軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

[夜行列車]

エルシオン探索が続く。踏破率10%を超えた。

大陸の全体像が少しずつ見えてきた。七つのエリアは大湖アルケオンを中心に放射状に広がっている。各エリアの間には──道がある。古代の街道。石畳の道が大陸を縦横に走っている。

だが歩くだけでは広大すぎる。アストラムには回廊の転送があったが、エルシオンには──

「長老、エルシオンに転送網はないのか」

「転送はない。──だが、別のものがある」

ルトヴィアが里の外れに案内した。線路があった。石造りのレール。その上に──車両。虹色の結晶で構成された──列車。

「列車──!?」

【エルシオン大環状鉄道── 七色列車(なないろれっしゃ) 】

【大湖アルケオンの周囲を一周する鉄道です。七つのエリアの主要集落を結びます】

【運行間隔:ゲーム内時間で6時間ごと。一周の所要時間:3時間】

「BCOに鉄道がある──!」

「エルシオンの古代文明が作った交通インフラだ。獣王が解放されて属性が戻ったことで、停止していた鉄道が再起動したのだ」

「俺たちが獣王を解放したから、鉄道が動くようになったのか」

「そうだ。──乗るか?」

「乗る」

全員が列車に乗り込んだ。車内は──広い。虹色の窓。座席は七色の布張り。天井に星の模様。

「すごい──電車の中が虹色です!」タマキが珍しくはしゃいでいる。

「電車じゃないぞ、七色列車だ」

「名前は電車じゃなくても、システムは電車ですよね。乗って、着いたら降りる」

「駅のシステムもある。降りたいエリアで降車ボタンを押す」

列車が動き出した。虹色の結晶が光を帯びて、レールの上を滑るように走り始める。音が静か。エンジン音ではなく──調和の鈴に似た、七音の鈴の音。

「走行音が鈴だなんて……きれいですね」

「七属性のエネルギーで走っている。走行音は属性の共鳴音だ」

窓の外に景色が流れていく。草原。森。山脈。氷原。砂漠。湖。七つのエリアが次々と車窓に映る。

セレスが窓に張り付いていた。

「トワ、けしきがうごくよ。はやい──!」

「時速……見聞録で計測、約八十キロ。現実の特急列車くらいだな」

「とっきゅう。セレス、でんしゃのったことない」

「精霊が電車に乗る概念がなかったからな」

「でんしゃ、すき。けしきがうごくのたのしー」

ルーナが車内の影に広がっていた。列車の中は窓からの光で影が少ないが、座席の下に影がある。座席の下から声が出ている。

「列車──揺れないんだね。BCOの乗り物は船しか知らなかったけど、列車の方が快適」

「海の上は落ち着かないとお前は言っていたからな。列車は影が安定している」

「安定してる。──座席の下の影、心地いい」

「座席の下にいるのか」

「いる。あったかいし、暗いし、いい場所」

「精霊が座席の下か──お前たちの居場所の選び方は独特だな」

ゼクスが窓際の席で──寝ていた。

「ゼクスが寝ている」

「暗殺者は移動中に休む。戦闘時に全力を出すために」

「プロだな」

「プロだ。──起こすな」

アストレアが聖剣を膝の上に置いて、窓の外を見ていた。

「エルシオンは……広いですね。全部のエリアが一つの列車で繋がっている」

「七属性が一つの鉄道で結ばれている。調和の象徴だ」

「聖騎士として、この調和を守りたいと思います」

「矜持か」

「はい。──あ、今回は自分で言えました」

「言えたな。誰にも先を越されなかった」

「嬉しいです、久しぶりに自分で……!」

タマキが車内販売のNPCから、何かを買ってきた。

「トワさん。車内販売がありました。──七色団子です」

串に刺さった七色の団子。七つの団子がそれぞれ違う色をしている。赤、青、緑、茶、金、紫、透明。七属性の色。

「見た目がきれいだな」

「食べてみてください。──全部味が違います」

食べた。赤は辛い。青は冷たい。緑は爽やか。茶は苦い。金は甘い。紫は酸っぱい。透明は──味がない。

「透明が──味がない。虚空属性か」

「虚空は何もないですからね。味もないんです」

「味がない団子に意味はあるのか」

「あります。七つ全部食べると──」

【七色団子を完食しました! 全属性耐性+3%(24時間)】

「最後の一つを食べないとバフが付かない。味がなくても食べる意味がある」

「虚空の団子。何もないのに意味がある。──BCOの設計者、哲学的だな」

セレスが団子を見ていた。

「トワ。セレスもたべたい」

「どれが食べたい」

「きんいろ。あまいの」

「お前は甘いものしか食べないのか」

「あまいものがいちばん。──にがいのと、すっぱいのと、からいのは、いや」

「七つのうち四つが嫌なのか。好き嫌いが多いな」

「すききらいじゃない。せーれーのみかく」

「精霊の味覚で甘いものだけ選ぶのか」

「うん。せーれーは、あまいものでちからがでる。にがいものでは、でない」

「科学的根拠は?」

「ない。きもち」

「気持ちか」

「きもちはだいじ」

列車は大陸を走り続けている。三時間で一周。七つのエリアを全て通る。

ハルが車窓の景色を全てスクリーンショットに収めていた。

「師匠。この列車の車窓風景、フォーラムに──」

「好きにしろ」

「ありがとうございます──! 『七色列車の旅byハル』を書きます──!」

「お前の記事のタイトル、全部『byハル』がついてるな」

「ブランドです。導師ブランド」

「ブランドか。……いつの間にそんなものを」

「師匠が育てたんですよ。わたしを」

「育てた覚えはないぞ」

「育ててます。──わたしが今ここにいるのは、師匠が歩いた道を追いかけたからです」

「……そうか」

「そうです。──だから、師匠の旅を記録するのは、わたしの仕事です。導師の、一番大事な仕事」

列車が次の駅に着いた。水のエリアの駅。大湖アルケオンの湖岸。

【水光駅に到着しました。降りますか?】

「降りない。──一周する。今日は車窓を楽しむ日だ」

「師匠が『楽しむ』って言いました──! 記録します──!」

「記録するな」

「します──!」

今日は全員で列車の景色を楽しんだ。