作品タイトル不明
からかってるわけじゃねぇ
股を開き、腰を落として構えるエイラは少しだが顔を赤くしている。
スカートではなくパンツスタイルであるため、はしたなさは軽減されているが、パンツがタイト気味なせいかボディラインがくっきりと出てしまっていて、おそらくだがそれを恥ずかしがってるんだろう。
どうにも、落ち着きがないなと思っていると、
「もういいですか?」
そろそろやめたいとエイラが 訴(うった) える。
それほど重要でもねぇことだし、
「ああ、いいぞ」
そう返すとエイラはいそいそと 佇(たたず) まいを正し始めた。
「忙しそうにしているとこ悪いんだが、言わなきゃならないことがあってな?」
「なんですか?」
「さっきの構えな? しばらく使わねぇから」
「なんでやらせたんです⁉ あんなに恥ずかしかったのに‼」
さっきより顔を赤くして吠える。
まぁそういう反応をするだろうとは思っていたが、思った通りにそんな反応をされると面白いな。
「いや、最終的にはいきつくところだし、服装の見直しが必要だってのはわかっただろ?」
「それはそうですけど‼」
それでも! と、ここで感情的に返してくるのは少し意外だった。
意味があったと知れば納得する奴だと思ってたんだが、普段の頼りになる印象とは遠い子供じみた反応を見せる辺り、そうでもないのか?
この方が年相応だろと言われればそうなんだが・・・あんまり頼りにし過ぎるのは良くなさそうだな。
パーティーのことはこいつに任せときゃいいか。とか考えてたんだが、別の案も必要になりそうだ。
「あーあー悪かったよ――・・・」
とりあえず、適当にとりなして話を進める。
「じゃ、次は肩幅に足を開いて、軽く膝を曲げる」
「こう、ですか?」
機嫌を直したエイラは言われるままに体を動かす。
すると、自然に腕も曲げ、手は胸の前に。
一見すれば、なにかに身構えているような格好になる。
「それが一番動き出しやすい格好だ」
「これが? ちょっと 窮屈(きゅうくつ) な感じがしますけど・・・?」
「なら膝を開くなり一足分ずらすなり試してみろ」
「あ・・・これなら」
少しずつ動かしながら、丁度いい位置を見つけたようだ。
「違和感がなくなったんならそれが基本型だ」
「ここから、どうするんですか?」
「逃げる」
「逃げるんですか⁉」
「そりゃ逃げるだろ。敵に向かって行って、お前になにが出来るんだ?」
「出来ませんけど! それを教えてくれるんじゃ⁉」
「そんなもん。教えたからってすぐ使えるようになるわけねぇだろ? それに、お前の役割は時間稼ぎ・・・無理に戦う必要はねぇよ」
「だったら攻撃魔法は⁉」
「アレは敵が目の前に来るまでを遅らせるためのもんだ」
積極的に攻撃する必要がないってのはそういうことだ。
「じゃぁ逃げた後は⁉」
「お前ならどうする? 一番奥の敵を狙ってる時に間にいた奴が逃げたら」
「そんなの! 無視するに決まってます!」
「だよなぁ? じゃぁ逆に、逃げた後、敵に無視されたらどうする?」
「それは・・・攻撃、するんじゃないですか?」
「なんでそんな他人事なのかはわからねぇが、まぁそうだよな? 攻撃でもなんでも、とにかく邪魔をするはずだ。そうなったら・・・邪魔された奴はどうするだろうな?」
「・・・あ!」
「わかったみたいだな?」
「えぇ、流石に。そこまでされれば無視はできない」
「そういうことだ。そうやって時間を稼いでりゃぁ――」
「――仲間がどうにかしてくれる」
全てを理解した。とエイラが俺の言葉に続いた。
だがそこで、ふと思ってしまったんだろう。
「もし、どうにもならなかったら?」
「そん時は・・・・・・」
それは運がなかったか、実力を見誤った時だ。
そこからの大逆転なんざ教えてやれるわけもなければ、教えられたとしても実現できるはずもねぇ。
「諦めろ」
なにより、そうならないための今なんだから。