軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

見せるやり方

2人を呼ぼうかと考えたが、今からっつーのは流石に急か。

手伝ってもらうにしても明日以降だな。

「それで! 俺様の話は?」

そんな風に考えていた俺を見透かして、後に後にと回されたジェイドが唸る。

「あぁそうだったな。で、なんだ?」

「だから! コツとかないのかって聞いてんだろ‼」

ていうか、まず謝れよ‼ とヒートアップするジェイドは無視する。

なぜなら俺がお前に謝る理由がないからだ。あまり調子に乗るな。

「コツねぇ?」

そういうのを口で伝えるのはあまりにも難しい。料理や描画じゃねぇんだ。身体の使い方や考え方を言葉に出来るなら、道場だとかを開く必要はなくなる。全部 口伝(くでん) で済むんだからな。

それでも、言うことがあるとすれば・・・、

「お前らは攻撃をあてようとしすぎだ」

「はぁ?」

なに言ってんだこいつって顔だが・・・見せた方が早いな。

「まぁ見てろ」

地面に投げ出されたまま転がっていた盾を拾い上げ、

「こい」

キューティーに向かって合図する。

それにキューティーはどうしようか? っつー顔でジェイドの方を見た後、ジェイドの行け行け! という顔の動きで走り出す。

俺は 斜(はす) に構え左手に盾を掴み、地面に盾下部を着けて待つ。

そうすりゃ体の大半は盾に隠れることになって、正面からどうこうってのはまずなくなる。

当然だろう。

相手だって正面から突っ込むのは怖い。

では、どうなるか?

言うまでもないが回り込もうとするはずだ。右か左に。

極稀(ごくまれ) に上からということもあるだろうし、もっと稀には下からもあるだろうが、今は流石にねぇだろう。

なら、どっちに来るか?

これも当たり前だが、外側・・・つまり体の後ろ側に回り込むのが基本だ。

人間に限らず、ほとんどの生物にとって背後っつーのは一番隙をさらしてる場所だからな。

今回で言えば、俺から見て左がそうだ。

じゃぁ、どうすんのか?

必然。それを阻止する。

お互いの距離が詰まってくる中で、キューティーの左足に注目する。

人は走りながら向きを変える時にはどうしても、曲がりたい方向とは逆の足で地面を蹴る必要がある。

だから、程よい距離で左足が地面に着く瞬間。そのほんの一息前に盾を左に向ける。

それだけで牽制になり、キューティーは俺の外側に回れなくなる。

そうこうしてるうちに、曲がれないまま、これ以上は無理だっつーラインに到達することになる。その最後のタイミングに合わせて、盾に引き付けるように一歩分、体を寄せる。

これが見えてりゃ外を取ろうとするのは諦めるだろう。

そこへ、盾を持ち上げて見せる

曲がれないまま走ってきたキューティーと俺の距離はすでに目前。このまま盾を押し出せばぶつかるだろう。

そうなれば自然。

キューティーはバッ! っと切り込んでくる。俺の右側へ。

後は簡単だ。

それを追いかけるようにして身体を開き、反動を利用して盾を引っ張る。

ガガガガ! っと傾いた盾の角が地面を 擦(こす) るが構わねぇ。

走ってる相手に対して、こっちは向きを合わせるだけ、しかも先に準備もしてるとなりゃぁ、追いつくのは道理。

驚いてるキューティーに向かって追従した盾を叩きこんで、仕舞いだ。

突き出した盾は目標にぶち当たる直前に固いなにかに阻まれた。魔法盾が発動したんだろう。つっても、衝撃が消えてなくなるわけでもねぇ。キューティーは後ろに転がることになった。

一部始終を見ていたジェイドが驚愕の声を上げる。

「なにしたんだ⁉」

「フェイントだ」

「フェイント⁉ フェイントなんてあったか⁉ ほとんど動いてなかっただろ⁉」

「別に派手に動く必要はねぇんだよ。そうだろ?」

起き上がってきたキューティーに話を振る。

「えぇ、そうですわね。むしろ、ちょっとしたことの方が不気味でしたわ」

「つーことだ。要は相手に伝わればいいんだ。後はタイミング・・・だな」

「そんなので本当に意味があるのか⁉」

「あるからこうなってんだろ?」

疑うジェイドを黙らせるため、キューティーに聞く。

「もう一回やったとして、避けられると思うか?」

「・・・・・・不可能ですわね」

悔しそうに、けれどしっかりと首を振る。

「つまり、状況さえ作れば攻撃は勝手にあたるんだ。無理にあてようとしなくても、な」

「そんなことが・・・?」

「まぁ、まずは相手をよく見ることからだ。なにがしたいのか、分かるようになってくれば自然にわかるようになる。なにをすれば、どうなるか・・・がな」

なにをやったのかを俺の口から教えても、それは単なる知識にしかならない。だが、自分で解き明かせば・・・多少は身についたものになるはずだ。

「私は・・・私はどうすればよかったのでしょう⁉ なにをされたのかは理解していますわ! でも、もし同じようなことが出来る相手と出会ってしまったら、今の私ではなにも出来ませんわ!」

実力の差を理解したからこその悲痛な叫び。さらにはその先にあるだろう未来を想定しての 葛藤(かっとう) 。悪くはない。

だが、

「別に、なにもしなくていいさ」

「なぜですの⁉ 私では務まらないと‼ そう言うのでしょうか⁉」

「そうじゃねぇ。俺に動かされたのが気に入らねぇのはわかる。それに対抗する策を思いつかないのもな。だが、お前のミスはそこじゃねぇ」

焦りすぎるのも良くはない。

「お前のミスは止まらなかったことだ」

「どういう、ことですの?」

「無理やり攻撃しなきゃならねぇ理由なんかねぇってことだ。相手に動かされるんなら、動かなきゃいい。今回は禁止してるが、魔法を使ってもいい。仲間がいるんだ。待ってもいい。俺のしたことがわかるんなら、なにがしたかったのかもわかってたはずだ。今度はそれを利用すりゃいい。当然、俺はその通りに動いたりはしねぇがな。読み合いなんざそんなもんだ」

「なるほど・・・そういうことですの」

「理解できたんならやってみろ。すぐには上手くいかねぇだろうが、さっきまでよりはマシになるだろ」

盾の持ち手をジェイドに向けて、立ち上がるのを待っていると――・・・

ギュルルルル。と、立ち上がる前に腹が音を上げた。

空を見上げれば、太陽はすでに通り過ぎてしばらくたっていた。

「いったん戻るか・・・」

遅い昼食の為に俺達は皇都へ戻ることにした。

ただジェイドだけが、腹を立てただけで座ったままだった。