかがえる。

「正中線を意識した良い振り下ろしではあるんだけどな?」

1つの型を納得いくまで続けてきたんだろう。

一切ブレない完璧に近い振りだが、構えて剣を振り下ろすまでが毎回同じリズムだ。

「稽古のしすぎだ。構えてから振り下ろすまで、全部規則通りじゃぁ2回目で気付くし、3回目には確かめられる。4回目からは狙われるぞ?」

どんな攻撃がいつ来るのかわかっていれば、これほど戦いやすい事はない。それはどうぞ割り込んでくださいと言ってるようなもんだ。

「どうすれば・・・?」

「相手を見ろ。遊びっつっても色々だ。今までやってきたもんを下手にいじる必要はねぇ」

「鍛錬は一人でやる」

「想像でいいんだ。相手が強かろうと弱かろうと、自分だけで完結しなけりゃそれでいい」

「・・・難しい」

「そうかもな? だが、なにも考えず身体を動かしたところで、いつでもその状態で動けるわけじゃねぇし、その違いに苦しむのはお前だ。今までにそういう経験はなかったか? 攻撃が当たらなかったり、タイミングをズラされたり・・・」

「そういわれれば、ある」

「なら、まずはそいつを思い出して剣を振ってみろ。どうすれば当てられるかを意識しながらな」

言われるがままタンは剣を振り出す。

それがどこかぎこちなく見えるのは、まだ想像しながら身体を動かすのになれてねぇからだろう。