軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

答えは何処

「ゼネス‼ 無茶ばかりするな‼」

顔を上げた先にいるのはクライフだ。

「そうよ! アタシがフォローしてなかったら、どうなってたと思ってんの⁉」

続いて文句を言ったのはアンナ。

・・・あぁ、これは夢だ。

丁度、”進歩の歯車”のメンバーでワンダーゴーレムを倒した時の。

この時はなんて答えたんだったか。

「なによ・・・?」

怪訝な顔で覗き込むアンナに、俺は・・・。

そうだ。思い出した。

なにを言ってるんだって態度で、盛大にため息をつきながら、

「・・・はぁ~」

「なによ⁉ バカにしてんの⁉」

「じゃぁ聞くが。援護しない、なんてことがあるのか?」

「あるわけないでしょ⁉」

「なら結果は変わらねぇだろ?」

「そういうことじゃッ――」

「――まずは落ち着いてください。まだ確認が取れていません」

「そうだよ。感覚から言えばたぶん大丈夫だと思うけど、相手が相手だからね。ちゃんと、動かないかを確認しなきゃ」

「~~~ッ‼ 後でみっちり文句言ってやるから‼ 覚えてなさいよ‼」

フェリシアとエリックが割って入ることで、アンナは今文句を言うのは諦めた。まぁ、確か後でしこたま文句を言われた気がするが。

「止めはしましたけど、僕も。心配してるんですからね!」

「私は心配というほどではありませんが。万が一ということもあります。余裕を見せることも、時には必要かと」

「ああ。悪いな」

この戦いで、俺はこの上なく火力不足を実感したんだ。

この時。

ワンダーゴーレムに止めを刺したのはエリックの魔法だったはずで。動きを止めたのはアンナ。仲間を守ったのはフェリシアで、気を引いたのはクライフだった。

俺は・・・あれから、少しでも成長していただろうか?

けれど、冒険者をやめた俺にはそれも、意味のない事なんだろうか・・・。

「ゼ・・・ネス・・・さん! ・・・生き、るんだ・・・起きろ‼ ゼネスさん‼」

誰かに呼ばれてる。

誰だ? どれぐらいたった・・・・・・?

いや、それより‼

「いッ⁉ ってぇ~・・・」

ガバッ! と体を起こしたらなにかに頭をぶつけた。

「こっちの・・・、台詞だ」

鼻の辺りを押さえて涙声で答えるのは、

「サン・・・?」

「そうだよ。ゼネスさん」

コイツがここにいるってことは、ユノは無事に辿り着いたんだな。

じゃ、ねぇ‼

「なにしに来てんだ⁉」

「アンタが呼んだんだろ⁉」

反射的に胸倉を掴みあげながら聞いてしまった。

外側の門を壊すために呼んだなんてことは、もちろんサンにはわかるわけがなく。

と、いうより! あの化け物は⁉

ワンダーゴーレムはどうなった⁉

そのままの姿勢で首だけを慌てて動かすと、

「アンタがやったんだろ? すげぇよ」

俺の・・・一人の挑戦は、終わっていた。

そこにはすでに半分ほどがバラされ、どうにも哀れな姿に変わり果てたワンダーゴーレムだったものがあった。

「あ、おい! 大丈夫なのか⁉」

俺は掴んでいた胸倉も離し、なんの実感もないまま、気付けば。残骸となった強敵の元へと近寄っていた。

周りを見れば、蒸気の騎乗者のメンバー以外にも、何人かの冒険者が解体作業をしていて、その中には。

「お前さん。冒険者はやめたんじゃぁなかったか? それにしては特大の獲物だぁ。さぞかし、鼻も高かろうなぁ? えぇ?」

「・・・教官」

教官こと、ギルドマスター・ブロンソンの姿まで。

あぁ、いや。事の重大さからすれば居て当然か。

「それで? 一体何があった?」

ギルドマスターとしてだけではなく、個人としても気になってるようだが、

「特別なことはなにも」

生憎と答えらしい答えを、俺は持ち合わせてなかった。

「本当だろぉな?」

「こんな状況で、嘘なんざ吐きませんよ」

「・・・ふーむ」

腕を組んで、なにかを考えているようだ。

まぁ、気持ちはわかる。

皇都の中。教会の施設にこんな化け物がいたんだ。これがもし、外に出ていたらどうなっていたか。

そう思えばこそ、理由は気になるだろう。

「わかった。そんならそっちはいい。だが、コイツはどうやって倒した?」

どうやって・・・・・・。

「それがわかれば、苦労はしないんですがね」

「どぉいうことだ?」

「そのままの意味ですよ。俺にアレをどうにかする術はなかった。だからがむしゃらに戦ったし、その結果・・・俺は意識を飛ばしてた。その間になにがあったのか、わかる奴がいたら教えて欲しいぐらいですよ」

「あの滅多撃ちの痕もか?」

「それは普通に目一杯殴りましたよ。効果もありましたけど、決定打には・・・っと!」

軽く手を挙げたまま話していたら、籠手の中から血が流れ出て来た。

痛みなんかねぇんだけどな・・・。

「おい! 誰か――」

「――いいですよ。自分で治せるんで。ついでに依頼主に報告してきますね」

「ゼネス! それにはこれがッ!」

「それも大丈夫ですよ。俺はあの門、通れるんで」

おそらく協会から借りたであろう十字架を片手に持つ教官との話を適当に切り上げて、俺は残骸の横を通り過ぎて門を目指す。

あれ以上、答えられることもねぇしな。それじゃぁ話を続ける意味もねぇ。

そんなことを考えながら、解体されてるワンダーゴーレムの脇を抜ける時、視界の端に気になるものが。

錆びて、割れた歯車・・・?

