軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

イシュタル防衛②

「簡単に言えば、王国騎士と冒険者で時間稼ぎをして欲しい」

あまりにも簡単で短い作戦に、戸惑いの声が上がる。

「それは、どういう意味でしょうか?」

騎士の一人が尋ねる。

リナもそう言った質問が来るのは分かっていたようで、迷うことなくその問いに答えた。

「どうせ、まともに戦っても勝てる数ではない。それは皆、分かっているはずだ」

厳しい現実を、言葉にして突きつけられた冒険者と騎士がうつむく。

皆、理解しているのだ。

自分達がいくら束になっても三万ものモンスターに勝てるはずがないことを……

足止めすら敵わないだろう。

「じゃぁ、時間稼ぎをすれば、そのロイドと言う奴がなんとかしてくれるのか?」

冒険者の一人が、声を震わせながらリナに問いかける。

「すまない。根拠はない……」

「はぁ? なら、俺達は何のために」

「だが彼は、あの勇者を強者へと変えることが出来た男だ。あの勇者パーティーをたった一人で支えていた男だ……事実、彼が抜けた瞬間に勇者パーティーは崩壊し始めた」

リナの表情が暗くなる。

勇者パーティーが崩壊した原因には、自分も含まれていると自負しているからだろう。

そんなリナの言葉は意外にも、多くの人の心に響いた。

やはり、あんな勇者を見たからこそだろう。

あれを、あのパーティーを一人で支えていたと言うのが事実であれば、大したものである。

だが、

「俺たちはその、ロイドとやらを信じろというのか?」

リナが何と言おうが、明確な証拠がないことに代わりはない。

勇者のことだって、百パーセントロイドのお陰だとは言えないのだ。

リナだって、そんなことは当然分かっていた。

「いや、これは私が勝手に期待しているだけだ。私には彼に何かを頼む資格すらない。それに私は彼に、あんな酷いことを言ってしまったのだからな……」

リナとしては複雑な気持ちだった。

なんせ、ロイドを勝手に期待の的にした場合、逆にロイドが来なかった、もしくは何も出来なかった時に、ロイドは周囲から批判を受けることになってしまうからだ。

とは言え、この状況で彼以上に、皆を鼓舞するだけの説得力を持つ人物は思い浮かばなかったのも事実。

もし、ここで彼らに期待を持たせなければ、冒険者達はそうそうにこの街を守ることを諦めてしまうだろう。

そうなれば街の人たちに被害が及んでしまう。

特に子供や老人は逃げることが出来ず、モンスターに殺されてしまうかもしれない。

リナとしては、それだけは何としても避けたかったのだ。

「私は期待するだけの価値のある男だと思う。でも、それはあくまでも私がそう思っているだけであり、彼をどう思うかはそれぞれだろう」

あくまでも自分の意見だと言うことを強調しておく。

「つまりリナ様は、ロイドと言う男に期待をするのは勝手だが、何があっても責めないで欲しい。と言うことでしょうか?」

騎士の言葉にリナが無言で頷く。

「あぁ、もし責めるなら、勝手に彼を期待の的にした私が責められるべきだろう」

それを聞いた冒険者や騎士が顔を見合わせる。

「そのロイドって奴は、期待出来る奴なんだよな?」

「うん、あのリナさんがそう言うなら……」

「あぁ、何となくだが言いたいことも分かるしな。あの勇者を一人で支えてたんだろ?」

不安もあるだろうが、どちらかと言えば肯定的な声が上がる。

やはりこれはリナだからこそ出来たことだろう。

リナは勇者パーティーの中では珍しく、街の人と積極的に関わっていた。

ゴミ掃除のボランティアなんかにも参加したこともあるほどだ。

実はリナの評判が勇者よりも良かったりする。勇者パーティーの一員としての強さと、親近感を同居させる存在として。

「そう言えば巡回中に、リナ様が迷子の女の子を連れ、親を探していたのを見たことあるぞ」

「あぁ、俺が見た時は老人の荷物を持ってたな……」

冒険者ギルド内がざわざわとした雰囲気になる。

その中に、否定的な言葉はあまり含まれていない。

「私は、リナさんを信じてみようと思う」

「お、俺も……街には大切な人がいるし」

「我々、騎士達もリナ様の言う男を信じてみようと思う」

理由は様々だが、皆賛成らしい。

不安の声は聞こえても、反対の声が聞こえてくることはなかった。

「皆……ありがとう」

リナは何度も感謝の言葉を述べながら、深く頭を下げた。

「それでリナ様。作戦はどうします?」

騎士が頭を下げ続けるリナに尋ねる。

それを聞いたリナは、申し訳なさそうな顔をしながら頭を上げた。

「すまない。そう言うのはからっきしで……」

「なら、わしが作戦をたててやろうか?」

ウルゴが冒険者とリナの間に立つ。

「頼んでもいいか?」

「うむ……そのロイドという男が帰ってくるまでの時間を稼げばいいのだろう?」

ウルゴはそう言うと、部屋から周辺の地図を持ってきた。

そして冒険者と騎士に見えるように地図を広げ、ペンで印をつけながら作戦を説明していった。

「まずはこのラインにだな……」