軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

谷間の事情

昼食、というにはいささか過ぎた時間。

俺達は下町にある大衆向けの料理屋に入った。っつーのも、こういう時は大人が金を出すもんだからだ。上流階級向けのお上品な店になんざ行ってみろ・・・財布の中身が 素寒貧(すかんぴん) になる。

そのことに付け込んで、こんな料理は口に合わないなどとぬかして騒ぎ出すんじゃねぇだろうな? という 懸念(けねん) もあったが、何事もなく食事は進んだ。

その過程においても意外だったのはジェイドがあれやこれやと俺に聞いてこなかったことだ。

速く強くなりたいっつーのが見て取れるだけに、もっともっとと求めるものかと思ったんだが・・・俺に、ではなくキューティーとなにやら話していた。

チラチラこっちを見ながら小声で話していたので内容まではわからないが、フェイントがどういうもんだったかの確認とその効果のすり合わせとか、まぁそんなところだろう。

対抗策でも考えるためにわざわざ2人で並んで座り、俺と少しでも距離を取るために対角の席を選んだのか・・・。

そこまでしてなにを見せてくれるのか? 気になるところだったが、

「俺様達は先に戻る」

そう言い残して、さっさと店から出ていきやがった。

自分達で色々試すつもりなんだろう。

どうなることやら。見ていたかったが、ケイトから質問攻めを喰らってそれどころではなかった。

質問の内容は” 全ては魔法の上に(マジックオブバース) ”のことばっかで・・・・・・俺はあいつのことあんま好きじゃねぇんだよなぁ。答えるために思い出すたびイラつかせられた。

そうして、大体のことを聞き終えたケイトも颯爽と店を出ていき、しゃべるために飯を食えなかった俺はエイラと2人。微妙に気まずい空気で向き合って座っていた。

「「・・・・・・・・・」」

なにを言うわけでもなく、にもかかわらずカチャカチャとなる食器の音だけがうるせぇ。

俺から話すべき・・・だろうか? その話題は?

食事中に戦闘理論なんざ話していいもんか・・・。

かといって、他に共通する話題もねぇ。

そう思っていると、

「あいつも、昔はあんなじゃなかったんですよ」

藪から棒にエイラがそんなことを言う。

あいつ、ってのはジェイドのことだろう。

だがここは聞いておくか。なんでこんな話を始めたのかも気になるしな。

「ジェイドのことか?」

「ええ。まぁ、大分昔の話・・・なんですけどね」

「なんで今そんな話をする?」

そこでエイラは驚いたような表情を見せてから、笑って答える。

「あの子達を呼ぶんですよね?」

あの子達はまぁヨハンとリミアのことだろう。

「そのつもりだが・・・?」

「だからです」

「どういうことだ?」

「あの子達はあの態度を嫌がると思うので・・・」

窓の外、どこか遠くに視線を飛ばしながらエイラが言う。

「私達は谷間世代でした」

谷間世代。

学園入学時に同学年に上級貴族の子息が存在しない世代のことをそう呼ぶ。

「その結果、世代のトップになったのがあいつだったんです」

家格の序列は家がどれだけ皇城に近いか、だ。

同じ爵位でも、地方より皇都、その中でも家がより城に近い方が偉くなる。

だから、ジェイドのズダーク伯爵家は同学年の中で、家が一番城に近い伯爵家だったってことだ。

「それで調子に乗ったのか」

子供の頃の社交界なんてのは親の付き添い。そこでは親の爵位がすべてで、その時に親の力を自分の力だと勘違いするやつが出てくるんだ。

貴族社会ではよくあることだ。将来を考えれば、まぁおかしな話でもない。

振る舞いを覚えさせるには丁度いい場所でもあるんだろう。

ただ、そこに年齢は関係がない。

だから、入学時に蓋を開けてみれば自分が一番だった・・・なんてことになるわけだ。

転がり込んできた玉座。

調子に乗っても無理はない。

だが、俺の予想に反してエイラが首を振る。

「最初はそんなことなかった。入学からの3年間は分け 隔(へだ) てなく過ごしてたんです」

3年間はなにもなかった。つまり、4年目になにかが起こったってことだ。

パッと思いつくのは高学年になることで中等部に近くなり、そこでなにかがあった。ぐらいのもんだが・・・違った。

「新しく入ってきた1年に皇族の子がいたんです」

皇族・・・クライフは第6皇子だが、順番的には9番目で末っ子だったはず。その下に皇王様の子供が生まれたなんて話は聞いたことがねぇ。それでいて今13ってことは、孫か?

いや待て。13?

エイラに視線を向けるとコクリと頷いて見せる。

「あの子たちと同じ代です」

なるほどな。

そいつの態度が偉く 尊大(そんだい) だったんだろう。

そんなのが同じ学年。ましてや同じ教室にいたんじゃ迷惑極まりねぇからな・・・嫌いになっても不思議はねぇ。むしろそうなるってもんだ。

と、そこまではわかったが、

「それがジェイドとなんの関係がある?」

「それは・・・・・・」

顔を伏せ、迷いをにおわせる。だが、それも一瞬。

「先生方に・・・お願いされたんです」