ワンダーゴーレムはいつ、誰が作ったのか。誰も知らねぇ。一説には古代文明の遺産とも言われている存在だ。

それなら錆があってもおかしくねぇのか? だとしたら、俺は相当運がよかったってことになるが・・・。

そもそも、以前戦ったやつに錆なんてもんはなかったが、数年の差か? その程度でどうにかなるもんだとも思えねぇんだがな・・・。

そうやって、あれやこれやが巡っているうちに、俺は門を潜っていた。

「凄いですね! 先生‼」

急に声をかけられて気付く。

周りには駆け出し6人の姿が。

「ん? あー・・・そうだな」

教官の話を早めに切り上げたのは、後ろにこいつらの姿が見えたからだったんだが、途中で気になるものを見つけたせいで、かける言葉を考えるのを忘れてた。そのせいで生返事になる。

「怪我は・・・大丈夫、なんですか?」

エイラがぎこちなくも気を使ってくれる。

他に、言いたいことがあるだろうに。

「あぁ。別に大丈夫だ。なんてことはねぇよ」

「本当に! 凄いですよ‼ 先生‼ あんな大きなゴーレムを一人で倒すなんて‼ どうやったんですか⁉」

というか、さっきからヨハンのテンションが高い。

それにしても、またその話か。

「あー・・・」

どうやって。と聞かれてもな。

とはいえ、教官相手とはわけが違う。

ここでわかりません。なんて、言えねぇよなぁ・・・。

手本になるべきところだぞ?

つってもなぁ・・・。

「見えてたんじゃねぇのか?」

仕方なく、そう言うしかなかった。

見てもわからねぇなら、説明してもわからねぇだろ。そのうちわかるようになるだろうよ。覚えてればな・・・。とでも言おうかと思った。

だが、

「手を伸ばして構えるところまでは見えてたんですけど、その後から見えなくなって・・・もう一度見えるようになった時には、ゴーレムは動いてなかったし、先生もどこにも居なくて」

「・・・・・・・・・そうか」

じゃぁやっぱり、あの時の魔力を引き寄せたような感覚は幻じゃなかったってことか。

俺の魔力に門が反応して、なにかしらの時空魔法が発動した・・・?

それなら、意識を失う前の魔力が抜けたのにも辻褄が合う。

だが、以前試した時には時空魔法もあっさり弾かれたんだが・・・なんの違いが・・・。

「先生?」

「ん。あぁ、悪い」

「ゼネス様・・・」

どうしたんですか? と聞くヨハンに考えを切り上げたところで、別から声がかかり、そっちを見ればユノが奥の扉から歩いてくる。

「・・・御無事で、なによりです」

「お互いにな」

松明の揺れる灯りに照らされたユノの顔は思いつめたような、暗い、今にも泣きだしそうな、それを・・・どうにか食いしばって我慢しているといったような顔だ。

なんつー顔してんだか。

まぁ、爺とのやりとりでなにかあったんだろう。

そうだ。

「依頼は? 成功でいいのか?」

「もちろんです」

「そうか・・・」

ちゃんと祈りを捧げられなかったから~とかで、失敗扱いになるかと思ったが、そこは重要じゃなかったか。

だとしたら、どういうつもりだったのか・・・はっきりさせとかねぇとな。

「爺は? どこにいる?」

「いつものところに。案内します」

そう言われて、初めて周りに目がいった。

そこはもう、真っ白なダンジョンの中じゃなかった。

儀式の間にどことなく似てるが、こっちは大分狭い。そして、儀式の間にはなかった門が謎の壇上にあって、周りには松明が置いてある。

その、パチパチと木の爆ぜる音を聞いてようやく。落ち着いたような気がする。

「わかった」

こっから先の話はこいつらに聞かせるわけにもいかねぇ。

「今日のところはこれで解散だ。上に出たら帰っていいぞ。言いたいこと、聞きたいこと、色々あるだろうが・・・話は後日だ。俺は依頼主と報酬の話をしなきゃならなぇからな」

「待ってください!」

出来るだけ、早々に切り上げようとしたのを止めたのはリミアだ。

てっきりジェイド達の誰かに糾弾されるのかと思ったが・・・。

「どうした?」

「アレは‼ ワンダーゴーレムなんじゃないですか⁉」

門の向こう側。解体作業が進む残骸を指差して言う。

「「「「ワンダーゴーレム⁉⁉⁉」」」」

「・・・聞いてなかったのか?」

「聞いてませんよ‼ というか、とても聞ける雰囲気じゃなかったですから・・・先生が心配だからついて行きたいと言っても、安全が確認出来ていないから。と」

下手に真実を教えても混乱するだけと判断されたか。

「そんなことはどうでもいいんです‼ どうしてあんなモンスターがいるんですか⁉ こんな・・・教会の中に‼」

教会を信じていた母を信じるリミアには、そのことがどうしても気になるんだろうが、

「それは俺も知らねぇよ。だから、知ってる奴に聞きに行くんだ。これからな」

「でしたら――」

「だが、そこにお前を連れていくわけにはいかねぇ」

「なぜ、でしょうか?」

「邪魔だからだ。腹を割って話すのに、邪魔になるからだ」

「そうですか・・・わかりました。では、信じても良いのでしょうか?」

なにをっつーのは野暮か。

「あぁ。今回の件について、隠し事は一切無しだ。わかったことは全て教える。それでいいな?」

全員が頷くのを確認して、俺は真相を知るために歩き出す。

納得のいく答えを・・・聞かせてもらおうじゃねぇか? なぁ、教皇様よ。