軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

強行の姿勢

ユノの案内で離れまで戻ってきた。

「信じてますから」

リミアだけがそう言い残し、ヨハンは軽く頭を下げて、ジェイド達はなにも言わず、帰路を辿った。

いつの間にか空は暗く、それだけ時間が経っていたことを知る。

6人を見送った後、中へ戻る。

ユノが部屋の扉をノックすると、

「入れ」

よく聞いた声で短い返事が。

扉の向こう側には予想通り、

「どういうつもりだったのか・・・聞かせてくれるんだろうな? 爺」

現教皇グレアムが座っていた。

机を挟んで腰を下ろす。

なにから聞いたもんか・・・そう思うが、その前に。

ユノに視線を向ける。

爺さんもその意味は分かっている。

「少し・・・席を外してくれんか?」

「でも⁉」

「・・・頼む」

ユノが助けてくれという視線で見てくるが、

「部屋から出てりゃいいんだよ」

俺から言えるのはそれぐらいだ。

ユノも当事者だ。知りたいって気持ちはわかる。だが、爺さんの聞かせたくねぇって気持ちも理解はできる。

だから、部屋を出て扉の裏で聞き耳を立ててようが文句はねぇし、言葉の意味が理解出来ねぇでなにもわからなくても知ったことじゃねぇ。

数秒後。ユノは部屋から出た。

そこから先どうしてるかは俺には関係ねぇ。たとえ、扉の向こうに明らかな存在を感じていようとも、だ。

俺はただ、聞きたいことを聞くだけだ。

「まずは、そうだな・・・。知ってたのか? あの化け物のことを」

「知っておった。あの門の先にあのような化け物がおることはな」

知ってた・・・か。ってことは、

「初めから、殺す気だったわけだ。俺か、アイツを・・・」

「そんなわけがなかろう‼ アレは・・・最終手段に過ぎん」

「だが、最終的にはそのことも視野に入れてたんだろ? だったら同じじゃねぇか」

「それは・・・・・・いや、その通りだ。本当は、失敗すればそれでよかったのだ。おかしいとは思わなかったか? 迷宮自体の出来を」

思ったさ。

手抜きのような、ほぼ一色の内装。

どこに行けばいいのかわからなくなるような構造。

わざわざ作ったはずの、次に続くサインを最後だけ外すやり方。

出てくるモンスターの数と種類。

どこで躓いてもおかしくねぇ内容だった。

迷路の最後も。迷っていれば、まだほかに仕掛けがあったかのもしれねぇ。

そう思うぐらいには随分手の込んだ出来だった。見た目からは想像できねぇぐらいに。

「失敗させたかったってのはわかってた。あんな化け物がいた時点で、な。問題はその理由だ。そもそも、今回の依頼自体思い付きだったはずだ。その後の準備期間すら、俺の都合に過ぎなかった。にもかかわらず、なんでここまでした? それとも、いつかやるはずだった計画を前倒しにでもしたのか?」

「・・・ふむ。そう、だな。端的に言おう」

一瞬、扉の方を気にする素振りを見せて、

「息子が来る」

しかし、ハッキリと答える。

息子。この爺さんにとっては不肖の。ユノにとっては名ばかりの父親。

改宗派、だったか? 元は教会に所属していたが、その後は追い出されて姿をくらませたはず・・・。

それと今回の件になんの関係が・・・?

「それがどうした?」

「流石に言葉足らずだったか。息子は今、別の宗教に肩入れしとるらしい。それが皇都に出てくるということは・・・」

復讐か。

あるいは報復か。

「どちらにせよ、教会にとっては良くないことだ」

大手を振って、他の宗教を広める人間。教会にとってこれほど面白くない人間は他にしねぇ。そして、それが現教皇の息子だった日には。

確かに、教会を揺るがす程の衝撃だ。

「ではどうするか? 簡単な話ではないが、なにをされてもビクともせんほどの固い結束を持つしかあるまい」

話し方を変えてまで地盤固めをしてたのはそれを見越してのことか。

「そのためになるのであれば、私は・・・血縁すらも利用しよう。そう思ったのだ」

その結果が試験の失敗・・・?

