軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白魔導師、賭ける

俺はクレハを背負いながら、イシュタルを目指し走っていた。

横には並走する、ユイの姿がある。

「そろそろか……」

ある程度イシュタルに近づいた辺りで、探知魔法に大量のモンスターが引っ掛かった。

予想では数千匹ぐらいだと思っていたのたが、その数倍ほどの数のモンスターの気配がある。

「結構多いな……」

僅かにしたいに残留する魔力も込みで考えるのなら、モンスターの数は、だいたい三万ほどだろうか。

あの地下室に、大量のマナポーションが置いてあったことから、かなりの魔力を使い、モンスター達に魔法をかけていたことは分かっていたのだが……

流石に、ここまでとは思っていなかった。

おそらく、大量のマナポーションと黒い石を使うことでクレハの魔法の力を最大限まで引き出し、大量のモンスターを操っていたのだろう。

「厄介な石だな……」

今後も魔族があの石を使い、何かをしてくることも考えられる。

念のため砕いた後、黒い石の欠片は全て回収しておいた。

後で王国騎士にも渡し、その手のことに詳しい人に調べてもらった方がいいだろう。

って、そんなことを考えている場合じゃないな。

「それより……」

背負っているクレハの方を振り返る。

「どうだ? 魔法は使えそうか?」

「はい、先程数本のマナポーションをいただいたので」

確かに先程までに比べ、少し顔色も良くなった気がする。

驚いたことに、クレハの魔力量はかなりのものだった。

魔力量なら勇者パーティーのミイヤを越えているのではないだろうか。

だが、それでもこの数のモンスターを操ることは出来ないだろう。

魔力が足りなすぎる。

クレハ一人の魔力では不可能だと言える。

そこでだ。

俺はとある作戦を立てた。

これなら、モンスターたちをイシュタルから遠ざけることが可能なはずだ。

「クレハ、さっき伝えた作戦通りに頼む」

「わ、分かりました……」

クレハがこくりと頷く。

先ほどまで監禁されていたクレハには厳しい重労働になるだろうが、彼女の力に頼る他なかった。

さて、次は……

「そうだ、ユイ!」

俺は収納魔法から数本のマナポーションが入った鞄を取り出し、ユイへと渡した。

ユイは足を止め、その鞄を慌ててキャッチする。

「ねぇ……これは?」

「先に行ってくれ」

「えっ、でも……」

「頼む、時間がかかるかもしない……だから、先に行ってイシュタルを守っていてくれ」

俺の考えた作戦が成功したとしても、その前にイシュタルがやられれば意味がないからな。

ユイもそれを理解したのか、鞄をかけ、走る体勢になった。

「その……無理はしないでね」

ユイはそう言うと勢いよく駆け出した。

先程も言ったように、今回の作戦は、少し時間がかかる。

それに場合によってはユイ達の強化魔法を解かなければならない。相当な魔力が必要になる作戦だ。それに時間も掛かる。

だから、もしもの時のことを考え、ユイには戦力増強のためにダッガス達のもとへと向かわせることにしたのだ。

これで、俺とクレハだけとなってしまったわけだが……

「さてと……」

俺はごくりと唾を飲み込んだ。

自分がどれだけ危険な賭けをしているかは分かっている。

俺とクレハは、互いに非戦闘職。

モンスターと戦う術を持っていない。しかもクレハを背負っている今、俺の動きは大きく制限される。

最悪の場合、二人とも殺されてしまうかもしれない。

だが、これしかイシュタルを救う手段が思い浮かばなかった。多くを救うためにある程度の犠牲を許容するのであれば他にも手立てがないこともない。

しかし、犠牲なくして救う手段が目の前にある今、他の手段を使う気にはならなかった。

クレハもそれを知った上で、協力してくれている。

やはり、自身の魔法のせいで……と言う、責任感があったのだろう。

「それじゃクレハ、強化魔法をかけるぞ」

「はい……お願いします」