作品タイトル不明
格闘術・基
笑い転げるケイトを端に寄せて、話を続ける。
「ということは、私は中級魔法を使える・・・ってことでいいんですか?」
「大まかに言えば、な。中級攻撃魔法との違いは構成に属性が加わるってことだ。強化魔法に属性を追加すると融合強化になるから、消費魔力が5割ぐらい増えるな」
「まぁ・・・それぐらいなら」
「後は魔力回復上限とかを考えつつ、どういう行動をとるかって話になる」
攻撃魔法を覚えたからつって、そればっかり使って魔力切れ・・・じゃぁ、回復役は務まらないからな。
「そこで必要になってくるのが格闘術ってわけだ」
「私の役目は時間稼ぎ、なんですよね?」
「そうだが?」
「モンスター相手に格闘で時間を稼ぐんですか? とてもじゃないですけど、出来るとは想えないんですが・・・」
「そりゃぁ自分よりデカい相手に素手でどうにかしろ! とは言わねぇよ。ただ逆に、そういうモンスター相手に突っ立ったまま魔法を撃って時間稼ぎになると思うか?」
「それは・・・」
「いずれにせよ、体は動かす必要があって、その時に役に立つのが格闘術の知識だ」
「それならケイトにも聞かせた方がいいんじゃ・・・?」
そう言って視線を向けるが、
「今はそれどころじゃないだろ・・・」
「そう・・・みたいですね」
ヒー、ヒー、と息を上げながら落ち着こうとして・・・なにかを思い出したのか、やっぱり無理で悶えている。
「まぁ、いつかあいつも直面する課題だが、魔法使いはまず、魔法の威力だ。そのために守られるわけだしな。その時までにお前が教えられるぐらいになってれば、都合はいいよな」
「そんなに期待されても困るんですけど・・・」
「希望的観測だ。その時がいつ来るのかも知らねぇし、その時まで俺が面倒見てるとも限らねぇ。最悪の時はどっかの道場の門でも叩けばいい。俺のは我流だしな」
「そんな人に習っていいのかしら・・・」
「他に心当たりがあるなら、好きにしてくれてもいいんだぜ?」
「いいえ。是非、お願いします」
そんな茶化した小芝居を皮切りに、指南を開始した。
「格闘戦において、一番重要なことがなんだか・・・わかるか?」
「んー・・・・・・前に出過ぎないこと?」
「意外と賢いな?」
ふふん! と自信を見せるエイラ。
もしかして声出てたか? まぁいい。
「お前の役割から言えば、あながち間違っちゃいねぇが、もっと根本的なことだ」
「根本的・・・?」
「人間相手でも、モンスター相手でも、やっちゃいけないことだ」
「やっちゃいけない・・・?」
うーん・・・? と考え込んでも答えは出ないようだ。
ここで長引かせる意味はないので、さっさと答えを教えることにする。
「答えは、倒れること。だ」
「それって負けるなってことですか? でもそんなの・・・」
「言い方が悪かったな。もっと単純に、地面に寝転がること。だ」
「寝転がる・・・なるほど? でも、どうして寝転がるのがいけないんですか?」
「そうだな・・・。わかりやすく言うと踏まれるからだ」
これは冗談などではない。
「踏みつけは手軽で強力な攻撃だ。隙も少ない上に逆転もしにくい。人間同士でもそんな状態だってのに、モンスター相手にそうなったらどうなるか・・・言うまでもないよな?」
二足歩行の人間なら軸足をどうにかすれば相手を転がすことも出来るかもしれないが、四足歩行相手にはそんな希望なんざ、はなから存在しない。
二足歩行だったとしても、バランスを崩したところで、前方に体重を掛けられたらそのまま踏みぬかれるるわけだしな。
四足なら最悪、押さえつけられたまま喰われる。
「だから、一番重要なのは立ってること。どんな状況でも倒れることなく、立ち続けること」
そのためには、
「しっかり足を開いて、しっかり腰を落とす! 恥ずかしがってたら死ぬぞ!」
しっかり構えることからだ。