作品タイトル不明
〈太陽の守護者〉
太陽の祭壇。最深部。
広い空間。天井がない。──いや、天井の代わりに、巨大なレンズがある。砂漠の太陽光を集めて、部屋の中央に光の柱を作っている。
光の柱の中に──人型のモンスターが浮かんでいた。
金色の鎧。金色の剣。金色の盾。全身が光で構成された騎士。ただし──高さ十五メートル。大巨人。
【太陽の守護者 Lv94 HP:380,000 属性:火+光+虚晶】
「HP380,000。──祭壇の中では、過去最高だな」
「属性が三つ。火と光と虚晶。聖属性含め、属性攻撃が極めて通りにくい」
「わたしの聖剣が──光属性に、相殺される?」アストレアが顔をしかめた。
「同系統だからな。聖属性と光系の攻撃は効果が薄い。──虚晶コーティングの方が効く」
「コーティング頼みになりますね」
「ゼクス。影が使えない、正面からの戦闘になるが」
「やるしかないだろう。影がなくても暗殺者は戦える」
【残り時間:7分51秒】
「七分五十一秒で380,000を削る。一秒あたり──約800ダメージ。全員の火力を合算すれば届く。だが、ミスは許されないだろう」
「師匠……弱点は」
見聞録でスキャン。守護者の構造。光の身体の中に──核がある。だが核が光に包まれていて、位置が安定しない。月の守護者と同じで、核が移動する。
「核が動く。予測して当てるしかない。──パターンを読む。全員、攻撃は俺の合図で」
守護者が動いた。金色の剣を振り上げる。
「行くぞ――各自、散開!」
剣が振り下ろされた。床が砕けた。衝撃波が放射状に広がる。
「この衝撃波……当たったら即死だな。──避け続けるしかない」
トワが見聞録で守護者の行動パターンを解析した。剣の振り下ろし。横薙ぎ。突き。盾での押し。四パターン。──そして光のビーム。
「ビームが来る。──全員、柱の影に隠れろ!」
光のビームが部屋を横切った。壁が溶けた。
「壁が……溶けた!?」
「当たったらHPとか関係なく消滅しますよね、あれ」タマキが引きつった笑いを浮かべた。
「消滅する。──が、ビームの後に三秒の硬直がある。核が露出する」
ビームが止まった。守護者がよろめく。胸の光が揺らいで──核が見えた。赤い結晶。太陽の光を凝縮した核。
「今──!」
六人が飛び出した。
トワの弓。核の中心を射抜く。
【クリティカルダメージ:14,600】
ゼクスの短剣。核の表面を連続で切り裂く。
【弱点ダメージ:6,200、7,100】
アストレアの聖剣。虚晶コーティングの部分で核を突き刺す。
【虚晶属性ダメージ:8,400】
セレスの月光。──太陽の守護者に月光を当てる。太陽に月。
「セレスのつきは、たいよーのひかりをはんしゃしてかがや。だから、たいよーのなかみが、みえる」
月光が守護者の光の身体を透過した。太陽の光が月光で中和されて、核の位置が、常時見えるようになった。
【精霊スキル発動】
【セレスティアの月光解析!】
【効果:太陽の守護者の光属性装甲を月光で透過。核の位置を常時可視化します】
【パーティ全員の対守護者命中率が上昇しました】
「命中率上昇バフ……!?」
「月が太陽を照らして、中身を暴くのか――セレス、ナイスだ!」
「えへへ。セレス、やくにたった?」
「立った。最高に立った」
「じゃあ、おやつ」
「後で」
「いまがいい」
「後で!」
核の位置が常時見えるようになったことで、全員の命中率が上がった。三秒の硬直を待たなくても核を狙える。
【残り時間:4分32秒】
HP380,000が──半分を切った。170,000。
守護者が咆哮した。光が爆発的に強まる。
【──太陽の守護者のHPが50%を下回りました】
【警告:形態変化を検知】
【ATK 1.5倍、全身炎上状態】
【炎上フィールド展開──近接攻撃時に接触ダメージが発生します】
【接触ダメージ:毎秒240】
【残り時間:3分48秒】
「全身が炎──! 近接攻撃が通らない!」
