軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

祈りの間

そこにあったのは門。

ゲート・・・ってよりは、アーチっつったほうがいいか。

短い通路の奥。門には扉はなく、枠があるだけ。

そして、

「な? 光ってるだろ!」

ジェイドが言うように光っていた。

つっても、

「・・・・・・よくわかりませんわね」

「えぇ。光ってはいる・・・と思うけど」

キューティーとエイラが難色を示すように、真っ白なこの空間ではいまいちわからねぇ。

だが、この通路には今まで左右の壁にあった赤いライトがねぇから、影を見れば光ってるってのはわかる。

「で、どうするんだ?」

「ここで待機だ」

「どういうことだ⁉」

「この先は間違いなく祈りの間だ。そこに行くためには・・・アレがいる」

ユノが両手で胸元に持っている十字架を指す。

「なんだよ・・・そういうことか。じゃあ全員ここで待つんだな?」

「・・・お前らはな」

「ッ‼ 一人だけついて行く気かよ‼」

「そういう依頼だからな」

「だったら俺達もつれていけよ‼ そのために連れて来たんじゃないのか⁉」

まぁ、そういうとは思ったけどな。

「祈りの間に行くには時空魔法が必要なんだよ。で、あの十字架にはそのための魔法がかけられてる。つまり、アレを持ってる奴以外は、時空魔法が使えねぇと中には入れねぇってわけだ」

ここだけじゃなく、修道の旅の試練には魔法で迷宮を作るタイプが多く存在して、その大体はこうなってる。

なんでかは知らねぇ。が、なにか加護に影響でもあるんだろう。

「だから、ついていくのは俺だけだ。なにかあった時に一人でも離脱できなきゃならねぇからな」

「・・・ユノさんと一緒に、私達が行くことは出来ないんでしょうか?」

割って入るようにリミアが聞く。

まぁお前は教会のことを知りたがってたし、そこで祈りがどうのと言われりゃ気になるのは仕方がねぇ・・・・・・とはいえ、

「出来なくはねぇが、今回は無しだ。さっきまでの、もう魔力がねぇってのは嘘だったが、今は嘘じゃねぇ。俺一人ならともかく、なにかあった時にお前らまで逃がしてやれるとは限らねぇからな」

本来、祈りの間になにかがあったりなんざしねぇんだが・・・。

ミスはさっきのだけで十分だ。

下手に目を離してこれ以上なにかあってみろ。たまったもんじゃねぇぞ。そんなのは、ごめんだ。

「つーわけで、お前らはここで待機だ。文句があるなら時空魔法の一つぐらい使えるようになりやがれ」

「酷くないですか⁉」

俺の無茶な物言いにヨハンが嘆く。他の面子もなんだかんだと文句を言っているが、こんな時。だったら教えてくださいよ! とでも言いそうなケイトは・・・まぁ、目も合わねぇか。

おかしくはねぇよな。悪いのは俺だ。

「準備はいいか?」

だからと言って、ケイトにかける言葉もない俺はバツの悪さを隠すためにユノに聞く。

「もういいのですか?」

聞かれたユノはなんの気なしに答えたんだろうが・・・もういいのか、なんて聞いてくれるなよ。これ以上、なんにも出ねぇんだから。

「ああ。こっちはな」

「そうなのですね。私も大丈夫ですので、参りましょうか」

そんな短いやり取りを経て、俺達はほぼ同時に門を潜る。

ほんの一歩。

進んだ先には、今までとは全く違う空間が。

白一色の平坦な景色ではなく、それこそ、教会の本殿。信者が足繫く通い詰め、祈りを捧げるような光景が広がっている。

中央には赤い道。

その左右を固めるのは長椅子。

それを囲うようにある柱には灯りの点いた蝋燭が飾られている。

正面、視線の先に教卓。

その上には2つの燭台と同じく灯りの点いた蠟燭が3本ずつ。

本殿なら教卓の後ろにはオルガンがあるが、流石にここにオルガンはねぇ。

代わりに、オルガンのパイプに見えるように削りだされた彫刻が、揺れる光に照らされている。

いいや、よく見れば・・・左右の長椅子も、教卓も、柱でさえ、そう見えるように削られた岩で出来ている。

修道の旅の試練には何度か参加したが、こんな祈りの間は初めてだ。

「これは・・・教会、なのでしょうか?」

「あぁ、・・・たぶんな」

異様な空間。

なにより、さっきまで真っ白な空間にいたせいで、この薄暗い空間が目になれねぇ。

「では、祈りを」

「あ、おいっ!」

ユノはすぐさま、迷いなく教卓の前に向かう。

目が慣れねぇ内から、よくそんなに動けるな。黒が潰れて見えるせいで、危険もなにも見えやしねぇってのに・・・。

これが信仰心のなせる業か?

そう思いつつも、俺は周りを見渡す。

跪いて祈りを捧げるユノ。

それを照らす蠟燭の灯り。

その灯りが揺らめくと、等しく歪むのっぺりとした黒。

そこで、気付いた。

「――ッ‼」

叫ぶが早いか、走るが速いか。

だが、身体はすでに動き出していた。

死の気配は唐突に姿を見せる。どんな時でも。

さっきのもそうだ。

あれで思い出せたから、今こうやって動けてるってのも皮肉なもんだ。

だからって、あれでよかっただなんて、言うつもりはねぇけど‼

なんとかユノの下までたどり着き、後ろから腰に手を回す。

「え⁉ あ、あの? いきなり――」

右手でユノをしっかりと抱え、左手は真っ直ぐ・・・教卓の向こう側、パイプを模した岩を狙う。

残ったすべての魔力を左の籠手に集め、放つ‼

踏ん張りもせずに魔力弾を撃ち出した反動で、俺はユノを抱えたまま後ろに転がり、魔力が足りないまま無理やり放たれた魔力弾は、岩に小さな穴だけを残して消えた。

そして、

「これはいったいどういう――」

ズガァン‼‼ と、ユノの言葉をかき消す爆音が轟く。

ユノの体がビクリと跳ねるのが伝わってきた。

まぁ無理もねぇ。

カラン、カランと響かせて、転がるのは教卓の上にあった燭台か。

ついさっきまで、ユノが祈りを捧げていた場所にはあまりに巨大な拳が鎮座していた。

「あ、あれは・・・?」

さっきの爆音はパイプを模した岩の砕ける音。

砕いたのは当然、その拳の持ち主。

岩の裏、闇に紛れて潜んでいた巨人兵。

「一言で言やぁ・・・化け物だな」

鋼鉄の鎧に精密の刃を収めた強大な化け物。

ワンダーゴーレム。

その、全てを射殺すような赤い瞳を・・・俺は生涯、忘れねぇだろう。