軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白魔導師、駆け抜ける(上)

クレハに魔法威力上昇と魔力消費量軽減をかける。

その後自分にも、魔法威力上昇と魔力消費量軽減、さらに身体強化と防御力上昇をかけた。

地面を力強く蹴り、一気に加速する。

「は、速い……」

俺の走りをみた、クレハがぽつりと呟いた。

自慢ではないが、身体はそこそこ鍛えているつもりだ。

毎日、筋トレもしている。師匠の教えの一つだ。魔法系だからといって、ボッーと突っ立っているようでは、格好の的になるだけ。それに魔法系は近接に弱いという、分かりきった弱点を弱点のままにしておくことほど馬鹿なことはないと。分かっているなら、対策しろと。

魔力が底を付けば終わりだしな。

だから、一応鍛えてはいるのだが、それでも普通の身体強化ではこのスピードは出せない。

だから今回は、俺が改良したオリジナルの身体強化をかけた。

自分専用に改良された、身体強化だ。

これならある程度のスピードも出せるし、なおかつ身体能力も上げられる。

その分、魔力の消費量が普通の身体強化に比べ何倍も多いため、使い勝手がいいとは言えないが……

今回ばかりはやむを得まい。

足である俺が終われば、クレハも終いだ。

「まだまだだな」

俺にはこれが限界だ。

どう頑張っても、何らかの欠点が出てしまう。

自分が情けない。

確かにこれなら、アレン達が「実力不足」だと言うのも頷ける。

「ユイ達のためにも、支援魔法の腕を磨かなければいけないな」

今度こそ、実力不足と言われないために……

「ロイドさん、見えてきましたよ」

クレハにそう言われ、森の方へと視線を向けた。

木々の隙間から大量のモンスターが見える。

そこでは一部のモンスターが噛みつきあったり、殴りあったりしていた。

様々なモンスターを無理やり操り作った群れだ。

こうなるのは当然だろう。

だが、今回の目的はモンスターの殲滅ではない。

と言うか、モンスターを殲滅なんてしたら、森の生態系が壊れてしまう。

まぁ、ハイウルフに関しては仕方ない。そう割り切ることにしているが。

もしなんらかの問題が出れば、それはここらを治めている貴族にお願いし、なんとかしてもらうとしよう。

そんなことを考えながらモンスターに接近していく。

よし、そろそろ指示を出を出すか。

「それじゃ、俺の言うモンスターを操って……」

クレハが俺のことを無言で睨みつける。

あぁ、そう言えば……

「すまなかった……言い直す。俺の言ったモンスターに語りかけてくれないか?」

「分かりました」

話を聞いたところ、クレハの魔法はモンスターを操るものではなく、本来はモンスターと心を通わせたり、契約し自分の使い魔にする魔法らしい。

また帝国では、モンスターに無理やり一方的な契約を押し付けることは、古くからの禁忌とされているそうだ。

尤も、今の帝国にそんな魔法を使えるのはクレハしかいないらしいが……

「禁忌か」

この話から察するに、クレハは帝国に住んでいたのだろう。

「どうかしましたか?」

クレハが首をかしげる。

「いや、何でもない。それより準備は出来たか?」

「はい、出来ました」

クレハの手元へと視線を向ける。

どうやら、クレハの魔法は杖を必要としないらしい。俺も、杖なしで魔法を使うことは出来るのだが、かなり威力や効果が下がってしまう。

しかし、クレハの魔法の場合は違い、杖の有無は関係ないそうだ。

「杖無しの魔法か」

クレハから詳しく話を聞けば、何かを得られるかもしれないが……

今はそんな場合ではないと、思考を切り替える。

今は我慢しよう。

「よし……行くぞ」

俺はそう言うとさらに加速し、モンスターの群れへと突っ込んだ。

瞬間、モンスター達の視線が俺とクレハへと集る。

「しっかり掴まれよ」

近くにいたモンスターが、俺目掛けて飛びかかる。

その攻撃をギリギリのところで上に飛び、かわした。

そのまま、木の上へと飛び乗る。

「さて……」

木の上から、地上のモンスターを見下ろす。

こちらを警戒し、唸り声を上げるモンスターもいれば、気にせずに他のモンスターと戦っているモンスターもいる。

まぁ、木の上にいる限り地上にいる、大半のモンスターの攻撃はとどかないだろう。

とは言え、巨大なモンスターや、木をへし折るようなモンスターは別だが……

それにさえ気を付ければ問題ない。

と言うわけで……

「まず、アレを何とかしないとな」

空にも地上ほどではないが、かなりの数のモンスターがいる。

木の上にいる俺とクレハは、空のモンスターからすれば格好の的となってしまうだろう。

それに地上のモンスターを対処している時に、攻撃されると厄介だ。

まず、空を飛ぶ奴等から対処しなければ……

「クレハ、いけるか?」

「はい。何回かに分ければいけると思います」

「そうか……それじゃ早速頼む」

「分かりました」

クレハはそう言うと目を瞑った。

そして魔法を発動する。

背中に掴まっているクレハの魔力が、物凄い勢いで消費されていくのが感じられた。

「魔力が足りなくなったら言ってくれ。マナポーションを……」

その時だ。

下から物凄いスピードで石が飛んできた。

「っ……」

視線を向けると、そこには緑色の身体をした大きなモンスターが何匹かいた。

「トロールか……」

トロール。ごつごつとした肌の巨人のようなモンスターで、倍ほどの背丈があル。好戦的な性格で、道具を扱うことで有名なモンスターだ。

怪力の持ち主で、攻撃をもろに食らえば無事ではいられないだろう。

「あの、大丈夫ですか?」

クレハが心配そうな顔で訪ねてくる。

「あぁ……問題ない」

クレハを背負っている分動きにくいが、この程度ならかわせる。

何の問題もない。

「だから、クレハはそっちに集中してくれ」

「わ、分かりました……」

俺は、木から木へと飛び移りながら下からの攻撃をかわしていく。

不幸中の幸いは、見える範囲にトロール以外で俺に攻撃が届きそうなモンスターが地上にはいないことだろうか。

飛んでくる石をかわすことはそこまで難しくない。

「これなら、師匠の魔法をかわす訓練の方が断然難しかったな」

師匠との訓練を思い出し、苦笑いを浮かべた。

あんなのに比べれば、これはまだまだ優しい方だ。

「まさか、師匠との訓練がこんなところで役立つとはな……」

その後も俺は、トロールの投石をかわしていった。