軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白魔導師、街の英雄となる

「何故こうなった?」

俺は目の前に広がる光景を見ながら呟いた。

街の中心にある広場には多くの人が集まっており、街の料理人などが食事を作っている。

酒樽もたくさん置かれていた。

食べたり、酒を飲んだり……

とにかく広場はお祭り騒ぎだった。

そして何故かその中心に俺がいる。

俺は状況を理解出来ず、一人佇んでいた。

「ロイドさんも飲みましょうよ」

酔っぱらっている冒険者が絡んでくる。

むっ、凄い臭いだな……

めちゃくちゃ酒臭いため、あまり近寄らないで欲しい。

師匠とのことを思い出してしまいそうになる。

「いや、遠慮しとく。酒は苦手なのでな」

「そうですか。まぁでも、主役はロイドさんなんで、しっかりと楽しんでいってくださいね」

「あ、あぁ……」

そう言うと男は去っていった。

やはり、この男も俺のことを主役と言っていた。

他の人達も同じようなことを言っている。

俺はいつ、いったい何の主役になったんだ?

というか、本当に主役だと思っているんだろうか? 勝手に楽しんでいるように見えなくもないが。

そんなことを考えながら突っ立っていると、遠くから声をかけられる。

「あっ、ロイドだ!」

声の聞こえて来た方を見ると、そこにはユイの姿があった。

その後ろにはダッガス、クロス、シリカがいる。

また、ユイの片手には酒の注がれたジョッキが握られていた。

「どう、ちゃんと楽しんでる?」

「いや……どうだろうな」

正直、楽しんでいるのかと言われれば否だ。

いきなり広場に連れてこられ、その上何故か主役扱いされている。

先程からやけに視線を感じるし、とても居心地がいいとは言えない。

「イマイチかな」

「そう言えばロイドって、酒が苦手だったもんね」

確かに酒は苦手だが、理由はそれだけではない。

「まぁ、それもそうなんだが……まず、この状況の説明を……」

「あっ、ちょっと待っててね。今、シリカと同じやつを貰ってくるから」

ユイはそう言うと俺の話も聞かずに、何処かへと走っていった。

おそらく、ジュースを取りに行ってくれたのだろう。それはありがたいのだが、話は最後まで聞いて欲しかったな。

代わりに残ったダッガスらに聞くとするか。

「なぁ、ダッガス。これはいったいどういうことなんだ?」

「えっ、ロイド。それも知らずに宴に参加していたのか?」

「まぁ、そうだが……」

ダッガスが大きなため息をつく。

「おいおい……ユイの奴、何にも説明してなかったのか。ってか、ここまであからさまなのに気がつかないロイドもロイドなんだが……」

ダッガス達が呆れた表情でこちらを見てくる。

「いいかロイド。お前はこの街を魔族から救った英雄なんだよ」

そう言えばそんなことも言われたな。

全く心当たりはないんだが……

「俺がか?」

「そうだ。お前はこの街の英雄なんだよ」

その後、ダッガスはあまりピンと来ていない俺に、この状況を詳しく説明してくれた。

その話を要約するとこうだ。

どうやら、俺は本当にこの街の英雄になったらしい。

理由は魔族達からこの街を守ったかららしく、ユイが魔族とのことを冒険者や騎士、そして街の人達にも話したそうだ。

いったい、どんな風に話したらこうなるのだろうか。

そして今、イシュタルの防衛成功を祝う宴が行われているとのこと。

「そうか……そうだったのか」

「あぁ……ってか、本当に何も知らなかったんだな」

「まぁな」

当然だろう。

自分が寝ている間に、こんなことになっているなんて想像出来るわけがない。

そもそも、街を守ったのはユイたちだって同じはずだ。

俺はユイたちやクレハのサポートをしただけ。半人前の支援職でしかない俺一人で叶ったことなんて、本当にあるのかさえ疑わしいのだ。

そんな俺が英雄と呼ばれるのは、やはり少し違う気がする。

「なぁ、別に俺は……」

そこまで言いかけた所で、ダッガスが口を開いた。

「ロイド、お前はもう少し自信を持ってもいいんじゃないか?」

「俺もそう思うぜ」

「私も、ロイドさんはもっと自分を評価すべきだと思います」

ダッガスの後ろにいたクロスとシリカが口を揃えて言う。

「自分に自信を?」

「そうだ、お前はもっと自分を誇っていいと思うぞ」

「そ、そうなのか?」

「あぁ。だから今日は自分が主役だと思って楽しんでもいいんじゃないか?」

自分に自信をか……

俺がまだまだであることは、事実だと思うのだが。今まで言われたことのない言葉に、動揺とためらいを覚える。

「なっ、とにかく今日は楽しめって」

クロスが肩をポンッと叩く。

うーん、とりあえず楽しめと言うことだろうか?

ならば仕方ない。

「あぁ、そうだな。ダッガス達の言うように今日一日、頑張って楽しんでみるよ」

「いや、頑張るって……俺はそう言うことを言いたいんじゃなくてだな……」

「ロイド、ジュースを持ってきたわよ!」

ユイがジュースの入ったコップを手に、駆け寄ってくる。

「ありがとな」

「おい、ロイド。俺の話を……」

その後、俺はこの宴を頑張って楽しもうとした。

いや、頑張る必要はなかったのかもしれない。途中から、そう気がつけた。

自分が主役ということには結局最後まで納得がいかなかったが、宴自体は意外と楽しむことが出来た。

ユイたちと一緒に、夜が明けるまで飲んだり食べたり……

気がつけば、夕方から始まった宴はあっという間に終わってしまった。

「……」

ここまで楽しいと思えたのは、久しぶりかもしれない。

そんな宴を楽しんでいるロイドのことを建物の上から一人の男が眺めていた。

黒いフードを被った男はロイドを見ながら、嬉しそうに笑みを浮かべている。

「ロイドくん、本当に楽しそうっすね。あそこにいたときよりもはるかに楽しそうっす。これは、マーリンさんにも伝えてあげないと……」

黒いフードを被った男はそう呟くと暗闇の中へと姿を消した。