軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

ハマり具合

なぜ教師が・・・、と思うかもしれないが、実はそう珍しいことじゃない。

貴族学園は特別自治権を持つ、という側面がある。

どういうことかと言えば、社交界だけで社会を知った気でいると痛い目を見ることになる。そう教えるための措置がされてるんだ。

それが、教師の指導に関する権利と年功序列の制度だ。

指導に関する権利ってのは、授業や学園生活の中で必要に応じて教師が生徒に対して行う指導を許可するってことで、爵位の有無やその地位の高さに左右されず、学園内において教師が絶大な存在であるための権利だ。

つまりは、先生の言うことは絶対! っつーアレだ。

そして、年功序列。

手短に言えば、年上の言うことには従いましょう。っつー軍隊みてぇな考え方だ。本来なら子供にも貴族にも縁遠いもんだが・・・これのおかげで、親の爵位で何でもできるという勘違いに気付かせることが出来る。そういう理不尽を教えるための精度だ。

まぁ、これらのせいでいじめが起こりやすく、かつ深刻になりがちだという問題もあるんだけどな。爵位の低い家の子が上級生で上級貴族の子供と教師に目をつけられたせいで・・・なんて、エリックの時がそうだった。

表面化もし辛い。

つっても・・・これがねぇと最悪、入学したての6歳7歳のわがままを現実にしなきゃいけなくなる。それだけはしねぇために強権が必要なんだ。

で、ジェイドにはその強権を使った振る舞いで皇族の坊ちゃんを黙らせる役が回ってきたってわけだ。

「なんであいつに?」

「わかりません。でも先生方は適役だ、と」

「あいつが?」

昔の姿を俺は知らないし今の姿を見ても、確かにその通りだ・・・とは思わねぇ。

エイラの言うことを信じるならば、昔のジェイドは周りと分け隔てなく接していた。仲良しこよしをやってたってわけだ。そんな奴に下を抑えるためにデカい態度を取れ! なんて、言うか?

平和な代だからやらせた? だったら、ジェイドだけじゃなくその学年全員にそういう態度を取らせた方が効果的だろう。

ジェイド一人突出させれば、問題がなかった代に問題が生まれることになる。特定の相手の前でだけ態度を変える・・・なんざ子供に出来るはずもねぇし、学園内でいつ会うかもわからねぇのに表裏を使い分けるのは難しい。

なら、都合がいいってのはなんだ?

適役だっていうぐらいだ。なにか考えがあったはず。

そう思うが、出てくるのはせいぜい学年ぐらいか。

一つ二つ上じゃぁ従わせるのは難しいかもしれない。そのぐらいなら社交界での繋がりもあるだろうし、先に相手を知っていれば気おくれしてもおかしくはねぇ。

かといって、5年6年じゃぁ抑えられる時間が短すぎる。

低学年と高学年という明確な差があり、さらには3年という短すぎない時間を抑えられる。そういう点で都合がよかったっつーのはわからなくもねぇ。

だが、それだけで適役・・・?

いや、それ以前に、

「なんで教師が抑えつけなかった? 普通に考えればそれが一番早いだろ」

「それが、やってはみたが効果がない。と言われて・・・」

そんなわけねぇだろ。俺達も問題児だったがよく殴られたり蹴られたり、ときには魔法をぶっ放されたりもあった。俺で大人しく・・・は、ならなかったな。目を盗むようにはなったが・・・。

それでも、

「効果がねぇってのは嘘だろう。目に余る行為・・・なんてのはしなくなるはずだ」

「嘘・・・そうかもしれません」

なにかに納得したように頷いて同意するエイラ。

「私達、というかジェイドにその話が来たのは春先でした。それなのに効果がないなんて・・・」

なにかを試していればもっと時間がかかるはず・・・か。

皇族と学園、な。

どうにもクセェが、今はいい。

「それでジェイドがああなったのはわかったが、あいつらがあの態度を嫌いだっていうのはなんでだ? あいつらからすりゃ偉そうな皇族を黙らせてくれる、いわば味方みたいなもんだろ?」

そこで溜めた鬱憤を同級生に向かって吐き出していた、とかなら話は変わるが。

「それはそうなんですけど・・・その、あれはなんというか・・・マネなんです」

「マネ?」

誰の・・・? と思ったが、そうか。

「そうです。皇族の子のマネなんです。先生方が手本には困らないだろう? って」

そりゃそうだ。

皇族より偉そうな奴なんてこの国にはいねぇ。その上生意気なガキとくれば、生半可な態度じゃねぇだろう。

じゃぁそれを抑えるためには? 当然、それ以上か同等の態度でなければならない。

「その結果がアレか・・・」

「・・・そうです」

「で、今も治ってねぇと」

「・・・はい」

「随分と、ハマり役じゃねぇか・・・」

「・・・・・・ええ」

呆れたような声で返事をするエイラ。

確かに。納得だ。

嫌な奴のマネをしてる奴は嫌な奴で間違いねぇ。

「だから、不機嫌にしないで欲しいんです。そうなるとあの子達も嫌な思いをすると思うので」

「不機嫌に。ねぇ? だったら、早いとこ迎えに行ってこい」

「どうしてです?」

俺は窓の外を見上げる。

「もう夕暮れだ。連れて帰ってくる頃には暗くなるだろ。機嫌と体調は割と同調する。体調不良で不機嫌なんてことになったら・・・ぶん殴って帰るからな」

「あいつが・・・ですか?」

「俺がだ」

「大人になってください!」

「大人がガキの相手なんかするか!」

おかしそうに笑うエイラにそれっぽいことを言って返しながら立ち上がる。

大人は子供をあしらうだけだ。ってのは、誰の言葉ったかな?

「あ!」

会計を済まそうと財布の中身を確認しようというところで、エイラが思い出したと声を上げる。

「どうした?」

「私・・・・・・まだ立つことしか教えてもらってない」

「あ・・・」

今度は俺が忘れていたと声を上げる番だった。

そこから捲くし立てる様に色々と吹き込んでみたが・・・・・・伝わるはずもなかった。