「近づくだけでダメージを受ける。──遠距離で削るしかない」
遠距離攻撃ができるのは、トワの弓とセレスの月光だけ。アストレアとゼクスは近接型だ。
「タマキ、冷却薬は!?」
「ないです! 砂漠用の薬に冷却系は入れてません!」
「ないか──!」
「でも、虚花のスープの素材ならあります。虚花は全属性に中立。炎を中和できるかもしれません!」
「分かった、やってみてくれ!」
「三十秒だけください──!」
タマキが走りながら調合を始めた。砂漠のダンジョンの床の上で。走って。避けて。調合して。
【タマキが戦闘中に即席調合を実行──】
【残り時間:3分48秒】
「できました──!」
【新アイテム「虚花の冷却液」を作成しました!】
【効果:武器に塗布することで炎上フィールドの接触ダメージを無効化(60秒間)】
【※道具通の効果により持続時間が120秒に延長されています】
「ゼクス! アストレア! 武器にこれを塗って──!」
タマキが液を投げた。ゼクスが短剣に塗る。アストレアが聖剣に塗る。武器が虚花の液で覆われて、炎を中和する効果がついた。
「行ける──!」
ゼクスが突進した。炎の身体に短剣が食い込む。冷却液が炎を中和して、ダメージが通る。
【弱点ダメージ:7,800】
アストレアが聖剣を叩き込む。
【弱点ダメージ:9,600】
トワが弓で核を射抜き続ける。セレスの月光が核の位置を照らし続ける。
【残り時間:1分55秒】
HP残り80,000。
「二分で八万。一秒あたり670、足りるか──!?」
「足りる!」ゼクスが叫んだ。「黙って殴れ!」
全員が核に攻撃を集中した。
ハルが──杖を投げた。核に命中。
【ダメージ:1】
「ハル。杖を投げるな」
「参加したかったんです!」
「ダメージ1で参加するな」
「気持ちの問題です!」
【残り時間:0分38秒】
HP残り12,000。
「あと一撃──!」
トワが弓を構えた。最後の矢。駆け出しの霊薬のバフ。見聞録で核の最弱点を捉える。
矢を放った。
【弱点クリティカル! ダメージ:15,200】
守護者が──砕けた。光の破片が花火のように天井のレンズに向かって昇っていく。太陽の光に還っていく。
【太陽の守護者を討伐しました!】
【残り時間:0分19秒】
【「太陽の柱」を入手しました!】
【虚晶の番兵の欠片×8を入手しました】
【灼熱の砂金×3を入手しました】
【称号「灼熱を駆け抜けし者」を獲得しました】
【太陽の祝福・原初 を発見しました】
【太陽の柱にエネルギーが充填されました──充填率:100%】
【クエスト「四つの柱」進捗:3/4】
【──残り:???の祭壇(北東部・詳細不明)】
「十九秒残し──! ギリギリだ──!」
「ギリギリではない。十九秒も余った」
「師匠の余裕の定義がおかしいです!」
太陽の柱。赤い結晶。手に持つと温かい。太陽の光が結晶の中で脈打っている。
祭壇の中央に光球。
【太陽の祝福・原初 を発見しました】
太陽の柱をかざした。光球が吸い込まれていく。
【太陽の柱にエネルギーが充填されました】
【充填率:100%】
「三つ目の柱。──あと一つ」
三つの柱が揃った。星。月。太陽。残りは──四つ目。「何もない場所にある何かの祭壇」。
セレスがトワの肩で、ぐったりしていた。月光をずっと放射し続けた疲労。
「おやつ……」
「帰ったら──」
「いま」
「……わかった。タマキ、クッキーは」
「非常食のクッキー、ありますよ」
「それをセレスに」
「非常食を!? まあいいですけど……」
セレスがクッキーを齧った。疲労の中で、顔がほころんだ。
「おいしい。タマキのクッキー、おいしい」
「それ、非常食ですよ。美味しく作ったつもりはないんですけど」
「おいしいものは、おいしい。つくりてのきもちがはいってる」
「……えへへ。ありがとう、セレスちゃん」
残り一つ。四つ目の祭壇。
北東の未踏エリア。何もない場所にある何か。