軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

動き出す者達①

「ふぅ……やっと着いたっす」

とある森の奥に、ひっそりと建つ木造の家。

そこへ一人の男がやって来た。

男は黒いフードを被っており、全身は黒の衣服に包まれている。

見た目は、いかにも不審者と言うような感じだ。

そんな怪しさ満点の男は警戒する様子もなく、その家の入り口へと足を進めていく。

「いやー、それにしても遠かったすねぇ」

扉の前にたどり着いた男はそんなことを呟いた後、トントンと軽くノックした。

しかし、反応がない。

とは言え明かりがついているし、留守とは考えにくい。

「あぁ、これってもしかして……」

何かを察した男はドアノブを握り、扉をゆっくりと開けた。

次の瞬間、炎の球が男を目掛け飛んでくる。

それに気がついた男は後ろに飛び退くが炎の球の方が速い。

その炎の球は男にあたるすんでのところで大きな音をたて、爆発した。

爆発で飛ばされ、土埃が空中を舞う。普通に考えれば即死、あるいは大怪我を負うであろう威力。

「ふぅ……危なかったすね。危うく死ぬところだったっすよ」

何事も無かったかのような表情で煙の中から、男が現れる。服は少し汚れているが、そこまで酷い汚れや怪我などは見えない。

男はパンパンと服を叩き、服についた土を落としながら、吹き飛ばされた扉の方を見る。

そこには、片手に酒瓶を持つ女がいた。

「おっ、その声はウィルなのか! いやー、久しぶりだな!」

「はぁ……まったく、マーリンさんは酒飲むといつもこうなんだから……」

ウィルと言う男は豪快に笑うマーリンを、呆れた様子で、そしてどこか心配そうに見ていた。

マーリンの顔は真っ赤で、遠目から見ても酔っぱらっているのが分かる。

片手には酒が入っていたのだろうと思われる瓶が握られているが、中身はすでに空っぽだ。

おそらくあれだけではない。

すでに何本も飲んでいるのだろう。

「さすがは幻の錬金術師だな。これを食らっても怪我一つしないのか……いったいどんな手品を使ったんだ?」

マーリンが首をかしげる。

錬金術師とはポーションを作ったりするような職業で、いわゆる非戦闘職というやつだ。そんな、錬金術師であるウィルがあの爆発を防いだのだ。

疑問を持って当然である。

「企業秘密っす。マーリンさんに教えると対策されそうなんで……ってか、あれマジで危ないっすよ。もしも他の人だったからどうするんすか?」

「ははは、悪いな。つい……」

「ついって。はぁ、これだからマーリンさんは……ロイドくんに嫌われちゃうっすよ?」

「うっ、それは関係ないだろ!」

かなり痛い所をつかれたらしく、マーリンが動揺している。

そんなマーリンをウィルはどこか面白そうな目で見ていた。

「もっとも、すでに誰かさんのせいでロイドくんはお酒を飲めなくなっちゃったみたいっすけど……」

「うっ……それは」

「いやぁ、いったい誰がそんな酷いことをしたんすかねぇ。あっ、そう言えば他にも……」

「なっ、それ以上言うなー!」

マーリンがウィルを目掛けて何発も炎の球を飛ばす。だが、酔っぱらっているせいか、もしくは痛い所をつかれ動揺しているせいか……

ほとんどの球は、ウィルのいる方向とはまったく別の方へと飛んでいた。

森の木々が爆発により容赦なくなぎ倒される。

「ちょっ……マーリンさん、やり過ぎっすよ。私を殺すつもりっすか?」

「知るかー! どうせ私はロイドに嫌われてるんだよ! くそ、どうして私は……」

「それ、全部マーリンさんのせいっすよね? 私にぶつけないでもらえます?」

ウィルが説得するものの、マーリンの攻撃は止まらない。と言うか、ウィルも何だかんだ言ってはいるが、この状況を楽しんでいるように見える。

マーリンの魔法により、森の木々が次々となぎ倒されていく。

二人とも周りが見えていないらしい。

そこに一人の女がやって来た。

「ちょっと、二人とも。いい加減にしなさい!」

家から出てきた一人の金髪の女が、マーリンとウィルを叱りつける。

「あっ、リリィさんじゃないっすか! お久しぶりっすね」

「そうね。お久しぶり……って、そんなことよりも! いい加減にしなさいって言ってるの! あんたらには周りが見えていないわけ?」

そう言われたマーリンとウィルが辺りを見渡す。

「あぁ、確かにこれ以上は不味いっすね」

「あんた……今さら気づいたわけ?」

「はは、楽しくてつい……」

ウィルがペコリと頭を下げる。

言葉でこそ謝ってはいるものの、反省している様子はまるでない。

それを見たリリィが大きなため息をつく。

「はぁ、まったくあんたらは……特にマーリン。あなたはいつもいつも……」

「ち、違う。ウィルが私のことをいじめるから、仕方なく……」

「マーリン? あんまり言うことを聞かないようなら、またお酒を全部、水に変えるわよ」

リリィが特殊な浄化魔法を発動しようとする。

浄化魔法で酒の中にあるアルコールを消し去るつもりなのだろう。通常の浄化魔法ではそんなこと出来はしないが、今、そう言って見せたリリィは、その言葉を現実にする特殊な力を持っている。

「ちょっ、リリィ! それはないだろ。私からお酒を取るなんて……じょ、冗談だよな?」

「私はやるときはやる女だからね?」

リリィが真面目な顔でマーリンを睨む。口を開いていないのに「冗談じゃないわよ?」と言っているのが伝わってくる。

それに対しマーリンは「頼む……それだけは止めてくれ!」と必死に目で訴えかけている。

ウィルが二人が見つめあっているのを面白そうに見ていた。

「おい、リリィ。何をしてるんだ?」

そこへ新たに、眼鏡をかけた男がやって来た。

「ちょっとお仕置きをしようと思ってね……いいわよね?」

それを聞いた男は辺りを見渡す。

辺りの木々は何本もなぎ倒されており、地面も所々抉られている。

マーリンが魔法を乱射したことは、誰が見ても一目瞭然だった。

「なるほど。確かにマーリンには説教する必要があるだろうな」

「ね、そうでしょ?」

「あぁ。だが、今はそれよりも……」

眼鏡をかけた男はちらりとウィルを見る。

「お前が来たと言うことは、奴等に動きがあったと言うことか?」

男に尋ねられた瞬間、ウィルは真剣な表情になった。

ウィルの雰囲気ががらりと変わる。

先程までとは、まったく別の人のようにも感じれるほどに。

「えぇ……まぁ、この話は中でしましょう」

「あぁ、そうだな……」