いや、自分の血統を優秀ではないと示すことで、間接的に息子も出来損ないだったとしたかったのか。自分だけが特別に神に選ばれた存在だと。

さらに言えば、自分に疑いを向けさせたうえでユノに厳正な処分を下せば、教会の正当性を押し出すことが出来る。贔屓なんざ存在しねぇと。

そうすることで求心力を高めることが出来ると考えた結果か。

だから迷宮を攻略されねぇようにした。

そして、万が一の時に備えて・・・あの化け物を用意してたってことか。

受験者が祈りの間で死ぬ。

これは神による怒りに違いない。

不届き者には死の制裁を。

なるほど、よく出来てるじゃねぇか。

それにしても、くだらねぇことに巻き込まれたもんだ。

「で、ついでだから俺も消えてくれねぇかと思ったわけだ」

「・・・・・・」

爺さんはなにも言わねぇが、否定しないってのも答えの一つだ。

「まぁそうだよな。加護を崇める教会にとって俺は神に等しい存在だ。なのに、教会には属さねぇ。ましてや、息子に味方なんてされてみろ・・・教会の存在そのものが否定されかねない。それならばいっそのこと・・・・・・。別に、おかしな話じゃねぇよな?」

「そうだな・・・当然の流れだと言えるだろうな」

「俺が死んでも責任を取るのは依頼主、つまりユノになるわけで。その場合も失敗した時と同じように、処分するつもりだったんだろ? もし、逆に。アイツだけが死んでりゃ、俺は教会に寄り付かなくなっただろう。もちろん、他の宗教にもな」

元々、俺は神なんざ信じちゃいねぇが、そんなことになってたなら・・・己のあまりの不甲斐無さに、この爺さんに合わせる顔がねぇとでも言って、教会とは距離を取っていたはずだ。

そして、その程度のことをこの爺さんが知らねぇはずもねぇ。

「そのつもりだったんだがなぁ・・・・・・まさか、ワンダーゴーレムなどというあのような化け物を一人で倒す者が現れるとは、全くの誤算だったわい」

あっけらかんと笑いながら、よく言うぜ。

「悪かったな? 予定を狂わせちまって」

「かまうものか。あれほどの奇跡だ。それこそ加護のお導きであろう?」

「なんでもありだな」

「枢機卿殿やユノのその後の世話を頼んでおいた者達には悪いことをしたがな。だが、おかげで教会の抱える問題が一つ減ったのも、また事実。怒るようなことはあるまいて」

あんなもんを肚に抱え続けるよりはマシ、か。

ま、それで済むならいいんだろうさ。

「それにしても、どうやって倒した? 勝ったと聞いた時には驚いたが、同時に胸を撫で下ろしもした。そして、よくよく考えて肝を冷やした。仕返しされたらどうしよう・・・とな」

俺にその気がないとわかってふざけてやがるな。その軽い態度には腹が立つが、

「どうやって・・・ねぇ?」

「もしかせんでも、わからんのか? しゃっきりせんのぅ・・・」

「うるせぇ。それに、ハッキリしねぇのはお互い様だろうが!」

「・・・どういう意味かのぅ?」

「しらばっくれてんじゃねぇよ! アンタの息子がいるっつー宗教のことだ!」

心当たりはある。

だからこそ、明言しねぇのが気になる。

もし本当にそうだとすれば・・・、

「確証はない。だがおそらくは・・・望福教。奴がいるとするならば、な」

やっぱり・・・か。

考え方自体は昔っからあったのに、近年になっての急激な勢力増大。

その原因がこんなところに。

まぁ、なんにせよ。

「今回の件は貸しだ。いつかきっちり払ってもらうからな」

「それは怖いのぅ。おちおち死ぬことも出来ん」

「当たり前だ! 死ぬどころか、立場もなくしてもらったら困るんだよ! 取り立てんのが面倒になるだろうが」

「そう思うなら教会に来てくれんかのぅ? そうすれば・・・」

「断る。それから、依頼は成功だってユノが言ってたからな。金の用意しとけよ‼」

それだけ言い残して、俺は席を立ちあがると、

「それはどうかのぅ? なにせ、予定が狂ってしまったからのぅ」

「おい、初めからそのつもりだったのか? こっちは金の為に依頼を受けたんだぞ? おい‼ 聞いてんのか⁉」

扉の向こうが静かになるまで、しばらくかかった。