軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白魔導師、帰還する

「終わり……ましたね」

「あぁ、そうだな」

周囲にモンスターがいないことを確認し、木から飛び降りる。

木の影に隠れれば、魔族から狙われることはないだろう。

やはり、魔族はこれ以上俺たちに近づけないらしいからな。

地面に降りたのち、クレハを地面に座らせ、地面へと腰をおろした。

収納魔法からマナポーションを取り出し、クレハへと渡す。

これが最後のマナポーションだ。

「私が使ってもいいんですか?」

クレハが心配そうにこちらを見つめる。

確かに、今の俺の状態は大丈夫とはとても言えたものではない。

服はボロボロだし、身体のあちこちに傷や軽い火傷の痕がある。

急激に魔力を使いすぎたせいか、若干頭も痛い。

正直、俺だってマナポーションを飲みたいさ。

だが、辛いのはクレハも同じだろう。

魔族から解放されてすぐに、これだけの魔法を使ったのだ。

それにクレハの場合は精神的な疲労が大きいはず……

「俺は大丈夫だ。だから、クレハが使ってくれ」

「そうですか……では、ありがたくいただきます」

クレハがゆっくりとマナポーションを飲んでいく。

その間俺は、周囲を警戒しておく。

先程、周辺に敵がいないことはしっかりと確認した。

しかし、油断するわけにはいかない。

探知した範囲はそこまで広くなかったし、今は探知魔法を使うことすら出来ないからだ。

「本当に、まだまだだよな……」

自分とクレハにかけていた強化魔法も解けてしまった。

情けないな……。

師匠がこんな姿を見たら何と言うだろうか。

間違いなく連れ戻され、訓練させられるだろうな。

まぁ、師匠がこの姿を見ているなんてことは勿論ないだろうが……失態は失態だ。帰ったら、反省点をノートにまとめよう。

そして一つ一つ、改善していかなければならない。

叱ってくれる存在がいないからこそ、自分で気をつけねば。

「ロイドさん、ありがとうございました。これ……」

その時だ。

空の瓶を手渡そうとしたクレハが突然倒れた。

それに気づいた俺は慌てて、クレハへと駆け寄る。

そして喉元に手を当てた。

「…………」

息はしている。

どうやら、意識を失っただけのようだ。

「やはり、無理をしていたのか……」

相当な無理をして、魔法を使ってくれていたのだろう。

倒れたクレハの手からそっと空の瓶を取り、収納魔法で亜空間へとしまう。

魔力が回復したためか、もしくはモンスター達を無事に森へと帰せたためか……クレハの顔色が少し良くなっている気がした。

「さてと……」

杖を使いながら、重い身体を立ち上がらせる。

っ、全身が痛い……

だが、いつまでもここで休んでいるわけにもいかない。

「イシュタルへと戻るとするか」

俺は限界と根をあげる体に鞭を打ち、クレハを背負い、イシュタルに向かい足を進めた。

「遅いわね……」

ユイが不安そうに森を見つめる。

ユイだけではない。

防衛戦に参加していた全ての人が不安そうに森を見つめていた。

十数分前。

イシュタル付近で暴れていたモンスターらが、まるで我に戻ったかのような動揺を見せたのち、森の奥へと引いていった……ユイやダッガスの話を聞いていたため、冒険者や騎士達は、すぐにそれがロイドのお陰であることを理解した。

そして作戦が成功したことも理解する。

冒険者や騎士は歓喜の声を上げた。

中には涙を流しながら喜ぶものや、抱き合うものもいた。

あれだけの絶望を前にしながらも奮闘し、その末に自分らはイシュタルを守りきったのだと。

しかし、数分が経過したにも関わらず、ロイドが森から出てくる様子がない。

よくない想像が頭を過ぎる。

「もしかしたら、ロイドは……」

冒険者の一人が諦めに塗れた顔で、そう呟いた。

その時だ。

「おい! アレ見ろよ!」

クロスが森の中を指差しながら叫ぶ。

目を凝らすとそこには、背中に銀髪の獣人を背負いながら、フラフラと歩くロイドの姿があった。

冒険者と騎士らから、再び歓喜の声が上がる。

「ロイド!」

ユイが走ってロイドに駆け寄った

そしてロイドに抱きつく。

「もう、心配したんだからね……」

「ユイ……すまない」

「えっ?」

ロイドはそう言うと、ほっとした様子で力なくユイに倒れかかった。

ロイドとクレハ、二人分の体重がユイにかかる。

クレハは痩せ細ってるため軽いとは言えども、ロイドはそれなりの筋肉があるので重いだろう。

しかし、さすがはSランク冒険者の資格を持つ剣士。

ユイは少し重そうな素振りこそ見せるも、簡単に二人分の重みを受け止める。

「ロイド? ねぇ、重いんだけど……って、ロイド? 聞いてるの?」

ユイがロイドに何度も語りかける。

しかし、返事がくる様子はない。

不思議に思ったユイは倒れかかるロイドの顔を見た。

「あぁ……なるほどね」

ユイはそう言うとロイドとクレハをそっと地面へ寝かせた。

後ろからは、異変に気がついたダッガスやシリカらが駆け寄ってくる。

「おい、ユイ。急にどうしたん……」

「しっー! ダッガス、静かにして」

ダッガスの必死の問いかけを、口の前で指を立てながらユイが遮る。

そしてユイはロイドの方へと視線を向けた。

また、それに続きダッガスらもロイドへと視線を向ける。そして、ほっと安堵し、胸を下ろした。

「かなり無茶したらしいわね。寝ちゃったみたい」

ユイたちの視線の先には、疲れ果てて眠るロイドの姿があった。