作品タイトル不明
side-ヨハン&リミア
―――ヨハン
今僕は、先生の言っていたこと実感してる。
「ぐッ‼ くぁッ‼」
ドラゴンみたいな石像が腕を高くから振り下ろし、その後から追いかけてくる翼をダガーで受けて流す。
ダガーは回転させて横のところで受けてるけど、刃こぼれしてないかな⁉
そんなことを思っているうちに次の攻撃が来る。
”火力不足”
この言葉の重さが僕にも理解できた。
攻撃を受けるダガーを通して痺れるような衝撃が伝わる。
両手を使って受け止めて、身体を使っていなして流す。
でも・・・その後が続かない。
攻撃自体はただの大振りなんだ。その後だって、隙だらけ。
なのに! 僕には出来ることがない‼
ダガーでは傷はつけられない。それどころか、刃が潰れてしまうだけだ。
”動きが直線的”
って言ってた意味も分かった。
この石像も、さっきの木人も、狙ったところを外さない。
たぶん、そういう風にできてるんだ。
狙ったところに、決まった動きを、一定のリズムで、繰り返し。
だからさっきの木人は楽に戦えた。
明らかに細い首が弱点だったし、攻めるばかりで守るような素振りも見せなかったから。
それはこの石像も同じ。
なのに‼
「おい‼ 無茶をするな‼ 俺様の指示通りに動け‼」
「でも‼」
「どうせなにも出来ないだろう‼」
そうだ。
ただ、木人よりも硬いだけ・・・・・・・・・なのに、それだけなのに。
それだけで、僕にはなにも出来ることがなくなってしまった。
それが悔しくて!
こんな時に、先生みたいな必殺技があれば・・・。
「ケイト‼ 魔法はどうだ⁉」
「だ、駄目。雷は効かない」
「クソ‼ おい‼ そっちはどうなんだ⁉」
そう言って、ジェイドさんが見るのはリミアの方だ。
「少しだけ時間をください! どうにかします!」
集中してドラゴンのような石像をリミアが見据える。
僕らよりも大きくて、強くて、僕なんかじゃ手も足も出ない・・・。
そんなモンスターを・・・リミアなら、きっと倒せるんだろう。
それが、どうしても、羨ましくて・・・。
あぁ。
こんな僕を先生はどう見るのかな?
約束だからって、必殺技なんて考えてくれるかな?
だって、さっきのはたぶん。僕に言ってた。
代わりはいるぞ・・・って。
だから、諦めてもいいってことなのかな?
それとも、諦めるなってことなのかな?
そうだったらいいな。
そうだったら、必殺技・・・教えて、くれますよね?
―――リミア
集中しなければ――。そう思うたび、
”目を閉じるな”
先生の言葉が聞こえます。
現れたモンスターは先生の言う通りガーゴイルでした。
硬く、大きな体で、休むことなく動き続けています。
それは確かに脅威ですが、いつかの女王蟻には遠く及びません。
もしここで目を閉じて、足を止めていたら・・・どうなっていたでしょう?
いえ、やることは変わらなかったかもしれませんね。以前のように。
ですが、必死に時間を稼いでくれている仲間の顔は知らなかったのではないでしょうか・・・。
期待を向けてくれる、その目を。
そして、期待には応えるべきです。もちろん。可能なら、ですが。
私にはそれが出来るはず。
なのに!
先生は、あろうことかそんな私に代わりがいるというんです‼
聞き捨てならないでしょう?
確かに、もっと過酷な場所で活動していたんでしょうし? 現状において、私よりも優秀な人だっていたでしょう。
ですが、その方々になり替わるのが私・・・いえ、私達のはずです!
先生にはそれを、理解していただかなければいけないようですね。
そんな、怒りも込めて魔法を作ります。
”後が楽になる”
あの時、そう言っていたのはこういうことだったのでしょうか?
いいえ。アレはきっと先生自身のこと。自分が楽をするための言葉だったはず。
でなければ・・・・・・また、腹が立ってきました。
いいでしょう。
ただ私は証明すればいいんです。
この魔法で。
右手に握る杖代わりのメイス。
先生がくれた赤い結晶体は、ある意味、この部屋によく似合う。
白ばかりが広がり、赤が差すこの部屋で、一番の輝きを見せましょう!
魔力が満ちる。
私の想像に。
あの日見た、空を割る一条の光に。
同じことは出来ません・・・ですが、私なりに追いすがることなら出来るでしょう。
光に代わる水で、貫くではなく穿つ。
圧縮され一点に向かって噴き出すイメージ。
「ガイザージェット‼」
メイスを構える。
斜め上、今は見えない空へ向かって!
立ちふさがる、私達の壁に向けて‼
メイスの先端から想像が溢れだす。現実を侵食する。世界を塗り替える。
暴れ狂う水は瞬く間にガーゴイルの体へと吸い込まれる。
短い時間のうちに何度も繰り返された腕を振り上げるその姿に。
私の魔法は一瞬過ぎました。
ガーゴイルの胸に当たって・・・すぐに消えてしまいました。
これでは、想像通りなどとは言えません。
先生の輝きは空を白で引き裂いたんです。
私のはせいぜい・・・石に一点、白を足した程度でした。