軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

全員の戦い

アルキスの攻撃が止まらなかった。

データの剣が三方向から同時に襲いかかった。トワが一本を弾き、ゼクスが一本を受け流し、三本目を宵の暗闇が飲み込んだ。だが、続く魔法攻撃を避けきれなかった。炎がトワの左腕を掠った。

【トワ HP:8】

「タマキ!」

「回復薬、飲んでください!」

タマキが回復薬を投げた。トワが受け取って飲む。HPが360に戻ったが、アルキスの次の攻撃がすぐに来る。回復しても削られる。削られて回復して、の繰り返しでは、薬が尽きた時に終わる。そして掠っただけでこのダメージ。直撃すれば、Lv1のトワでは即ダウンだ。

「回復薬の残り、十二本です!」タマキが声を落とした。

十二本。十二回しか回復できない。

竪穴の下から振動が伝わってきた。柱の壁が揺れている。頂部の戦闘の衝撃が、下に伝播している。

竪穴の底で、蓮が天井を見上げていた。百二十メートル上方で、光が明滅している。戦闘の光だ。

「激しいな。トワが押されてる」

「援護に行くべきか」レクトが剣を握った。

「階段は一列縦隊でしか上れない。大人数で行っても、狭い部屋に入れるのは限られる」

ハルが見聞録を全開にしていた。頂部からの微弱な信号を拾っている。

「師匠のHP、削られてます。回復薬で戻してますが、消耗戦になってます」

ミコトのカメラが頂部の方を向いていた。直接映すことはできないが、光の揺れと振動から戦況を伝えている。

『視聴者の皆さん。トワさんが今、アルキスと戦っています。上からの振動が伝わっています。厳しい戦いです。トワさんのHPは360。アルキスのATKは測定不能。一撃で致命傷になりかねない差です』

配信のコメントが流れた。

──「トワ頑張れ!!」

──「何かできることないのか!? 俺たち、ここにいるだけで……」

──「灯歩の光って、トワに送れないの?」

──「俺たちの灯歩をトワに集中できたら……!」

ハルの手帳が光った。見聞録に新しいデータが流れ込んできた。

【────── 見聞録:新規情報 ──────】

灯歩の光は、プレイヤー間で共有可能です。

柱の構造を通じて、灯歩のエネルギーを

特定のプレイヤーに集中させることができます。

特定のプレイヤーの方向を向いてください。

条件:全参加プレイヤーの同意

効果:対象プレイヤーのATK/DEFを

参加者数に応じて強化

【──────────────────────────】

「灯歩の光の共有……!」ハルが叫んだ。「師匠に灯歩を集められます。柱を通じて。全プレイヤーが同意すれば」

「どうやって同意を取るんだ!?」蓮が聞いた。

「配信です!」ミコトが振り返った。「今、五百万人が見てます! BCOにログインしている全プレイヤーに呼びかけられます!!」

蓮が頷いた。

「やってくれ、ミコト!」

ミコトがカメラに向き直った。

『視聴者の皆さん。お願いがあります。今すぐ、灯歩の光をトワさんに送ってください! 方法は簡単です。自分の『灯歩』を、トワさんに向けるだけです。あなたの光が、トワさんの力になります。三十一万人の光が集まれば、測定不能の相手にも届きます。お願いします。あなたの一歩を、トワさんに!』

フォーラムに一斉にスレッドが立った。

──────

【全プレイヤー】灯歩をトワに送れ!!

──────

──「送った。俺の三千時間分の灯歩、全部トワに行け!」

──「わたしも。Lv20の初心者だけど、送る!!」

──「引退復帰組だけど、さっき灯した灯歩を全部送るぞ!」

──「海外サーバーからも送れるのか!?」

──「送れる。灯歩は全プレイヤー共通だ!」

──「三十一万人の光を一人に集中……とんでもねえな」

──────

頂部。

トワの体が光り始めた。

足元から、金色の光が昇ってきた。柱を通じて、下から光が流れ込んでくる。一人分、二人分、百人分、千人分。光の量が指数関数的に増えていく。

「何だ、これは」アルキスが動きを止めた。

見聞録に表示が出た。

【────── 灯歩の光:集中モード ──────】

【312,847人の灯歩がトワに集中しています】

【ATK補正:3,814 → 集中補正後ATK:測定不能】

【DEF補正:2,691 → 集中補正後DEF:測定不能】

【──────────────────────────】

「三十一万人の灯歩が、全部俺に来ている」

トワの体が金色に輝いていた。一万時間の自分の灯歩に、三十一万人分の灯歩が加わった。ATKが測定不能になった。アルキスと同じ領域に到達した。

「全プレイヤーの灯歩を集中させたのか」アルキスの声に、初めて驚きが混じった。「だが、灯歩はプレイヤーのデータだ。わたしが持っているデータと同じものだ。量で対抗するつもりか」

「同じものじゃない。アルキスが持っているのは集めたデータだ。俺に来ているのは、全員が自分で灯した光だ。同じデータでも、質が違う。宵が言っていた。本物は写しに勝つ」

トワが旅立ちの剣を構えた。金色の光が剣に宿った。三十一万人の足跡が、一本の剣に集まっている。

「アルキス。これが、歩いた者たちの力だ」

トワが踏み込んだ。今度はアルキスが弾かれなかった。金色の剣とデータの剣がぶつかり、互角の衝撃が頂部の部屋を揺らした。

「互角、か」アルキスが押し返しながら言った。「わたしの80%と、お前たちの100%。残りの20%分、お前たちが上回っている」

「20%の差だ。だが、その20%は、アルキスには埋められない。アルキスが持っていないのは、自分の足跡だからだ」

二人の剣が交差した。金色の光とデータの白い光が、頂部の空間を染め分けた。

最終決戦が、本当の始まりを迎えた。