軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

[九十パーセント]

踏破作戦二十四日目。

【エルシオン踏破率:90.2%】

「なんとか無事、九十を超えたな」

調和の里。夜。全チームが集合して、データを統合している。

各エリアのトワの個人踏破率。各チームが先行調査したルートを、トワが後追いで歩いて埋めた結果。

各エリアの踏破状況。

闇のエリア:100%(ルーナが八日目に完了。調査データが完璧で、トワは最短ルートを歩くだけで済んだ)

水のエリア:96%(ダリオが鯨エスコートで深層のルートを開拓。トワも同じ方法で潜水して踏破)

風のエリア:94%(ハルチームの調査で隠し洞窟の場所が全て判明済み。トワが順番に回った)

火のエリア:88%(溶岩帯の奥地のルートが未調査。ゼクスとアストレアが現在調査中)

土のエリア:91%(ガロンの案内で山脈内部の近道を使い、トワが効率的に歩いた)

光のエリア:85%(氷河の下のエリアが広大。セレスが月光で溶かした部分をトワが歩いているが追いついていない)

虚空のエリア:78%(全属性解析が使いにくい。先行調査も難しく、トワが自力で歩いている)

「ボトルネックは、光と虚空だ。他のエリアは、あと数日で100%に届く」

「セレスちゃんが頑張ってるけど、氷河がまだ残ってるんですよね」タマキが心配そうだ。

「セレスに確認する」

セレスにチャットを送った。光のエリアにいるセレスは今日も氷河を溶かしているはずだ。

トワ:「セレス。氷河の残りはどのくらいだ」

返事が遅い。普段はすぐに返してくるのに。

一分後。

セレス:「あと、すこし」

「セレスの返事が遅かった……疲れているな」

「セレスちゃん、十五日間ほぼ毎日月光を出し続けてますよね。精霊でも疲れますよ」ハルが言った。

「明日、光のエリアに合流する。セレスを休ませて、俺が残りを足で踏破する」

「師匠が行くんですか。虚空のエリアはどうするんですか?」

「虚空は78%まで来ている。残りは、平原の外縁部だけだ。ルーナに頼む」

「ルーナちゃんに、虚空エリアを? 闇じゃないですよ」

「虚空のエリアは属性がない。闇も光もない。だが――影はある。物体がある限り影は生まれる。ルーナは影を通路にして動けるから、虚空でも索敵できる」

ルーナに確認した。

「ルーナ。虚空のエリアの残り22%を頼めるか」

「頼まれた。やる」

「闇のエリアほど、速くは動けないだろうが」

「速くは動けない。でも確実に歩ける。影がゼロでなければ、わたしは動ける。虚空のエリアにも岩の影や地面の凹凸の影がある。薄いけど、ある」

「頼む」

「任せて。セレスの代わりにトワが光に行くなら、わたしが虚空を引き受ける。おそろいの力の、逆バージョン」

「逆バージョン?」

「セレスが休む時は、わたしが働く。わたしが休む時は、セレスが働く。月と夜の交代制」

「交代制か……いい仕組みだ」

【エルシオンの心拍:現在31.4秒周期】

三十一秒台。三十秒のラインが近づいている。表層に影響が出始める 閾値(しきいち) だ。

「あと6日で100%に届けば間に合う。全チーム、最後の追い込みだ」

全員がうなずいた。

「ルーナ。一つ聞いていいか」

「何?」

「怖くないか。【大陸獣】が目覚めるかもしれない状況で」

「怖い……でも、トワが歩いてるから、わたしも歩く。トワが止まらない限り、わたしも止まらない」

「止まらない。約束する」

「知ってる。トワは約束を破らない。これまでに、一度も」

夜のエルシオン。七色のオーロラが空を流れている。だがオーロラの揺れ方が、以前よりわずかに速い。大陸の心拍に連動している。

手の中の 臍(へそ) の結晶が脈打っている。三十一・四秒。

あと少し。あと少しで、全てのピースが揃う。