軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白魔導師、困惑する

「……ん?」

意識がゆっくりと覚醒していく。

同時に、うっすらとこれまでの記憶が蘇ってくる。

俺はクレハと協力し、モンスターらをイシュタルから退けた。そして意識が朦朧とする中、クレハを背負いながらイシュタルへと向かった。

そこまでは覚えている。

だが、そこからの記憶がない。

寝てしまったのだろうか?

俺は目を擦りながら、重い瞼を開いた。

上半身を起こし、辺りを見渡す。

「ここは何処だ?」

魔族に捕まった……と言うことは無さそうだな。

少なくとも、監禁されている感じではない。

部屋に鍵やトラップが仕掛けられているわけでもなさそうだ。

それじゃここはいったい……

ベッドに座ったまま、窓の外を見る。

窓の外には見覚えのある景色が広がっていた。

「ここは、イシュタルか?」

どうやら俺はベッドの上でぐっすりと眠っていたらしい。

お陰で、倦怠感は消え去っている。傷や火傷も治癒されていた。

なるほど。よく思い出せないが、おそらく俺は魔力を使い果たし、何処かで倒れた。その後誰かがここまで運んで、手当をしてくれたのだろう。

「そうだ、クレハは……」

辺りを見渡すがクレハが見当たらない。

俺はクレハの無事を確認するため、ベッドから出ようとした。

その時だ。

部屋の扉が開かれ、部屋の中にユイが入ってくる。

「あっ、ロイド! 起きたんだ」

「あぁ……ついさっきな」

「よかった……それで、身体の方は大丈夫なの?」

ユイが心配そうな目で見てくる。

試しに、ベッドから出て手足を軽く動かしてみた。

「大丈夫だ……違和感もない。後遺症の類もないだろう」

「そう、それはよかったわ。もう……ロイドが目の前で倒れたときは、本当にびっくりしたんだから!」

ユイがほっと胸を撫で下ろす。

どうやら、ユイらがここまで運んで来てくれたらしい。

「すまない。色々と迷惑をかけたみたいだな」

「そんなことないわ。皆、ロイドに感謝しているよ」

皆とはダッガスらのことだろう。

俺は、少しでもクルムの代わりを果たせたのだろうか。そんな不安が胸を支配する。

そうだといいんだが……

いいや、それはないか。

結果的に俺は、ユイたちには迷惑をかけてしまったみたいだしな。

感謝するのは俺の方だ。

「ユイ、ありが……」

「あっ、ロイド、ちょっと待っててね……そうそう、探知魔法は使っちゃだめだからね!」

「あ、あぁ……」

ユイは「絶対だからね!」と強く念を押すと、随分と急足で部屋を後にした。

いったい、なんなんだろうか?

何故、探知魔法を使ってはいけないか分からないが、とりあえずユイに言われた通り、探知魔法は発動しないでおく。

そして、特にやることもなく、呆然とただ窓の外を眺め待つこと数分後。

驚くほど息を切らせながらユイが、出て行った時同様、急足で戻ってくる。

「はぁ、はぁ……お、お待たせ」

「お、おう。どうかしたのか?」

「ううん、ちょっと用事を思い出してね」

「そうか……」

物凄くハァハァと、息を切らしているが……

そこまで急ぐほどの用事とはいったい、なんなのだろうか。

「って、そんなことはどうでもいいの! ロイド、私についてきて!」

ユイが俺の腕を力強く引っ張る。なんだか、こんなことが前にもあったような、と呑気に考えている間に、体がぐいっと引っ張られる。

「おいっ、急にどうしたんだ?」

「いいからいいから!」

ユイに強引に腕を引かれ、長いこと眠っていたであろう部屋を出る。

どうやら、ここは冒険者ギルドのようだ。一度しか来たことはないが、建物の雰囲気からなんとなく分かる。

俺は冒険者ギルドの二階にある部屋で寝ていたらしい。

冒険者ギルドで寝ていたという事実に違和感を覚えながらも、引っ張られるがままに階段を下り、一階へと降りる。

「……ん?」

そこで俺はふと、あることに気がついた。

前回来たときは、ここは冒険者で賑わっていたはずだ。

しかし、今は全く人の姿が全く見えない。人のいない冒険者ギルドは寂しげで、不気味に映る。

受け付けのカウンターに置かれている手続き途中の依頼書や、放り投げられている荷物の入った鞄など、つい先程まで人がいたような形跡はあるのだが……。

「っ……」

それにしても……なんて怪力だ。

俺が多少、抵抗してみてもびくともしない。

職業的なものもあるだろうが、それにしても強すぎる。

かなり鍛えているのだろう。そうでなくとも、普段から剣を握っていれば、勝手に握力も高まるか。

「な、なぁ、ユイ。どこに行くんだ?」

「すぐに分かるわ。いいからついてきなさい!」

そう話すユイは、満面の笑みを必死にこらえているような、そんな表情をしていた。しかし、その喜びは隠しきれておらず、表情の節々から漏れ出ている。

ユイはどうしてあんなに嬉しそうなんだろうか?

ふむ。今回の依頼は、それほどまでに報酬がよかったのだろうか……

抵抗しても意味がなさそうなので、とりあえずユイについていく。

下手に抵抗すると腕、痛いしな。

「さぁ、ついたわよ」

ユイの足が扉の前でぴたりと止まる。

そして掴んでいた俺の腕を離した。

「ロイド、開けてみて」

「えっ……俺がか?」

「他に誰がいるのよ?」

周囲を見渡す。

確かに俺しかいないな。いや、目の前にユイがいるではないか、とそんな無粋な考えを見抜いてか、ユイがむすっとした顔でこちらを見る。

「うーん……」

ユイに限って、悪意のある罠……と言うことはないだろう。

探知魔法を発動するか?

いや、だが使うなと言われているしな。

仕方ない。

俺は諦め、恐る恐る扉を開けた。

「…………」

扉を開けると、目の前には大勢の冒険者や王国騎士、また街に住んでいる人など……本当に様々な人がいた。

そして全員が笑みを浮かべながら俺の方を見ている。

これはいったい、どういうことなのだろう……

何故こうなったのか、俺を取り巻く現状を理解することが出来なかった。