作品タイトル不明
[五十日]
調和の里を出て、パーティ全員と話した。
「エルシオンの踏破率を、100%にする。それが、【心臓】に到達するための条件だ」
「現在の踏破率が15%ですよね。残り85%を……」ハルが計算した。「アストラムでは、踏破率を0%から58%にするのに、数ヶ月かかりました」
「エルシオンの方が面積は広い。だが、全属性解析がある。面でスキャンできるから、点で塗っていたアストラムよりも効率は高い」
「数倍でも、85%は膨大ですよ」
「膨大だが、やる以外の選択肢がない。心拍が加速している。どれくらいの猶予があるかわからないが、のんびり歩いている場合ではない」
「急ぎますか、師匠」
「急がない。だが、止まらない。毎日確実に踏破率を上げる。目標は一日あたり1.5%から2%。五十日で、100%に到達する計算だ」
「五十日……二ヶ月弱か」ゼクスが腕を組んだ。
「全員で分担する。七つのエリアを手分けして同時に踏破する」
「分かれるんですか。パーティを」タマキが不安そうだった。
「完全には分かれない。二人一組で各エリアを担当し、危険な場所は全員で合流する」
「でも、分担してもマップ自体は、実際に歩いてないと埋められませんよ」
「それは分かっている、タマキ。でも、分担させることで、どこに何があるか、各々がマップを埋められる。隠しダンジョンや、隠し通路もあるだろう。全員で一つのマップを探索するより、それぞれ手分けして探した方が、遥かに効率がいい。最後に合流して、情報を共有するんだ」
タマキたちはトワの意見に納得し、早速担当を決めた。
火のエリア:ゼクス+アストレア(ゼクスの影が火の光を補完し、アストレアの聖属性が火と相性が良い)
水のエリア:ダリオ+ダリオの航海士チーム(水中探索は航海士が最強)
風のエリア:ハル+旅人の集い有志(ハルの導師スキルと旅人のマッピング能力)
土のエリア:トワ+タマキ(全属性解析の主力+素材回収の薬師)
光のエリア:セレス主導で月光スキャン(光のエリアではセレスの力が最大化する)
闇のエリア:ルーナ主導で夜の索敵(暗所は夜に近い環境のため、ルーナの力が増す)
虚空のエリア:全員合流(危険度が最も高い)
「セレスとルーナが、それぞれ一つのエリアを担当するのか。精霊だけで、踏破できるのか……?」
「できる。セレスの月光の目とルーナの影の記憶は、見聞録と同等以上のスキャン能力がある。踏破率の計上に必要なのは『そのエリアの全ての地形データを取得すること』だ。精霊のスキャンでも、データは取得できる」
「セレス、ひとりでだいじょうぶかな」セレスが自分に聞いている。
「分からない。セレスがやれるのなら、頼みたいところだ」
「たぶん……できる。ひとりは、さびしいけど。でも、トワのために。やる」
「一人じゃない、光のエリアにはNPCの集落がある。煌陽の遺跡の近くだ。そこを拠点にして、周囲を月光でスキャンしていけばいい」
「Nひとがいるなら、さびしくない。おやつも、もらえるかも」
「おやつの調達まで計画に入れるな」
「おやつはけーかく。じゅうよー」
ルーナも心配されていた。
「ルーナちゃん。闇のエリア、一人で大丈夫?」タマキが聞いた。
「大丈夫。闇のエリアは暗くて夜に近い環境だから、わたしにとっては動きやすい場所。影を通路にすれば、どこでも自由に移動できる。パーティでいる時より速く動ける」
「それなら安心だ。行ってこい。困ったら呼べ」
「呼ぶ。でもたぶん、呼ばない。三日で闇のエリアの踏破率を50%にする」
「三日で50%? 大きく出たな」ゼクスが目を細めた。
「暗い場所はわたしの夜に一番近い環境。夜の精霊として、誰よりも速く歩ける」
全員の担当が決まった。
「明日から開始する。今夜は全員で食事をして、明日の朝、散開だ」
「最後の晩餐みたいですね」ハルが笑った。
「最後じゃない。毎晩、調和の里に戻って合流する。データを共有し、翌日の計画を立て直す。チームが分かれても、情報は共有する」
「毎晩帰ってくるなら、安心です」
「帰ってくる。全員、毎日帰ってこい。報告のないメンバーがいたら、全員で探しに行く」
「はい!」
夕食。ガロンの石餅と、タマキの虹鯉スープと、エリーから転送で届いたパン。
セレスがパンを齧りながら言った。
「トワ。あした、はなれる」
「離れるが、一時的だ。俺たちは毎晩会える」
「まいばん。やくそく」
「約束だ」
「セレス、がんばる。ひかりのエリア、ぜんぶあるく」
「全部歩け。お前ならできる」
「できる。だって、せいれーしゅのちょーてんだから。せきひにかいてあった」
「石碑の序列を使うな。その理論だと、俺たち人間が一番低い扱うになる」
「つかう。せきひはべんり」
「なぜなら、セレスはえらいから……か?」
「トワ、わかってきた。セレスがつぎにいうことば」
「そこそこ長い付き合いだからな」
「ん、ずっといるよ。トワのそばに」
たき火を囲いながら、トワたちは笑顔で夕食を迎えた。