軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

[星鋼の装備]

ガルドに星鋼の原石を送った。回廊の転送で聖都ルクスへ。鍛冶工房。

「ガルド。星鋼を持ってきた。パーティ全員分のアクセサリを作ってほしい」

ガルドが原石を手に取った。光に透かす。七色の光が原石の中で光っている。

「これが──星鋼か。虚晶を精製した時も驚いたが……これは、その上を行く素材だ」

「打てるか?」

「打てる。──だが、一つ問題がある。星鋼は七属性を含んでいる。鍛冶師一人で七属性を制御して加工するのは……俺の腕でも難しい」

「どうすればいい?」

「七属性のうち、一つを固定する触媒がいる。──お前のパーティの精霊。月の精霊と夜の精霊に、加工中に属性を安定させてもらえれば、俺が残りを制御できる」

「セレスとルーナに、手伝わせるのか」

「精霊の力を触媒にした鍛冶。──俺も初めてだが、理論的には可能だ」

セレスが肩の上で胸を張った。

「セレス、てつだう。──かじし、やったことないけど」

「お前は月光を出すだけでいい。制御は俺がやる」ガルドが言った。

「ルーナも」影の中から声が出た。「夜の力で、安定させる」

ガルドが工房の炉に火を入れた。星鋼の原石を炉に投じる。七色の金属が溶けていく。

セレスが月光を炉に注ぎ込んだ。銀色の光が溶けた星鋼に混ざる。ルーナが影から冷気を送り込んだ。夜の力が金属の温度を安定させる。

ガルドが金槌を振るった。一撃ごとに火花が散る。七色の火花。

「美しい──」アストレアが見入っていた。

「見惚れるな。金槌が飛んでくるぞ」ゼクスが注意した。

三十分の加工。ガルドの額に汗が浮かんでいる。精霊の力を制御しながらの鍛冶は、通常の十倍の集中力がいるらしい。

「──できた」

炉から取り出された七つのアクセサリ。星鋼のリング。七色に輝く小さなリング。全員分。

【星鋼のリング×7を入手しました】

【効果:全属性耐性+8% 見聞録のスキャン精度+5% HP自動回復(微小)】

「全属性耐性+8%。──虚晶のペンダントの全属性耐性+10%に近い。しかも、HP自動回復がついているぞ」

「自動回復──!? わたしの回復薬の消費が減るってことですか!?」タマキが喜んだ。

「お前の薬の消費を減らすためのアクセサリではないが──結果的にそうなるな」

全員がリングを装備した。七色の光が綺麗だった。

「ガルド。ありがとう」

「礼はいらん。──鍛冶師として、星鋼を打てたことが報酬だ。千年前の設計図を再現した虚晶に続いて、新素材の星鋼。俺の腕が……まだ伸びている。それが嬉しいんだ」

「お前も成長しているんだな」

「当然だ。旅人が歩き続けるように、鍛冶師も打ち続ける」

セレスはぐったりとしていた。

「つかれた──」

「お前がいなければ星鋼は加工できなかった。──偉いぞ、今日は」

「えらい。……ごほうびは?」

「エリーのパン」

「とくだい」

「特大で」

「ルーナにも」

「ルーナにも」

ルーナが影の中から手を出した。

「わたしもつかれた。──でも、楽しかった。鍛冶の手伝い、初めて」

「第二位階の精霊が鍛冶の触媒になるのも初めてだろうな」

「たぶん。でも、ガルドさんの金槌の音、好き。リズミカルで。影の中で聞いてると、眠くなる」

「眠るな。鍛冶場で」

「ねむい──ガルドさんのかなづちが、こもりうた──」

「子守唄じゃあないぞ」ガルドが苦笑した。「だが、そう言われるのは悪い気はしない」

聖都を後にした。星鋼のリングが全員の指で七色に光っている。パーティ全体の戦力が底上げされた。

回廊の転送でエルシオンに戻る。調和の里。ルトヴィアが広場で水晶を見ている。七色が全て均等に輝いている。完全な調和。

「旅人──エルシオンは平和だ。お前たちのおかげでな」

「この平和は、長く続くか?」

「わからぬ。──だが、七体の獣王が戻った今、そう簡単に崩れはせんだろうて」

「なら、俺たちは歩こう。まだ踏破率が低い。この大陸を全部見るまで、帰れない」

「全部見る──か。広いぞ、エルシオンは」

「広い方がいい。──旅人には」

ルトヴィアが笑った。

「お前のような旅人は初めてだ。──いや、百年前にも一人いたか。あの長老も──若い頃は、お前のような目をしていた」

「前任の長老か」

「ああ──あの者も、世界の全てを見たいと言って、大湖の底に潜った。そして──戻ってこなかった」

「俺は戻ってくる。──いつも帰ってきた。一度も帰らなかったことはない」

「信じよう。──よい旅を、トワ」

「ああ。──よい旅を」

エルシオンの空に虹がかかっている。七色。完全な調和の色。

踏破率は──まだ5%にも達していない。九十五パーセントの未知が待っている。

セレスがエリーの特大パンを齧りながら、肩の上で言った。

「トワ。あるこう」

「歩く」

「どこまで?」

「どこまでも」

「えへへ……うん、あるく」

歩き始めた。虹の下を。七人と精霊二人と虫一匹。

旅は──まだまだ終わらない。